「よい」漫画『ワールド・イズ・ダンシング』と、幽玄なティーバッグのお茶
十二煎目🍵「よい」ものをつたえていくということ
日本茶を1000日間毎日飲むというチャレンジ=「1000日茶」に挑戦中(700日突破!)の俳優・伊澤恵美子が、
お茶と漫画をペアリングする連載「お茶に漫画が合うのだが!!」。
第12回目のテーマは、伝統芸能である「能」。
自分がめちゃくちゃおもしろいと思ったものを人に話した時、うん、おもしろかったね!という反応もあれば、つまらなかったと言われてしまうこともありますよね。
思ったような反応が返ってこなかった時「この人は見る目がない人だな」と思うこともあるし、数の論理でみんながおもしろくないという空気になった時なんかは、自分の感覚がおかしいのか?と不安になったり孤独になったりします。20代頃まででしょうか、自分の感覚に絶対の自信があって、私が「よい」と思うものこそが素晴らしく、私がよくないと思うものは悪いものだと思っていました。恥ずかしい…。
ただ30を過ぎたあたりから、どうやら私の思う「よい」はもしかしてあまり人に伝わってないんじゃないか?と思うようになりました。
そんな心境の変化もあり、ずっと自分自身が「よい」ものを演じたり表現したりしたいと思っていたのですが、その思いに加えて、自分が「よい」と思うものをちゃんと他の人にも伝えていきたいと思うようになってきました。
そもそも「よい」ってなんですか?
今回は「ワールド・イズ・ダンシング」。世阿弥の少年時代のお話です。能を見たことはなくてもおそらく教科書で観阿弥・世阿弥親子の名前は皆さんご存知かと。
『ワールドイズダンシング』 ©︎三原和人/講談社
ただ、名前はみんな知っていても、能と聞くと途端に馴染みがなくなり、敷居が高く感じる方も多いのではないでしょうか。
私も俳優のはしくれでありながら(なんなら世阿弥にゆかりの深い佐渡に通っていたにもかかわらず…)能…ちょっとよくわかんないです…と敷居の高さを感じていたのですが、この作品は後世まで多大な影響を残した表現者のジュブナイル漫画として楽しめました。歴史マンガに多くなりがちな解説部分も少なく、読みやすいです。単行本だと最後に4Pの解説がついているのですが、そちらも非常にわかりやすく面白い内容なので、能なんて見たことないという人にこそ読んでみてほしいなと思います。
「よい」漫画です。
表現とは常に疑問であり、答えは一つではない
冒頭から私が「よい」について考えていたのは、少年期の世阿弥、すなわち鬼夜叉が「よい」とは何かについてずっと考えているからです。「よい」は形でも数字でもないもので不変ではありません。ですが表現者は常に「よい」を追い求めています。「よい」とは何か、「よく」あるにはどうしたらいいか。
鬼夜叉が考えていたこの問は「花」として「風姿花伝」の中でも触れられていると思います。漫画は「風姿花伝」が出てくる前の話ですが、表現者やクリエイターはもちろん、人生のヒントになりうる本でもあると思いますので、少しでも興味がありましたらぜひ。
「ワールド・イズ・ダンシング」が世阿弥の幼年期の話を現代にアップデートしてくれたおかげで、より深く彼の思想に触れられた気がします。
幽玄なティーバッグ
この漫画にペアリングするお茶は多田製茶さんのティーバッグです。
パッケージのイメージが合うので、実はAC Hotel by Marriotの客室でも使われているこちらのお茶を今回はご紹介させてください。幽玄を感じる香りや味です。その上ティーバッグなので、気軽にいただけるのもよいところ。ティーバッグのお茶は正直あまりおいしくないイメージもあるかもしれませんが、最近のお茶屋さんのティーバッグは本当に美味しいものが増えました。
特に多田製茶さんのティーバッグのお茶は今回紹介したものだけに限らず、全てすごいクオリティーです。茶葉をカットせずに入れているのが美味しさの秘訣のよう。ぜひ他のティーバッグもお試しください。香りも味も急須のお茶に全くひけを取りません。
また、こんな小さなティーバッグですが、3煎目でもしっかりおいしく、味の変化も感じられます。成長していく鬼夜叉と共に、お茶の味も楽しんでください。今回、能初心者の方でも幽玄を楽しめる意味も込めてティーバッグを選んだのですが、なんと、多田製茶さんには本当に能のためにペアリングされたオリジナルブレンドティーがありました…!それが
「歌舞 -能のためのオリジナルブレンド-」
こちらも能を楽しみながらお楽しみいただければ。
そして、「ワールド・イズ・ダンシング」は大変残念ながら先日完結…! 今月最終巻が発売になるそうです。
ぎゅっと詰まった全6巻と、お茶を一緒に楽しんでください!
漫画『ワールド イズ ダンシング』(三原和人/講談社)
室町ダンスレボリューション!!
知っているようで知らない、社会で習った人「世阿弥」。今も生み出した作品が舞われ続けている彼の「身体」に没頭する物語!
不安定でイカれた時代に、美少年は壁を乗り越え、舞い、物語を紡いでいく……。
HTTPS://MORNING.KODANSHA.CO.JP/C/WORLDISDANCING.HTMLお茶 いずれも多田製茶
「TEABAGS −4種の高級宇治茶のティーバッグセット−」
“ティーバッグでも美味しい日本茶”をコンセプトに作った高級ティーバッグセット毎日の息抜きや、ちょっとした贅沢を楽しんで頂けると好評の商品です。 「歌舞 -能のためのオリジナルブレンド-」
2022年10月にKHギャラリー芦屋で、夙川能舞台瓦照苑様が開催された「和泉式部~恋多き女の一生~」のために作成したオリジナルブレンドの日本茶です。静寂な中にある華やかさをお楽しみ頂けるお茶となっております。
- Actor
伊澤 恵美子 / Emiko Izawa
静岡市出身(元茶農家の孫)。俳優としての主な出演作に、映画『子宮に沈める』、ノーミーツ『門外不出モラトリアム』など。音声コンテンツプラットフォーム AuDeeでは漫画家・山田玲司氏の番組「山田玲司とバグラビッツ」のレギュラーアシスタントを務める。1000種類の日本茶を1000日間飲み続けるチャレンジ「1000茶」挑戦中(現在800日超え)。コミュニケーションをテーマにしたお茶のプロダクトブランド「BYSAKUU」の立ち上げにも携わる。推し茶は香駿。
- TAGS