この酒いいよ、飲んでみて。
実はこんなに幅広い日本酒の味わい
「今日、日本酒飲みに行かない?」と友人や職場の同僚に誘われた時にあなたは一体どんな味わいの心象風景をイメージされますか?
透明感があってスッキリした味わいですか? それともブーケの様な華やかな香りであったり、フルーティーな香りだったりと「香り」をイメージしますか?
思い出だと「美味しかったなぁという思い出」であったり「あぁ、悪酔いするやつだ!」「イッキ飲みさせられた嫌な思い出しかない」なんて方もいらっしゃるでしょう。人それぞれに持つ『日本酒のイメージ』は様々である。
最近の日本酒の味わいチャートなどを見ると大まかに四種類のタイプに分類されている。
▲ 香りと味わいで分けた日本酒の4タイプ分類
軽快でなめらかなタイプの「爽酒」
香りの高いタイプの「薫酒」
コクのあるタイプの「醇酒」
熟成タイプの「熟酒」
たしかに大まかに分類するとこの形だろう。他にもスパークリングタイプ、低アルコールタイプ等も存在する。
私が自分の店でお酒を選ぶときは大まかに3つのタイプから選んでいる。
それは「スッキリシャープ系」、「香り系」、「旨味コク系」。
「スッキリシャープ系」は「爽酒」、「香り系」は「薫酒」、「旨味コク系」は「醇酒」に当てはまるだろう。さらにそのカテゴリーの中でも味の濃淡で掘り下げていく。香り系でも香りがあってさっぱりがいいのか? 香りがあってそれに伴う甘さがあった方がいいのか? そして酸はどんな酸があった方がいいのか? など考えていく。
私の選ぶタイプに「熟酒」が無いのは食中酒としてペアリングしていく時に味の濃い熟酒を出すタイミングがあったとしても一番最後の方だからだ。私の中では「熟酒」「スパークリング酒」「低アルコール酒」は特別枠の扱いとなる。
これからその3タイプの中から「今、是非飲んでみてよ!オススメだよ!」というお酒を今後アップしていきたい。
まず今回はスッキリシャープ系からのオススメである。最近のこの暑さを思うとグビグビと飲み干したくなる1本である。
『豊潤』特別純米 大分三井
(大分県宇佐市・小松酒造場)
なめらかな透明感があるお酒。
素材の味を生かす日本料理にオススメ。
山菜の苦味を味わうお供に。
日本酒の持つアミノ酸が、魚の臭みを消して脂味を丸く包み込んでくれるように刺身に合わせて。
実にありがたい1本です。
本来はシャープではありますが唐辛子やハバネロ、ジョロキアを使ったスープなどと合わせて飲むとシャープな味わいの中に隠れていた甘味が顔を覗かせます。
激辛なものに合わせることによっての変調現象
素材の繊細な味わいに寄り添う相乗現象
をお楽しみいただけます。
さぁ、まずは飲んでみてください。今夜の晩御飯がより一層楽しくなりますよ。
- polyphony owner
竹口 敏樹 / Toshiki Takeguchi
映像カメラマンだった20代の頃、偶然立ち寄った酒場で日本酒のおいしさに開眼。独学で日本酒を学び、居酒屋勤務を経て東京・四谷に[酒徒庵]を開店。2015年に[酒徒庵]を閉店し、会員制の日本酒専門店[鎮守の森]をオープン。2021年には、サービスの朝日萌里さんとともに、自らが厨房に立ちラクト・オボ・ベジタブルのコース料理を提供する[polyphony]をオープン。著書に『もっと好きになる 日本酒選びの教科書』(ナツメ社刊)がある。
IG @polyphony2021