おいしい裏話
「夢の世界」(RiCE No.15)に寄せて
エッセイの中で書いた通り、近所に夢のようなスーパーがある。高級な食材や新鮮な野菜肉魚が山盛り、お惣菜もみんな手作り。特にカレーとラザニアが最高においしい。 ちょっと高いからなかなか行かないけれど、行くときはもう頭の中がお花畑だ。 先日、慣れないレジの人が前の人の買い物を思い切り置き忘れていたので、不安に思っていたのもあったのだろう。家に着いたら豆腐がなかった。電話して説明してみたら「多分レジの担当の置き忘れですね、返金します」と言ってくれた。豆腐抜きのチゲ鍋を作ったら、翌日夫が門のところに落ちている豆腐を発見。犯人は自転車の取りまわしが下手な私であった。 また電話して「道で発見されました、ごめんなさい」と言ったら、「気にしないでください、残念でしたね…」と言われた。なんていいスーパー !でも、その豆腐はしっかり豚汁に入れて食べた。
信濃屋代田食品館 東京都世田谷区代田1-34-13 9:30~25:00 shinanoya.co.jp/shop/daita.html
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。