
ラーメン熟考
第5回 日本発!独自発展した種物(後編)
前編との違いは「中華料理」の色合いを強く感じること。一見中華料理由来のものに思えるが、実際には中華料理には類似するメニューがなく、日式の中華として発展しているものを取り上げる。勿論、横浜の中華(南京)街や大陸から日本に渡ってきた料理人によって、日本向けに開発されたものもある。もしくは単品としては中華料理には存在するが、それを単純に麺の上に乗せたものもある。
・天津麺
・麻婆麺
・酸辣湯麺
・ちゃんぽん
・生碼麺
・広東麺
・台湾ラーメン(※ニラそばの項目で補完)
【天津麺】
天津という地名が入ることからも中華料理由来っぽいが、れっきとした日本で生まれたメニューである。詳しくは以下のこの記事を参照にしたい。いうまでもなく元ネタならぬ元タネは芙蓉蟹である。これをご飯の上に乗っけたり、麺の上に乗っけたりしたというわけだ。
[正華楼](愛宕)
千葉県野田市に残る貴重な日式の中華料理。メニューのあちらこちらに戦前の雰囲気をまとっているが、創業は1948年とのこと。白く、ビロードのような美しい自家製麺が魅力のひとつだが、天津麺の美しさも特筆ものだ。餡は醤油餡と塩餡で店によってわかれるが、ここは塩餡。じんわりとした旨味が全体に広がる仕組みで、最後まで食べ飽きない。
【麻婆麺】
これも天津麺と同じで、もともと麻婆豆腐が単品の中華料理として存在し、それを麺の上に乗せたもの。美味しいラーメン単体に美味しい麻婆豆腐単品が乗ればいい、というものでもなく、麻婆麺としての完成度が求められる意外と難しい一杯。特に町中華では人気があり、メニューに入っている事が多い。
[狸小路](狛江市)
世田谷通り沿い、夜になると明かりが灯る知る人ぞ知るお店。売りは自家製のもっちりとした皮が特徴の餃子と店名の通り札幌スタイルの醤油、塩、味噌ラーメン。スープがしっかりしているので、一向に古臭くならない。月・火・木曜日の限定メニュー麻婆ラーメンはそのスープと確かな技術によって支えられた隠れた名品。味噌ラーメンに合うスープは麻婆とも相性がいい。
【酸辣湯麺】
酸味と辛味を利かせたスープで、これも中華料理ではポピュラーであるが麺を入れることはなく、麺仕立てにすることで日式のメニューとして定着した。
[多賀野](荏原中延)
「すべてのメニューが名作」と勝手に命名している名店[多賀野]の中から、酸辛担麺だけを取り上げるのも忍びないが、逆に多賀野のメニューで最も取り上げられないメニューでもあるので触れておきたい。正確にいうと酸辣湯麺ではなく、酸辛担麺であり、卵とじもしていない。その代わりに魚介のきいた多賀野の絶品スープで味わう酸辛辣のスープである。
【ちゃんぽん】
もともとは湯肉絲麺という福建料理がモチーフにした支那饂飩がルーツであると言われている。そういう意味ではカテゴリー分けを難しいが、ここではおおらかに種物ということで参考程度に載せておく。
[來來來](三軒茶屋)
首都圏で本格的なちゃんぽんを食べたデビュー戦が[來來來]である人は多いだろうし、それは2024年の今もあまり変わっていないような気がする。東京のちゃんぽんの入門店であり、出口でもある。
【生碼麺】
広東麺がルーツにあるされるが、あくまで始まったのは日本の中華街のまかない料理である。もやし中心の具材の醤油餡が乗り、少し甘めに落とし込んだ味が広く愛されることになった。具材は元々がまかない料理だったということでルールはないが、もやしは必須と言えるだろう。
[かみ山](三鷹台)
伝統的な種物を現代的手法で鮮やかに蘇らせる[かみ山]。生碼麺の歴史ある名店は数あれど、比較的若い人が生碼麺を売りにして店を興すことはあまりない。スープの厚み、少し甘めの落とし込んだ味付けと炒の勢い、力強さから生み出される具材のシャキシャキさ。頭の中で描く理想の種物、生碼麺を体現している。
【広東麺】
広東料理の五目うま煮がルーツ。五目うま煮は別名八宝菜である。つまり、具沢山な肉や野菜を餡掛けにしたものを乗せた麺ということになる。広東料理は醤油ベースの料理が多いが、塩ベースの広東麺も稀にある。いずれにせよ、中華料理の単品をラーメン上に乗せる文化は日本が生み出した。ただ、乗せるわけではなく、どうスープと調和させ、良い影響を与えつつ料理としてまとめるか。それは日本の職人たちの努力の結晶である。
[浅草橋大勝軒](浅草橋)
広東麺は基本醤油ベースに醤油餡だが、ここ[浅草橋大勝軒]の餡掛けは塩ベース。それ故に醤油スープと溶け合うグラデーションが味わいやすい。また、品の良い餡と滑らかな自家製麺との相性も抜群に良い。広東麺、あーあれね、というステレオタイプのひとつ上の美味しさをみせてくれるところに歴史と伝統を感じる。この店の種物中華そばとしては、しいたけそばも絶品である。
次回は種物中華そばラスト。中華料理由来のものから、現代的な自由な種物までを追う。
- Ramen Archiver
渡邊 貴詞 / Takashi Watanabe
IT、DXコンサルティングを生業にする会社員ながら新旧のラーメンだけでなく外食全般を食べ歩く。note「ラーカイブ」主宰。食べ歩きの信条は「何を食べるかよりもどう食べるか」
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