NEW STYLE SOBA SHOP

天ぷらの〆は蕎麦というスタイル 日本橋 蕎ノ字


RiCE.pressRiCE.press  / Apr 24, 2019

蕎麦と天ぷら。ここに鮨を加えたら、それらは「江戸前」を母に持つ三兄弟のようなもの。中でも、蕎麦に天ぷらは欠かせない存在だ。ならば、天ぷらの〆が天丼ではなく蕎麦というスタイルも成り立つのでは。店主の鈴木利幸さんがそう考えたのも自然な流れだった。もともとは、静岡・島田市で代々続く蕎麦屋の生まれ。幼い頃から、自分で釣ったきすを揚げ、大人になってからは祖父から天ぷらを、父から蕎麦を学んだ。その後、地元で独立。天ぷらや蕎麦以外にも、日本料理を幅広く提供する店を始めたが、10年前から天ぷらと蕎麦に絞った。そして、2016年、静岡から日本橋へ移転。現在、14品程で構成される天ぷらのおまかせコース1 本のみ。「お腹いっぱいになった後でも、さっと食べられる蕎麦にしたくて」と〆の蕎麦はするするとたぐれる二八だ。

車えび、頭、もり蕎麦(14品あるおまかせコースの一品) ¥10,900

天ぷらの食材は、静岡時代から繋がりのある地元の農家から直送。蕎麦粉も茶の名産地、川根から真空パックで取り寄せて、店で-40 度で冷凍保存。「静岡は日照時間が長く温暖な気候で、栽培される野菜も、ジューシーで甘みや旨みも十分あり、食材に恵まれた地域。そんな穏やかな土地柄の影響なのか、のんびりした職人が多く、自分自身もそんな気がして…。あえて競争の厳しい東京で勉強しようと。腕を磨いて、もっと地元の食材を活かしたい」。

東京には学びにきているという鈴木さんの姿勢は、こちらの10,900円という破格の価格設定にも滲み出ている。「若い人にとって、初めて天ぷらを食べる店になりたくて。自分もお金がない20代の頃、茅場町の [みかわ]さんに食べに行って、一生記憶に残る経験をしました。数ある東京の名店の中でもそちらは、比較的価格が安かったのでお邪魔できたんです。だから、東京に出店したら、うちは[みかわ是山居]さんの半額に設定しようと決めていました。そうしたら、若い子が来られるでしょう。初めてうちで食べて、蕎麦と天ぷらに目覚めてくれたらそんなに嬉しいことはありません」。カウンターでの天ぷらと蕎麦デビューを飾るのに、これ以上の店はないかもしれない。

土の中から掘り出した若い竹の子も、静岡から。実家から受け継いだ30年ものの蕎麦つゆのかえしを、江戸前鮨の「ツメ」のごとく塗って出すことも。昨年はミシュランの一ツ星にも輝き、現在夜の予約は、半年先まで満席。

日本橋 蕎ノ字
東京都中央区日本橋人形町2丁目-22-11
11:4514:00, 18:0021:00
要予約、コースのみ。
月曜、第二・第三日曜定休。不定休あり
Tel. 03-5643-1566
http://www.sonoji.info/

撮影 きくちよしみ、文 浅井直子

当記事はRiCE No.10「蕎麦の新作法」の記事をWEBサイト用に再編集しています。
RiCE No.10の内容を見る。

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