おいしい裏話
「ビールは神」 ( RiCE No.10 ) に寄せて
いつも少し疑問に思っているのだが、千房というお店の流れを汲んでいる考え方なのだろうか、もうすっかり焼けたお好み焼きがアルミホイルの上に乗って出てくる形態のお店がとても多い。 自分で焼かなくていいから楽だし、ちょうどよくおいしくできてくるから、ありがたく思う。 しかし、目の前のぴかぴかの鉄板、それは単に保温のためだけに熱されていて、決してジュージューいうことはない。それってなんだかもったいなくないか?と思うのである。ポテンシャルが発揮できていないというか、モヤモヤする。 下北沢の名店なんばん亭は、お兄さんが席に来て焼いてくれるというスタイルなのだが、これだとなんとなく納得できる。鉄板は汚れるし手間もかかると思うけれど、目の前の鉄板が熱々でないとものたりないのは、人類の性だよなと思う。
この裏話に出てくるお店: なんばん亭 住所:東京都世田谷区北沢2-12-3 石川ビル 2F 電話:050-5596-3844 https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131802/13037445/
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。
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