和色からインスパイアされたカクテルとデザートの競演

五感で味わうQuarter Room × AC HOUSEのデザートペアリング


RiCE.pressRiCE.press  / Dec 19, 2021

2023年1月、世田谷代田駅から徒歩2分にオープンしたバー[Quarter Room]は、アート作品からインスパイアされたオリジナルカクテルを提供し、バーカルチャーを牽引する存在。さまざまなテーマでカクテルを生み出しているが、12月3日には、西麻布のイノベーティブレストラン[AC HOUSE]とコラボレーションして、「カクテル×デザート」のペアリングイベントを開催した。

バーテンダー・野村空人さんが2023年1月にオープンしたバー[Quarter Room]。アートとカクテルの融合をテーマに、セザンヌなどの古典名画からキース・ヘリングなどの現代アートまで、作品にインスパイアされたカクテルを生み出す

AC/DCオマージュのCDケース型メニュー。まさにアルバムを聴くように、一品ずつの変化を楽しめる味わいと香りの緩急がついたペアリングが展開された

[AC HOUSE]で開催されたスイーツイベント「SUGAR CUBE」に[Quater Room]チームが感化されコラボレーションすることとなった今回。日本の伝統色からインスピレーションを得た[Quarter Room]のカクテル4種に、[AC HOUSE]でパティシエを務めるHoyo Manabeさんがデザートをペアリングでつくる、という特別メニュー。色彩、香り、味わい……意外性のある組み合わせで素材を最大限活かすペアリングに、五感を研ぎ澄ませる特別な時間を過ごすことができた。

気になるコース構成はこちら。

1. KESHIZUMI × VANILLA(消炭 × バニラ)
2. SYU × PERSIMMON(朱 × 柿)もしくは CHITOSE MIDORI × PEAR(千歳緑 × 梨)
3. USUKOU × MASCARPONE(薄香 × マスカルポーネ
※2品目はどちらかを選択して一人3品をいただける。

「カクテルのテーマとなる日本の伝統色 × デザートの主役となる食材」で表されたメニューを見て、想像を膨らませる。早速一品目が運ばれてきた。

KESHIZUMI × VANILLA(消炭 × バニラ)

「消炭色」とは、燃える途中で火が消された橙みを含んだ炭の色。そんな由来の通り、カクテルは深い黒色。実際に竹炭パウダーで色を出しているそう。ミステリアスな見た目とは裏腹に、シェリーやオレンジが香るすっきりとした味わいで一杯目にぴったり。

デザートには、シェリーと相性のいいバニラアイスに、アニスを漬け込んだコールドブリューコーヒーのゼリーをあしらった。炭のスモーキーな香りや色を移し泡状にしたココナッツミルクがカクテルの色味を拾いつつ、バニラとコーヒーの仲介役に。やわらかな味わいが何層にも折り重なる複雑なペアリングから、コースが始まった。

SYU × PERSIMMON(朱 × 柿)

「朱色」とは、黄を帯びた鮮やかな赤色のこと。比較的お馴染みな色の呼び名だが、日本で古来より用いられているれっきとした伝統色だ。

オレンジリキュール、ジン、アペロール、スイートベルモットのカクテルは、まさに朱色のイメージを具現化したような甘さと爽やかさを併せ持った香り。同じく艶やかに朱色をたたえる柿のデザートとともにいただく。

フレッシュな柿とゆるい杏仁豆腐に、スパイスを漬け込んだ金木犀のシロップをあしらっている。最後にスパイス発酵美生柑のジュースと金木犀のビネガーを混ぜたものがスプレーで吹きかけられ、カクテルから感じられる花のニュアンスと共鳴しながら香りの印象を引き立て合う仕上がりに。杏仁豆腐や柿の甘みとビネガーの酸が渾然一体となり、華やかな香りが鼻に抜ける。

CHITOSE MIDORI × PEAR(千歳緑 × 梨)

「千歳緑」は、深く濃い緑色。年中変わることなく緑の葉をつける松になぞらえて「不変」「長寿」の意味を持つ縁起のいい色として親しまれてきた。スカーレット(ハーブリキュール)、米焼酎、リンゴジュース、抹茶を合わせることでその吸い込まれるような色を表現したカクテルは、和の趣を感じさせる味わい。フルーティーな米焼酎がレイヤーをもたらしつつ、ハーブやリンゴの要素が清涼感を与えてくれる。

デザートは、洋梨とタイムのアイスと、アップルミントソースをかけたフレッシュな洋梨。青リンゴのようなニュアンスを持つアップルミントがカクテルとの親和性を高めてくれる。ススキのオイルを加えることにより、洋梨とミントの香りが華やかになりすぎないように調和させている。

USUKOU × MASCARPONE (薄香 × マスカルポーネ)

「薄香」は赤茶色がかった極めて淡いクリーム色のこと。卵白を使ったジン、ウイスキーベースのサワーカクテルは、その色に違わず味わいも優しい3種のスパイスを漬け込んだウイスキーの樽香や蜂蜜香が重厚感をプラスしつつ、全体にミルクウォッシング(凝固物の凝乳を濾して透明に仕上げる技法)を施すことで色味や味のバランスを整えてまろやかに仕上げている。

卵やミルクを使ったカクテルに、同じく卵や乳製品を使ったクリーミーなデザートを合わせ、色、素材ともに一貫性のあるペアリング。チョコレートクリーム、塩を効かせたクランブル、エスプーマしたマスカルポーネが層をなすティラミスが口いっぱいに広がり、多幸感が最高潮に高まったところでコースが幕を閉じた。

「常に使う食材や技法は新しいものでありたいと思っていますが、今回は特に普段やらないことを試せました」と語るのはデザートを担当した[AC HOUSE]のHoyo Manabeさん。一部カクテルの技法をデザートに取り入れたところもあるそう

完成したカクテルに合わせてデザートを考案するという、新しい試みとして実現された今回のイベント。コース仕立てでも最後まで楽しめるよう低アルコールカクテルが準備され、デザートも一皿完成型ではなくカクテルとの相乗効果で味わいがより引き立つ構成となっていた。掛け合わせるだけでなく、引き算を施すことで見えてくる素材の魅力。美しきデザートとカクテルが、新しいペアリングコースの在り方をみせてくれた。

Quarter Room
東京都世田谷区代田5-10-7 nakahara-sou B1(世田谷代田駅より徒歩2分)
03-6805-5540
18:00〜24:00(営業時間は変更する場合あり)
水曜定休(その他不定休あり、詳細はSNSをご確認ください)
IG @quarter_room_tokyo

AC HOUSE
東京都港区西麻布2-7-7(表参道駅より徒歩20分)
03-6419-7566
Lunch 12:00〜(土曜のみ)
Dinner 19:00〜
日・月曜定休(その他不定休あり、詳細はSNSをご確認ください)
IG ac_house_jp

Edit & Photo by Yoshiki Tatezaki(編集・写真 舘﨑芳貴)
Text by Rin Inoue(文 井上凜)
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