RiCE17号ハンバーガー特集より特別掲載
有村架純、バーガー女子になる?
RiCE最新号ハンバーガー特集の表紙巻頭には有村架純さんが登場!
菅田将暉さんとW主演を務める劇場公開中の映画、『花束みたいな恋をした』は累計観客動員数160万人突破&興収22億円超えの大ヒット!公開から約1ヶ月も、勢いの衰えない人気ぶりです。
『花束みたいな恋をした』
出演:菅田将暉、有村架純
脚本:坂元裕二
監督:土井裕泰
全国公開中
ストレートなラブストーリーでありながら、日常の機微とポップカルチャーを縒りあわせることで、誰しもが共感を抱く青春映画の新機軸となっている作品です。お気に入りの店で買った焼きそばパンを食べながら歩いたり、人気のハンバーグレストランで行列したり。二人で過ごすそんな「普通の日々」こそが愛おしい。なんてことを思い出させてくれる有村さんの演技の秘密は、一体どこにあるのでしょうか?
―今回ハンバーガーの特集なんですが、普段はあんまり食べたりしませんか?
海外に行ったときとかは食べたりします。日本にいるときはあんまり行かないですね。
―海外行ったときって、アメリカとかそういうときに?
そうですね。「いっか」という気持ちになれるから。「いいよね」みたいな。旅行のときくらいは自分をちょっと、甘やかして(笑)。
―でも子どものときの記憶とかってあったりします?
もっぱらマクドナルドですね、学生の頃は。100円メニューを中学生の頃は食べたりして、ずっとしゃべってました。
―100円出せば、全然ほっといてくれるんですよね。あんな場所なかなかない。
そうですね。ただ、今日みたいなお店で食べるようなハンバーガーは、本当にお仕事くらいですね。撮影の時もすごいかぶりつきたかったんですけど、つぶしたら申し訳ないと思って、控えめにしちゃった。
―そういえば、映画『花束みたいな恋をした』が公開中ですが、あれは焼きそばパンですかね? 菅田将暉さんがかぶりついてるシーンが印象的で。菅田さんとあそこまでがっつり共演するのは初めてですか?
こんなにしっかりとお芝居をさせてもらったのは初めてです。『何者』という作品でちょこっとあったくらいで。だから、菅田くんの人となりもそんなに知らなかったんです。こんなに腹を割っていろいろしゃべったのも初めてだったから、すごくいい時間でした。
―今回はお二人ありきで坂元裕二さんの書き下ろしということなんですよね。
ありがたいですね。もう撮影が始まる1、2年くらい前からそういった企画のお話をいただいていて。最初台本が来たときは4時間くらいの尺があるんじゃないかと思うくらい原稿が分厚くて。坂元さんって面白くて、主人公の名前が準備稿ごとにどんどん変わっていくんです。決定稿を見たときに初めて名前(八谷絹)を知りました。ドラマ(『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』)の時もそうだったんですけど、杉原音という名前だったのが、その前は初音とか。いろいろ変わるのが面白い。
©︎2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
―名前が変わるってあんまり聞いたことないし、不思議ですね。準備稿の段階で相当考えをめぐらせてるんでしょうね。
今回それくらいの文量の分厚い原稿が来たのに、読み進めてたら一気に読み終わって。自分の中で流れるように物語が紡がれていたので、何も違和感を覚えることなく、気付いたら終わっていたみたいな感じだったんです。台本になっても、製本になっても同じ気持ちで読めました。坂元さんの紡ぐ言葉って、なかなかコアなせりふが多かったりするんですけど、けして遠い存在じゃない。その言葉が目の前に落ちているみたいな、そういう距離感なんです。普段はそんなことを口にしたこともないんだけど、たぶん自分たちが見過ごしていたとか、通り過ぎていたものに着眼点を当てて言葉にしているから、「この気持ち知ってる」とか、「口には出したことないけどわかる」とか、そういう細かいニュアンスのものが坂元さんの脚本の魅力でもある。だからこんなに身近に感じて。あと今回はものすごいカルチャーが出てくるんです。それも本当に面白くて。
―作家とかミュージシャンとか、固有名詞がいっぱいあって。
ただ、絹と麦(菅田将暉の役名、山根麦)の二人の好きなものがカルチャーだったということなんですけど。それがスポーツだったり、食べ物だったり、いいなと思っている人とは共通項を探すじゃないですか。お互い似ているところを探すというか。あとは、麦と絹にとってはたぶん世の中になかなかわかってもらえないカルチャーが好きだったと思うんです。それが初めてこんなに一緒になって楽しんでくれて、こんなに自分をわかってくれて。ちょっと世の中から認められていないのかなと思ったことが、麦くんによって自分を認めてもらえたみたいな喜びとか、高揚感みたいなものが、衝撃としてあったのかなというふうに思ったんです。恋の始まりとかって、だいたいそういうことから始まっていくように思います。本当に王道というか、どの方が見ても絶対に共感できるし、年齢関係なく楽しんでもらえる。
©︎2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
―だから、大きな障害があって、それを乗り越えるみたいな、わかりやすい物語にはなっていなくて。
どちらかというと目立たない人を主人公にするというのが坂元さん流な気がしていて。坂元さん自身も、ラブストーリーを書くときに、大きな山場とか大きな波を書かないところで勝負をしたい。そこはいつも課題で考えるとおっしゃっていました。
―なるほど。話もセリフも日常的だからこそその空気感の出し方ってすごく難しい気がするんですが。
1ヶ月半で撮影して、それで5年間のものを映し出さないといけなかったので、自分の中に不安もありました。遠慮だったり、ちょっとの距離感が出ちゃうと、自分の場合はごまかしができないから。本当に如実に、すごくわかりやすく映るんです。だから、本番以外のところでコミュニケーションをしっかり取って、待ち時間もずっとしゃべっていたし、好きな音楽とか、芸人さんが面白いとか、そういう話でずっと紡いでいって、その流れで本番に向かっていけた。だからああいった距離感だったり、空気感が生まれたのかなというふうに思っていて。あそこで多少なりとも相手に、「今話しかけないほうがいいかな」とか、いろいろな気を遣っていたら、たぶん今回の作品のようにはなっていなかった。でもそれは菅田くんだったからできたことだったと思います。
―なるほど。固有名詞の話でも、いろいろなお店とか出てきますよね。それこそ[さわやか]とか。静岡の行列ができるハンバーグ、一回行ったんです。
すごい。私食べれなかったんです。残念。
―話の伏線にもなってましたがあれもあるあるですよね。あとさっきも言った焼きそばパン。駅前のおじいちゃんおばあちゃんがやっているパン屋で、身近で美味しいものを見つけたときの喜びって、ささやかだけど人生を彩ってくれる大事なことだったりしますよね。
©︎2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
そうですね。二人の時間は共有すれば共有するほどいろいろな思い出が増えていくし、逆にお別れしたときに思い出す数も増えていく。坂元さんは「この二人が出会ったのはある意味悲しい運命だったかもしれない」と言っていて。きっと思い入れがいっぱいありすぎて、自分の好きなものを全部共有しちゃったから、何をやっても、「ああ、麦くん…」って思い出すこともあったりするだろうし。その言葉をいただいた先は自分の想像でしかないんですけど。だけど、エンタメとかカルチャーって、どの人たちにおいても、そういう記憶をたどる一つの部品になっていると思うんです。例えば、この『花束みたいな恋をした』の中にも出てくる、「スマップが解散しなかったら俺たちも別れてなかったのかな」とか、エンタメの中で起きた何かしらの出来事ーー「何月何日、その日見た映画」、「あの頃そういえばこういうことで悩んでいたな」とか、思い出すきっかけになるものがエンタメだったり、カルチャーだったりするのかなと思ったりして。そうするとやっぱり人生においてすごい必要なものだなと思いました。
―本当にそうですね。そういう意味でこの映画も、観た人それぞれの状況と照らし合わせたりするでしょうし、刻まれる作品になりそうな感じがすごいしますよね。
そうなったらいいなと思います。
―坂元さんの脚本って、ドラマもそうですけど、けっこうすごくいろいろ記憶に焼き付く作品なので。
ちくっと痛むから残るんだと思います。押し付けがましくもなく、絶妙な距離感で寄り添ってくれるから。
―有村さんって感情表現ーー作品の中で微妙な、さっき言っていたみたいなせりふを、すごくニュアンス豊かに出していて、それが表情一つで伝わるから、それは本当にすごいなって思います。
自分の取り組み方とか、表現の仕方ーーもちろんみんなそうだと思いますけど、本当に好みはそれぞれだし。私もやりながらも、「またこれこの間同じような表現の仕方しちゃったな」とか、繊細な作品になればなるほどわからなくなってくるんです。結局また同じような感情の流れをたどって、同じことをしちゃっているんじゃないかとか思ったり。わかりやすければ大きなテンションの差をつけられるけど、そういう微妙な機微を表現しなきゃいけないときって、やっぱり自分でも難しいなと今でも思います。
―普段の日常とかをすごく大切にされているのかなという気はしますけど。
なるべく想像することは大事にしています。表面的になるのが怖いと思っていて。ただ自分の中の不安に駆られるだけだから、誰に強要されたわけでもないんですけど。「表面的に映っちゃったらどうしよう」とか、「表面的にごまかしてそう見えているだけだったらどうしよう」とか。それが芝居の中で起こるのがすごい怖いから、だからその役の人間味をどうしても求めてしまう。このせりふを言った本当の気持ちはどういう気持ちなんだろうって、その裏側を全部探ろうとしちゃう。もっと純粋でいいのになと思うこともあるし、ちょっと考えすぎちゃったりする部分もあります。
©︎2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
―すごくいろいろなことを感じているんだろうなって、有村さんの役柄を通して伝わってくる。もちろん役柄によるんでしょうけど、たぶん日々をすごく大切にされているんじゃないかなって勝手に想像してます。それこそ、お茶も学ばれたりしているんでしたっけ?
はい。茶道を習ってます。忙しいときは行けてないんですけど、ちょっとずつ。
―それってどうですか? やっぱり気持ち的にプラスな部分はありますか。
何も考えなくて済みますね。もうそのときばかりはそのことだけに集中してできるので、あとお茶もおいしいし、お抹茶も。そういう空間がすごい落ち着くなって。畳が落ち着くな、みたいな。昔からそういうものが好きなんですけど、やっぱり自分の過ごしたいペースとは反して日々時間が過ぎていってしまうので。そこが落ち着く時間というか。
―そういうものをいつも探していたというところはあるんですね。
そうですね。ちゃんと自分のしたいことと向き合わないと、ただただ仕事のためにしか生きていけない人生になっちゃうと思うので。やっぱり内側からのエネルギーみたいなものがどんどん消耗されていっちゃうから。ちゃんと自分のためにも生きていかないと、っていうのは意識しています。
Old Valley Dining
東京都世田谷区鎌田2丁目19-8
フレッシュアボガドバーガー ¥1,180
火〜土 11:00〜15:00 17:00〜19:00 / 日 11:00〜15:00
月定休
有村架純
1993年、兵庫県生まれ。2010年に「ハガネの女」でドラマデビューし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)の好演で注目を集める。2016年に「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で民放の連続ドラマに初主演を果たすと、翌2017年にはNHK連続テレビ小説「ひよっこ」のヒロインに指名され、高校時代から結婚するまでを演じきった。公開待機作に映画『るろうに剣心 最終章The Final/The Beginning』(21)がある。CREDIT
Photography Masafumi Sanai
Styling by Daisuke Iga
Hair & make-up by Izumi Okyoku
Text by Hiroshi Inada