おせちにメープルシロップ、なんて新しい! そして美味しい!
米澤文雄シェフ・入江誠シェフがつくる「メープルシロップおせち」
2023年も、残すところあとわずか。お正月のおせちは何を食べますか? 黒豆、きんとん、なます……毎年作るおなじみの品々も、来年はちょっと心機一転。メープルシロップを使った“最旬”おせちをご紹介します。
ホットケーキやフレンチトーストにかけるシロップとしては馴染み深いメープルシロップ。実は、和食との相性も抜群な“調味料”としても優秀なのです。
さっぱりとした甘味が特徴で、そのまま使ったり、煮詰めて濃度を調節したりと、幅広い使い方できる。日本食には甘みとして砂糖やみりんが使われることが多いですが、それらをメープルシロップに置き換えるだけで、素材の味が際立つやわらかな甘さに仕上げることができるのです。
メープルは採取時期によって(早い順に)ゴールデン、アンバー、ダーク、ベリーダークの4種に分けられる。色が薄めで繊細な味わいのゴールデンから、色濃く風味も深いベリーダークまで味比べをしてみるもの実は楽しい
ケベック・メープルシロップ生産者協会主催の「メープルおせち」イベントに向けてレシピを考案したのは、西麻布のイノベーティブレストラン[No Code(▷IG)]の米澤文雄シェフとスパイス×フランスレストラン[ÉPICOUL(▷IG)]の入江誠シェフ。欧米料理では用いることが多いメープルシロップだが、和食、しかもおせちに、というのは新発想。そんな意外性をものともせず、7品のおせち料理を披露してくれた。
[No Code]の米澤文雄シェフ(左)と[ÉPICOUL]の入江誠シェフ(右)。シェフとして社会に対するさまざまな活動を行う同志でもあるお二人が、今回のコラボプロジェクトについてトークを行なった
米澤 世界的にみても、日本は甘味料を使った料理が非常に多いです。今回、想像した以上に違和感なくおせちに取り入れられたので、こうした使い方に気づいてもらえたらメープルシロップの幅も広がるのではないでしょうか。
入江 例えると、ちょっと熟成させたみりんのようなニュアンス。近年プラントベースの調味料にも注目が高まってきているなか、メープルシロップは時代にもあっていると思います。
メープルおせちをつくってみよう!
今回、米澤シェフ・入江シェフの豪華タッグによって振る舞われたメープルおせちは、その作り方も公開された。百聞は一食にしかず。ぜひ、ご家庭でもお試しあれ。
右端から時計回りに①黒ビール風味の黒豆、②オマールエビのムース、③さつまいもと栗のメープルきんとん、④ゆずとメープルのなます、⑤てまり寿司(真鯛・サーモン)、中央に⑥鴨のメープルチャーシュー
①黒ビール風味の黒豆
「まめに、健康に」過ごせることを願う黒豆。黒ビールを煮詰めて苦みのニュアンスを活かし、メープルシロップと一緒に炊くことで、厚みのある大人な風味に仕上げられる。
<材料>
・黒豆 60g
・ギネスビール 1缶
・水 360g
・メープル(ゴールデン)70g
・重曹 5g
・醤油 6g
<作り方>
1. 乾燥黒豆をさっと洗い、直ぐにギネスと水を合わせた液体に24時間漬ける。
2. 鍋にメープルシロップと戻した豆、液体、重曹を全て入れて極々弱火で4時間煮る。
3. 仕上げに醤油を加える。
4. 余熱が完全にとれたら完成。
②オマールエビのムース
長寿、縁起物、魔除けの意味が込められるエビ。オマールエビは意外にも甘さとの相性が良いため、エビをムース状にしてメープルシロップをプラスした。蒸して固めて、根セロリ、ニンジンのサラダを添えればエビの風味がやさしく広がる一品に。
<材料>
・オマール海老 150g
・卵白 40g
・生クリーム 40g
・メープル(ダーク)30g
<作り方>
1. オマールをロボクープ(フードプロセッサー)で攪拌する。卵白、生クリームを少量ずつ加えてムースにする。
2. 氷水にあてながらメープルシロップを少量ずつ加える。
3. ラップでソーセージのようにロール状に巻いて80℃のスチームで35分加熱して冷やす。好みでニンジンと根セロリのサラダなどをのせる。
③さつまいもと栗のメープルきんとん
「金団」という景気よい漢字があてられるきんとん。サツマイモをオーブンで焼き芋にして、栗と一緒にメープルシロップ、マスカルポーネなどで和えれば栗と芋本来の甘さが引き立つ洋風きんとんの出来上がり。冬の柑橘「ばんぺいゆ」が香りのアクセントに。
<材料>
・さつまいも 250g
・栗 100g
・メープル(ゴールデン)100g
・マスカルポーネ 30g
・塩 1g
・胡椒 適量
<作り方>
1. さつまいもはホイルで巻き160℃のオーブンで約1時間(オーブンがなければ焼き芋を購入)。
2. ボールで全て合わせて味を調える。
④ゆずとメープルのなます
根菜を使うことから根を下ししっかりとした土台を築く縁起物というイメージのなます。細切りにした大根を塩揉みし、メープルシロップ、米酢、塩でマリネし、生の菊とゆずの皮を添えれば、爽やかに彩りよく仕上がる。
<材料>
・大根 150g
・菊 25g
・ゆずの皮適量
(A)
・米酢 80g
・メープル(アンバー)45g
・塩 4g
<作り方>
1. 大根は細切りにして塩もみする。
2. Aの材料と合わせてマリネする。仕上げに生の菊とゆずの皮を飾る。
⑤てまり寿司(真鯛・サーモン)
「めでたい」の鯛に、サーモンといくらの親子のてまり寿司。酢飯を作る際にメープルシロップを使って風味豊かに仕上げる。真鯛の上には木の芽を乗せて上品かつ華やかに。ころんと並ぶてまり寿司が見た目にも可愛らしい。
<材料>
・米 250g
・水 200g
(A)
・米酢 60g
・メープル(アンバー)25g
・塩 5g
仕上げ
・いくら 適量
・木の芽 適量
<作り方>
1. お米は洗ってから30分ほど浸水。
2. 炊飯器で炊き上げてから(A)の合わせ酢をまぜる。
3. 真鯛、サーモンをそれぞれスライスしてのせる。
4. 真鯛は木の芽、サーモンはいくらをのせて仕上げる。
⑥鴨のメープルチャーシュー
「甲」の「鳥」と書く鴨は子孫繁栄を想起させる、おもてなしの品。鴨肉にかすかにシトラス、スパイス感を纏わせながら火入れし、オレンジ果汁とメープルを煮詰めたシロップを塗って焼き上げる。
<材料>
・鴨むね肉 1枚
・塩 鴨肉に対し1%
・メープル(アンバー)250g
・オレンジ 1個
・スターアニス 5g
・カルダモン 2ヶ
・シナモン 3g
<作り方>
1. メープルシロップは鍋でカラメリゼする。オレンジジュースで色止めする。
2. そのままシロップの状態まで煮詰めビガラードソースをつくる。
3. 鴨肉は塩、胡椒をして脂身にこんがりと焼き色をつける。
4. 真空パックに鴨肉と2のビガラード、アニス、シナモン、カルダモンを入れる。
5. 真空調理で65℃のスチームで約20分火を入れる。
6. 火が入ったら氷水で急冷。
7. 肉を取り出し表面に再度メープルシロップを塗り、フライパンでカリッと焼き上げる。
繊細な味わいに寄り添い、素材の味を引き立ててくれるメープルシロップ。いつもとは一味も二味も違うやさしいおせちで新年をスタートしよう!
米澤文雄
1980年、東京都生まれ。恵比寿[イル・ボッカローネ]で修業後、22歳でニューヨークへ。ミシュランの3つ星レストラン[Jean-Georges]で日本人初のスーシェフに就任。帰国後[Jean-Georges Tokyo]を立ち上げ料理長として活躍する。2018年、南青山にサステナブル・グリルレストラン[The Burn]を、2022年には西麻布に[No Code]をオープン。
IG @yone_asakusa入江誠
1975年、北海道生まれ。西麻布[クイーン・アリス]での5年間の下積み修行を経てフランスへ。[ラ・コート・ドール][ルカ・キャルトン][プチ・ニース・パセダ]など名店で3年間修業。帰国後は、南青山[ピエール・ガニェール・ア・東京]の料理長に就任し2つ星を獲得。2022年には株式会社PLUS IRIEを設立。同時に西麻布にスパイス×フランス料理[ÉPICOUL]をオープン。
IG @iriemakotoケベック・メープルシロップ生産者協会(QMSP)
持続可能な開発の原則を尊重しながら、ケベック州のメープル生産者の利益を促進し、ケベック州産のメープル製品の生産と販売を最大限に発展させることを使命として、1966年に設立。世界のメープルシロップ生産量の年間平均72%を占めるケベックにおける約13,300人の生産者と8,000社の事業者を代表している。
WEB maplefromcanada.jpPhoto by Masahiko Kajima(写真 鹿嶋雅彦)IG @106hkaji
Text by Rin Inoue(文 井上凛)
Edit by Yoshiki Tatezaki(編集 舘﨑芳貴)
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