「アラサー、パリへ行く」20代最後のフランス滞在記

第1話 プロヴァンスの休日


Chikara YoshimoChikara Yoshimo  / Feb 8, 2025

イタリアにも程近く、仏伊の文化も交わりながら、地中海のリゾート地といえば!と日本でも知名度の高いNice🏖️
今回はニースに1週間滞在する中で印象に残った、食べ物とその“周辺”で起こった出来事を。

フランス人の同僚が教えてくれたおすすめのレストラン[Chez Davia]

その日ぼくは、ダイニングの中心にある大きな8名がけくらいのテーブルに、フランス人男女グループ5名と相席。
メニューは数種類ずつある前菜とメインから選ぶアラカルト、もしくは本日のおすすめ的なお値打ちショートコース。

なんとかメニューのフランス語を解読しているぼくに、

『お前は何を頼むんだ?』
とグループの一人がフランス語で話しかけてきた。
(理解できてないのがバレて英語で言い直してくれた)

『おすすめのショートコースにしようかな』

彼らはパリから来ていて、グループの一人がニース出身だから地元民おすすめの店としてここに来ているのだと。
おしゃれをした西洋人で賑わうダイニングの真ん中でアジア人ひとり、ちょっと恥ずかしさと緊張をしながら座っているところにとっても有難い救いの手。

その後ぼくはビールを飲んで2品目を食べ終わる頃、彼らはワインが好きなようで、1本目が飲み終わる前に2本目を注文。

そのタイミングで、お前も飲むかと、店員さんからグラスをもらい、ワインを注いでくれた。

嬉しい。めっちゃ嬉しい。
こんなのなかなか日本でないよなーーーーと。
1歩引くのでなく、1歩前に出る感じ。
みんなでその場をいいものにしようとする、誰もが乗っかっていくグルーヴ感。

そんなものをこちらでは時々感じる、いいなあって思う。

印象に残った一品がこちら。ローストした赤ピーマンに、アンチョビを乗せ、オリーブオイルをかけたシンプルな一皿。これがもうとんでもなく美味しかった…!! アンチョビといえば、イワシを塩漬けにして発酵させる保存食のため、身がほろほろになったものしか食べたことがないのですが。このアンチョビはお刺身のように身が新鮮さを保っていてプリプリ、その上でしっかりとアンチョビならではの塩味と旨みが乗っている。柔らかくローストされた甘みのある赤ピーマンとの対比が最高。塩漬けの塩分や発酵具合を控えめにしてからオイル漬けにしているのか?自家製なのか市販なのか? どうやっているのかわからないのですが、とにかくまたこのお皿を食べに来たい、そして南仏らしさを感じる素敵なお料理でした。

またある時、ニースの近くの小さな村へバスで観光に向かっていたのですが、
座ってるおばちゃんの紙袋から、たくさんのオレンジが車内に散らばった🍊

居合わせた乗客みんなでとっさにオレンジをかき集めて渡す。

みんなで笑い合い、
そのオレンジは何に使うんだ?
あら久しぶりじゃないか今日は何するんだ?
お前のとこの息子は元気か?
(これも大して聞き取れてないのでほぼ想像)

ちいさな村に向かうバスでもあったのでみんな顔見知りなのか、オレンジきっかけでさらに会話が弾む。

バスに乗る時はみんなBonjour!って運転手に挨拶するし、降りる時は降り口から運転席まで距離があるのに、Merci, au revoir!(ありがとう、じゃあね)って言って降りていく。

ちなみにこの村はHaut de cagnes という、高台にある鷲の巣村と言われるような要塞があった村。オフシーズンでホテルやレストランは閉まっていたけどまた訪れたいほど美しかった…!

深い意味はないのかもしれないけど、知らない相手でも挨拶し、ちょっとした会話をする、いいなあと思う。

日本では空気を読むって言葉があるけど(それはそれで大事なんだけど)何かを押さえつける空気感ではなく、広げていく空気感。

そんな空気をつくる人間になりたいな、そんな空気が生まれる場所を日本に帰ったら作りたいな。と、こちらにきてよく思う。

とはいえまだ英語もフランス語もままならない、そもそも人と話すことが元来得意でないぼくは、言いたいことを言い出す勇気もなくまだいつもうずうずしています。笑

話があっちゃらこっちゃらですが。

ぼくはいまフランスに住んでいます。
よくありがちなワーキングホリデーを使った1年間の期限つきフランス生活。
ちょうどいま、働いているレストランが2週間のホリデー期間で、その最中に連載のお話をいただいたこともあり、まずは旅先の南仏での風景を。

RiCEさんでの連載なので、“食” を起点にしたエピソードを書こうと思うのですが、話は多方面に着想し広がっていきそうです。

何か明確な目的はそれほどなく、20代の最後に、ただ異国に住んでみたい!という動機で来たフランス。
これまでの自分の常識とは全く異なるものに触れることも多い中で、日常のふとした瞬間に、自分のルーツや、日本のことや、これからのことや、様々なことを省みる、考え直す、ということが多々あります。

その中で一つ気づいたこと。
ぼくはいまレストランで働いていますが、料理とかワインとか、レストランとかカフェとか。そういった具体的な事象が好きというよりも、その “周辺” がすごく好き。食べ物やお酒がある場で起きること、そこに関わる人たち、が好き。

だから、そこに自分も関わっていたいから、お酒のことを勉強するしたくさん飲むし、たいして自分では料理をしないのに一人でレストランにいっちゃうし、美味しいものを探して生きているし、

そんな動機でいま自分は働き生きているんだなと。

フランスでの生活で、食に関わる人々と、食がある場で起こる景色、そこで感じた率直な感情を、書き記していく連載にしていきます。ぐるぐるとしたぼくの頭の中のお話に、お付き合いいただければ幸いです。

2025年、いい年にしましょう!
Bonne journée!

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※厳密にはプロヴァンスとニースは南仏でも別地方なのですが、目を惹く題名にしたかったのでこの題に。そしてまだ、映画『プロヴァンスの休日』は見たことないのでこの後みます。笑

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