石巻・旧観慶丸商店にて開催
地球温暖化に対するクールな選択「キュウリチョイス」
宮城県・牡鹿半島と石巻市街地を舞台とし、58日間にわたり開催されているリボーンアート・フェスティバル。アート、音楽、食の祭典として、国内外から集まった60組以上のアーティストによる作品は、開催地となった地域で直接受けたインスピレーションを基に制作されているものも多く、エリアの特性をうつしだすような生々しさがある。鹿を狩猟する様子を収めた写真や、その地に生息する虫を撮影したものなど、自然の息づかいを感じる作品のほか、大地の上にむき出しに展示されているオブジェクトも多数存在し、これらはフェスティバルの枠を超え、ダイナミックな風景の一部となっている。
▲ この日は実際に食猟師の小野寺望氏 (写真右) と共に獣道へと入り、その後鹿について語りあうイベントを開催。同フェスティバルに作品を展示している写真家の津田直氏 (写真中央) とキュレーターの豊嶋秀樹氏 (写真左)と3人のセッション
2回目の開催となった今年のフェスティバルでは、展示エリアが拡大したことに加え、浅野忠信氏や増田セバスチャン氏など近年アートシーンを賑わせている豪華メンバーが集結、充実のラインナップとなっている。目を見張るアートの数々に、思わず作品の世界へ入り込んでしまう人も少なくないだろう。時間を忘れてアートを鑑賞した後には、美味しい食事を楽しめるのもこのフェスティバルの特徴のひとつで、荻浜エリア内[Reborn-Art DINING]には、期間限定でゲストシェフが登場し、東京青山[Florilege]の川手寛康シェフや和歌山県岩出市[Villa AiDA]の小林寛司シェフなど、選りすぐりの料理人が腕を振るった。
▲ イベントでは、神田[the Blind Donkey]原川真一郎シェフが豪快に鹿肉を焼き上げた
景観と一体化した作品も多く、ランドスケープと密接な関係のフェスティバルとあって、周辺自然環境に対しての意識も高い。そんな中で会期中、メインインフォメーション施設である旧観慶丸商店で行われているのが「キュウリチョイス」という取り組みだ。夏が旬で、身体を冷やす作用がある「キュウリ」を「チョイス」し味わうことで、環境に負荷がかからない形でクールダウンするという狙いの下、地球温暖化防止を呼びかけている。
この取り組みに賛同する石巻市内の飲食店が、食欲が減退気味の夏でも美味しくキュウリを食べられるレシピを提案。9月15日には、この「キュウリチョイス」プロジェクトの発案者である、博報堂ケトルの大木秀晃氏を交えたトークイベントが開催され、「キュウリチョイス」を始めるに至った経緯などを語った。
▲ 和洋中それぞれ、石巻市内の人気飲食店が、キュウリを使ったレシピを提案
「キュウリチョイス」は、環境省が推進している「クールチョイス」という取り組みに紐づいたプロジェクトとして行われている。この「クールチョイス」は、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標達成のため、地球温暖化対策に貢献する「賢い選択」をしようというキャンペーン。「環境問題や地球温暖化というと、とても大きな問題のように捉えがちだが、小難しく考えるのではなく、楽しみながら入るのが大事」と語る大木氏。誰もが知っているキュウリを美味しく味わう、日常的でハードルの低い行為を入り口とし、環境に対する意識変化を促している。
▲大木氏はキュウリチョイス Tシャツを着用しトークイベントに登壇
キャンペーンにおけるメインビジュアルは、商業施設PARCO「パルコアラ」などで知られるアートディレクターの小杉幸一氏が担当。このビジュアルにもストーリーがあり、リボーンアート・フェスティバル実行委員長を務める小林武史氏と、Mr.Childrenボーカルの櫻井和寿氏を中心として結成されたスーパーバンド Bank Bandが2004年にリリースしたアルバム『沿志奏逢』のジャケットをオマージュしたものだという。ジャケットには一本のキュウリがデザインされており、The Velvet Undergroundのデビューアルバム、『The Velvet Underground and Nico』のジャケットに描かれているバナナからインスパイアされたものだそう。そのさらなるオマージュとして制作されたのが今回のビジュアルだというから、脈々と受け継がれるカルチャーの系譜を感じずにはいられない。
トークショーの合間には、石巻市の人気中華料理店[揚子江]による、二種のきゅうりを使った料理が振舞われた。
▲ 食欲のない夏でも嬉しい、酸味の効いた「きゅうりの四川風辛子甘酢漬け」
▲ ピリッと辛い「たたききゅうりの豆板醤和え」は思わず白米が欲しくなる一皿
▲ レシピを提供した[揚子江]の今野美穂シェフは、調理のポイントなどをおさらい。残暑が続く中で、「きゅうりを食べて体の熱を下げて欲しい」と語った
▲ もうひとりのトークゲストは、石巻の流通を支える[いしのまき元気いちば]マネージャーの米澤耕也さん。沿岸地域だけに魚がクローズアップされがちだが、野菜も美味しいものが揃っていますとコメント。店内には生産者が直接持ち込んだ朝採れの商品もラインナップしている
トークイベント終了後には、早速「クールチョイス」に同意、環境に負荷をかけないライフスタイルの選択を宣言する参加者の姿も見られた。
リボーンアート・フェスティバル開催中は、トークイベント会場にもなった旧観慶丸商店にて「キュウリチョイス」の取り組みが行われ、レシピなどが配布される予定となっている。食と密接に繋がっている地球環境について、キュウリのような身近なものから考えてみるのもおすすめだ。
リボーンアート・フェスティバル
会期 : 8月3日 ( 土 )~9月29日 ( 日 )
会場: 牡鹿半島、網地島、石巻市街地、松島湾 (石巻市、塩竈市、東松島市、松島町、女川町)
HP : https://www.reborn-art-fes.jp
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