【醸造所見学レポート】
数多のコラボレーションビールを生み出す「COEDOビール」の想いとは
江戸時代からの城下町としての趣きを残し「小江戸」として親しまれる埼玉県川越の地に根付く「COEDOビール」。日本のクラフトビール黎明期からシーンを牽引しつづけ、アルコール業界に逆風が吹く中でもその存在感はむしろます印象の[コエドブルワリー]。
今やスーパーなどの量販店でも見つけることができるこのパッケージは、コアなビアファンではなくても見たことがあるのでは。
「紅赤 Beniaka」「漆黒 Shikkoku」「白 Shiro」「瑠璃 Ruri」「伽羅 Kyara」「毱花 Marihana」という日本らしい美しい色彩感覚をあしらった6種類のレギュラーラインナップに加えて、季節限定や他ジャンルとのコラボレーションなど、色とりどりのビールを生み出している。
10月には「COEDO×村上春樹」という異色のコラボレーションを、RiCE.pressでもご紹介した。
盤石にも思えるレギュラーラインナップに加えて、変幻自在のコラボレーションも次々にこなすCOEDOビールが造られる現場はどのような場所なのか。東松山のメインのプロダクションブルワリーを訪れ、ビール造りの裏側とその歴史からこだわりまでを取材した。
向かうはコエドクラフトビール醸造所
埼玉県東松山駅から車で15分の谷合に位置する「コエドクラフトビール醸造所」。以前元々埼玉県三芳町にあった醸造所が2016年にこの地に移転し、現在のCOEDOビールのほとんどがこの醸造所で造られている。
広大な敷地にどっしりと構えるレンガ調の建物は、以前は企業の研修・研修所として使われていたのだそう。まるで校舎のように長い廊下がその面影を残している。
システムとクラフトマンシップ
この醸造所にある最新設備が、COEDOビールを全国津々浦々の料飲店や小売店にまで届けるための安定した製造を支えている。
例えば、ビールの原料である麦芽を粉砕するためのミル。麦芽を一粒一粒丁寧に粉砕することは、ビール造りで最も重要な工程のひとつ。その正確性を高めるために、設備をアップグレードしたという。
「狙い通りに丁寧に外側の殻を粉砕することが、他の工程に影響を与えて、最終的な品質と収量を決めるんです」と、ブルワリーを案内してくれた田邊さんが教えてくれる。
電子制御で温度や時間が管理されている
ビールを充填したあとに運ばれる缶
しかし、最新式の機械が揃っていればいいというわけではもちろんない。
すべての工程において人の目による丁寧に管理がなされている。醸造所内には、手書きの品質チェック表がいくつもあり、最終工程のビールを瓶に詰めるセクションでは、専門の職人たちが検品に目を光らせている。
COEDOらしさを貫くために
COEDOビールは、スマートで真っ直ぐなビールの印象があります。
「食中酒として適した絶妙なバランスが意識されている」田邊さんが言うように、様々な暮らしのシーンに合わせて飲めること、語弊を恐れず言えば“個性的な味わいすぎない”ことが、COEDOビールらしさといえるだろう。
一方で、自由な発想と様々な素材を掛け合わせる幅が大きいクラフトビールの醍醐味をいかに表現するか。その答えの一つがコラボレーションビールといえる。
最近発表された、スペシャルティコーヒー専門店[堀口珈琲]とのコラボレーションのコーヒービールはすでに4回目を数える。
ビール造りにおいては、コーヒー豆を使用せずとも、ローストモルトなどを駆使することでコーヒーのようなビターで香ばしい表現をすることも可能ではある。COEDOビールと[堀口珈琲]のコラボビールではそれを覆し、ロースト味だけではない、良質なコーヒー豆の個性とビールの個性を融合させるというレベルにまでその共同開発は発展している。
他にもCOEDOビールとコラボレーションしているのは、[ダンデライオン・チョコレート]や日本酒の蔵元など、クラフトマンシップのスタンスでモノ作りをしているところばかり。
無意識的に共有する職人精神が自然と商品を良い方向に導き、コンセプトだけではなく、プロダクトとして完成度の高く、なおかつ今までにない革新的なビールを生み出すことに繋がっている。
旬の食材を使ったシーズナブルビールが豊富なのもCOEDOらしさ。
プルーンやイチゴを使ったフルーツエールは特に人気だ。ここで使われているフルーツの一部は、通常の流通ルートでは規格外のB級品とされてしまうもの。
COEDOビールが生まれたきっかけを紐解くと、川越の名産として盛んに栽培されていた「紅赤」というさつまいもを新たな方法で活用したいというアイデアにあったと田邊さんが教えてくれた。
そのさつまいも「紅赤」とともに、連作障害対策の緑肥として栽培される麦を掛け合わせてビールをつくってはどうか、そんな想いがビール醸造を始める原点となっている。もともとCOEDOの設立母体が協同商事という70年代より有機や特別栽培にこだわった野菜を扱う商社ということもあり、農産物の活用はもはやCOEDOのアイデンティティといえる。
様々な食材や異ジャンルとのコラボで目を引くCOEDOビール。
ビールという飲み物をアウトプットの形として、アップサイクルやSDGsといった言葉がまだ一般的ではない時代から、そうした考え方に自然にアプローチをしてきていた。コラボレーションやシーズナルビールといった動きは、目を引くためではなく、食をビールに落とし込むというスタート以来変わらないCOEDOビールの姿勢であり、アップデートされながら受け継がれる技術と職人精神があってこそCOEDOビールは新たなステージへと進み続けている。束の間の醸造所見学ではあったが、そうしたことをひしひしと感じることができた。
COEDO ONLINE SHOP 公式通販サイト:https://webshop-coedobrewery.com/
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