発売中のRiCE 28号「特集 おいしい東京」では、「東京23区 ドラフト会議 2023」と題した企画を実施。飲食店が星の数ほど存在する東京において、“果たしておいしいのはどこ？”という途方もない問いに、4名が挑戦した。

野球のドラフト形式で、“おいしい区”を指名し合い、東京を彩る名店をピックアップ。RiCE.pressでは、本誌では語り尽くせなかったお店の魅力をご紹介！

第4回目は、オガサワラガクさんが3位指名した渋谷区から、1983年創業の老舗中華料理屋［中国漢方料理 チャイナハウス 龍口酒家］。

幡ヶ谷といえば、ごはん好きにとっては言わずと知れた注目エリアだろう。カフェからワインバーまで、若い世代の店主が営む個性派店が西原商店街沿いに伸びる道に建ち並ぶ。

そんななか、中華料理の名店［龍口酒家］が店を構えるのは、地上とは異なるレトロ＆ディープな空気が漂う幡ヶ谷駅の地下街「幡ヶ谷ゴールデンセンター」。改札を出てすぐの通路を奥に進むと右手に現れるオレンジの看板が目標だ。

お店の特徴は、なんといってもディナータイムのメニューがないこと。

お腹の空き具合や予算に応じてこちらがストップをかけるまで料理が提供されるおまかせスタイルは、「色々な料理や食材を食べてみてほしい」というオーナーシェフ・石橋幸さんの思いから生まれたそう。

熊の手やすっぽん、魚の浮き袋などの変わった食材をふんだんに用いた料理の数々に、地元民はもとより遠方から訪れるファンも多い。

オーナーシェフ・石橋幸ゆきさん

メニューがないことに最初は身構えるかもしれないが、心配はご無用。石橋さんや店員さんと相談をしながら未知の食材との遭遇に胸をふくらませることができる。

「なんでも作れるけど、鹿のアキレス腱なんかどうですか？ コラーゲンたっぷりで肌にも良いですよ」

この日も石橋さんの一声で、メインメニューが決定した。

（右）鹿のアキレス腱・フカヒレ・エビのタマゴのあんかけ（左）前菜盛り合わせ

豚足の煮凝り、すっぽんのタマゴとピータン、白菜の芯の漬物…丁寧に作り込まれた料理が盛られた前菜と、大ぶりな鹿のアキレス腱がごろごろと入ったあんかけ。

中華料理はくどいというイメージを覆すような優しい味わいは、一口食べるごとにじんわり身体中に染み渡る。

「私たちは、自分が食べたものでできています。いいものを食べることは最高の長寿の秘訣なんです。だから、うちの料理を食べると元気になりますよ」

修行時代から57年、自分の店を構えて38年。「医食同源」をモットーに、中華料理に向き合い続けてきた石橋さん。

その活力に満ちた笑顔が、何よりも言葉を裏付けているように感じられた。

新たな味覚と出会う楽しみ、自分の体をいたわる大切さ。至極真っ当な食の原点を教えてくれる店、幡ヶ谷にあり。

東京には、こんな常連客になりたくなるような隠れた名店がまだまだたくさん。RiCE 28号「特集 おいしい東京」片手に、あなただけの “TOKYO SOUL FOOD” を見つけに街へ繰り出そう！

中国漢方料理 チャイナハウス 龍口酒家
050-5869-0597
東京都渋谷区幡ケ谷1-3-1 幡ヶ谷ゴールデンセンター B1F
ランチ 11:15〜13:45 （LO）／ ディナー 17:30〜21:00 （LO）
月火定休
Twitter：@ryuukoushuka

オガサワラガク
餃子を愛し餃子に愛される「餃子超人」。ビールやイベントプロデュースなど餃子を中心に活動するが、実は食べ歩きの守備範囲は餃子に限らず幅広い。吉祥寺生まれ＆育ちで、港区、渋谷区に住んだことがある。
Instagram： @kebab

Photo by Masahiro Ibata
Edit by Yoshiki Tatezaki
Text by Rin Inoue

RiCE28号｜おいしい東京

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