エディターズノート

「RiCE」第39号「焼酎」特集に寄せて


Hiroshi InadaHiroshi Inada  / Feb 6, 2025

RiCEの第39号は初めての焼酎特集です。待ってました!という声が聞こえてくるのはぼくだけでしょうか。自分の中ではやっとというか、満を持してというか。

RiCEはこれまで過去2回、日本酒特集を組んできました。それを踏まえて約2年前に組んだのが「日本の自由なサケ」特集。こちらは日本酒、焼酎、クラフトサケを“麹で醸す”という共通点でつなぐことで、日本のサケという括りを浮き彫りにしました。さらに約1年前にやった「ジャパンスピリッツ新時代」特集では、焼酎、泡盛、ジン、ラム、ウイスキーといった日本製スピリッツ、つまり蒸留酒を一括りにしてジャーナルしました。

つまり、焼酎に対していきなり飛びつくのではなく、しっかり外堀を埋めてからのアプローチが今回という意識です。その間、家で酒場でと飲むのはもっぱら焼酎が多く、どんどんその深みにハマってきました。

自分が思う焼酎のいいところを一言でいうと、その気取らないところでしょうか。まさに普段着のお酒というイメージ。ワインや日本酒をはじめとする他のお酒を一概に気取っているとは言いませんが、それらは大体においてお酒自体に自らコンディションを合わせて飲む傾向がある。対する焼酎は、水割り、ソーダ割り、お湯割りと気分や料理に合わせていくらでも飲み方を変えられる。さらに酔ってきたら割合を薄めることで、長くゆっくり楽しめる。そんな気楽さが魅力です。

さてこの間に焼酎は、体感的にどんどん盛り上がってきている気がしますし、そんな声をよく耳にします。焼酎に特化したイベントもここ1、2年で珍しくなくなってきました。昔ながらの渋い酒場や居酒屋はもちろん、新世代のバーやレストランに至るまで広がり、若者たちが焼酎の新しい香りとカジュアルさに惹かれて楽しい夜を過ごしています。

さらにおりよく昨年だけで立て続けに世界的なビッグトピックも。1つは昨春東京島酒がGI指定に認定されました。東京島酒というのは八丈島をはじめとする東京都伊豆諸島で造られた焼酎のこと。そしてGI=地理的表示とは、国が地域ブランドとして特性や製法、品質などを保護する制度で、つまりはシャンパーニュやテキーラに連なるお酒として東京の島酒も認められたことになる。

そして昨年末に発表されたのが、「日本の伝統的酒造り」に対するユネスコ無形文化遺産の登録でした。日本酒、焼酎、泡盛などいずれも麹で醸した日本ならではの酒造り技術が世界的に認められたのです。

芋、麦を筆頭に米や黒糖など様々な原料を麹で醸し、さらに蒸留して造られる日本の焼酎、そして泡盛。さらに飲み方も多様で変数が多くハイコンテキストと捉える向きもあるかもしれませんが、大丈夫。こんなに気ままで自由に楽しめるお酒もなかなかありません。人生に寄り添ってくれる優しいお酒、焼酎で乾杯!

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