『SPY×FAMILY』と、エレガントな和紅茶
五煎目🍵本当のコミュニケーション
日本茶を1000日間毎日飲むというチャレンジ=「1000日茶」に挑戦中
(700日突破!)の俳優・伊澤恵美子が、
お茶と漫画をペアリングする連載「お茶に漫画が合うのだが!!」。
第5回目のテーマは、本当のコミュニケーションって?
先日あるイベントで和紅茶を出した時のお話。
和紅茶、ほうじ茶、緑茶から選べるようにしていたのですが、「わこうちゃ」と聞いて、なんなのかわからない人が何人かいたのです。
一応解説しておきますと、和紅茶は日本の茶葉で作られた紅茶です。緑茶も紅茶もついでに烏龍茶も同じ葉っぱから作られ、その製造工程の違いでそれぞれのお茶になります。
1000茶を始めた時、簡単なルールを設定しました。まずは日本の緑茶とほうじ茶だけでやってみよう、中国茶や紅茶は入れないというルールでした。ルールを壊し続けていくような人生ですが、意外とこういう細かいところは大切にしたい性格です。千日行ですし。
飲み続けているうちに、結構な数の茶農家さんが和紅茶も作っていることがわかってきました。それでも勝手ルールで、紅茶は製造工程が違うし…と避けていたのですが、ある日、茶フレ(お茶好きのお友達)からいただいた、とある和紅茶が衝撃的な美味しさで。
それまでの紅茶といえば、海外のマリアージュフレールとか、クスミティーとか、まるで香水をいただくようなイメージで飲んでいたのですが、最近では和紅茶の味の優しさ、すっぴんみたいな美味しさにすっかりハマってしまっています。
とうとう最近、大手さんがペットボトルでも和紅茶を出してくれましたね。緑茶と同じ茶葉からできているということもちゃんとCMで説明してくれて、これから和紅茶が広がっていくのではと和紅茶ファンとしては嬉しい限りです。
ということで今回の漫画には和紅茶を合わせます!
本日は『SPY×FAMILY』です。
『SPY×FAMILY』 ©️遠藤達哉/集英社
週刊少年ジャンプ+で連載中の大人気漫画で、この春からアニメ化もされ、なんと主題歌はOfficial髭男dismと星野源さん…。ただ売れている方を起用しただけかと一瞬でも思った私をお許しください…。歌詞がちゃんとストーリーに即していてエレガント!ベリーエレガントです!
凄腕スパイの黄昏(たそがれ)は「家族を作り、ターゲットの息子が通う名門校に子どもを入学させ、ターゲットが現れる懇親会に潜入せよ」という指令を受け、偽の家族を作って任務に臨みます。任務遂行の鍵を握る子ども役には、孤児院で出会い、実は超能力者で人の心が読めるアーニャ。妻役には裏稼業で殺し屋をしているヨル。3人それぞれが秘密を持っていて、嘘をついている。
でも子どものアーニャだけは、エスパーであるが故に全てを知っているというこの構造が本当の家族を上手くあらわしていると言えます。
血の繋がりこそが真の家族であるということや、家族はなんでも話し合える存在であるというような「普通の家族」の考え方に対するメッセージを感じます。
そんな嘘の家族たちが繰り広げる日常や時に起こる大事件に、泣いたり笑ったり。
メインの3人をはじめ全てのキャラクターが愛おしいマンガですし、私はほぼ全てのキャラクターに共感してしまうのですが、あえて1つ言うとすれば、敏腕スパイであらゆる人間の心を操ってきた黄昏が、初めて出会う「こども」という存在に戸惑う姿です。
何を考えているかわからない相手に、自分一人ならできていたことを任せる怖さ。そっちの方が楽に見えて、ほんとうに難しい。
妻役のヨルに対しても、今までとは違うコミュニケーションが生まれています。スパイとして目的を達成するために相手の心を操るようなテンプレ的コミュニケーションには長けていた黄昏。しかし今は家族というチームを成立、存続させていくために相手の話を聴き、受け入れていく真のコミュニケーションが必要になっているのです。だからうまく行かないし、戸惑うし、どうしていいかわからなくなる。
そんな寄せ集めの家族なのに、みなが相手を思いやるからこそつく優しい嘘。本当の嘘。もうこれが本当に優しさ。優しさで泣いてしまう。
ヨーロッパが舞台のスパイ漫画だから、渋みも香りも強い紅茶を合わせるかと思いきや、和紅茶の優しさがぴったりなんです。
数ある中から、『SPY FAMILY』に合わせる和紅茶を真剣に考えるため、作者の遠藤達也先生のプロフィールを見ていたところ、茨城県古河市出身だそうで…。
なんと先述の、私を和紅茶沼に引き込んだ茶フレからいただいた和紅茶は茨城県古河市の[吉田茶園]さんの和紅茶「いずみ」でございました。
なんというセレンディピティ。
今回は名門イーデン校に通うアーニャや大企業の令嬢のベッキーにも楽しんでいただけるような吉田茶園最高級の和紅茶を選んでみました。
『IZUMI 1st PREMIUM 2021』は砂糖もミルクも入っていないのに甘みやまろやかさを感じ、まるでミルクティーかのような優しさと柔らかさと優雅さを持つ、すごい和紅茶です。
※出演しています、Audee「山田玲司とバグラビッツ」でもSPY×FAMILYについて特集しています。私の本当に一番好きなキャラについて、アニメ主題歌についてなど更に深堀りしてますので、こちらも和紅茶をいただきながらどうぞ。
漫画『SPY×FAMILY』(遠藤達也)
凄腕スパイ<黄昏>は、より良き世界のため日々、諜報任務にあたっていた。ある日、新たな困難な司令が下る——…。任務のため、仮初めの家族をつくり、新生活が始まるのだが!?スパイ×アクション×特殊家族コメディ!
作品紹介ページ お茶『IZUMI 1st PREMIUM 2021』(吉田茶園)
紅茶にすることで、柑橘系の香り、フラワリーな香り、フルーティーな香りと様々な表情を持つ。60年以上前に輸出用のお茶として開発されたものの輸出の時代は終わり実際は普及しなかった幻の品種。品種親は紅茶品種の「べにほまれ」。
商品ページ
「山田玲司とバグラビッツ」
“疑似家族だからこそのコミュニケーション!話題の『SPY×FAMILY』を考察!vol.59”
番組紹介ページ
- Actor
伊澤 恵美子 / Emiko Izawa
静岡市出身(元茶農家の孫)。俳優としての主な出演作に、映画『子宮に沈める』、ノーミーツ『門外不出モラトリアム』など。音声コンテンツプラットフォーム AuDeeでは漫画家・山田玲司氏の番組「山田玲司とバグラビッツ」のレギュラーアシスタントを務める。1000種類の日本茶を1000日間飲み続けるチャレンジ「1000茶」挑戦中(現在800日超え)。コミュニケーションをテーマにしたお茶のプロダクトブランド「BYSAKUU」の立ち上げにも携わる。推し茶は香駿。
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