おいしい裏話
「ふるさと」(RiCE No.37に寄せて)
バリにお住まいの大富豪、丸尾孝俊さんに「日本に帰って食べたいと思うものはありますか?」と誰かが質問したとき、「肉すいやなあ〜、千とせの」とおっしゃったのが忘れられない。
肉すいというメニューはわりとあちこちにある。私も食べたことがあって、そんなに?と思った。
でもその後初めて[千とせ]に行って、他と全然違うということがよくわかった。
ものすごくいいバランスの味だった。
ちなみに、他に食べたいものを兄貴は「旅館の朝ごはん」とおっしゃっていた。それもわかりすぎる。かなり旅館の朝ごはんに近いものをみなさんで作って召し上がっているけれど、やっぱり日本の気候の中で朝食べる旅館の朝ごはんは格別だというのはよくわかる。
いつか栃木の宿に泊まったとき、朝ごはんのおかずが全部おつまみみたいな濃い味で、必要以上に米を食べてしまった。そのあと売店に行ったら、朝食のメニュー全てが瓶やレトルトで売っていたのでかなりげんなりした。
ロスタコスアスーレス https://www.lostacosazules.jp
鮨 一條 https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130204/13191562/
千とせ本店 https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27002763/
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。