『スキップとローファー』と、能登の和紅茶
七煎目🍵漫画もお茶も、命の洗濯よ!
日本茶を1000日間毎日飲むというチャレンジ=「1000日茶」に挑戦中(700日突破!)の俳優・伊澤恵美子が、お茶と漫画をペアリングする連載「お茶に漫画が合うのだが!!」。第7回目は、疲れが出るこの季節に心を癒す漫画とお茶を処方します。
皆さん、疲れていませんか?
私の仕事だと4月に新生活が始まるという感覚もなく、GW中もがっつりお仕事で休みもなかったのにもかかわらず、なぜか今年は「五月病かな…?」と 感じたりとなんだか今年は疲れています。
思えば年明けすぐに長期の緊急事態宣言から、春になった途端、一気にそんな揺り戻しちゃうの?!って感じのこの半年。フェスやイベントも再開、満員電車も電車遅延も復活してきて、終電ではでろでろの酔っぱらいを見ることも増えてきました。
もともとの私はどちらかというとインドア派。散歩くらいできていれば家で過ごすことも嫌いではないことにこの2年で気づいてしまいました。それがここのところ、終電後までテキーラを飲んだり、フェスに行ったりしていたら、意外と疲労が身体にというか心に溜まっているようで…。
もちろん、飲みに行ったり旅行に行ったりもしたいけど、正直、週末ごとに自分をよく見せようとしてしまうことに疲れてしまったりするんですよね…。今回こんなことを書いたのは、SNSで特にここ最近「病んでる…」と書いている人をよく見かけるからです…。
そんな新生活疲れが出始めている方に。
『スキップとローファー』(高松美咲/月刊アフタヌーン連載中)をおすすめします。
『スキップとローファー』(高松美咲/月刊アフタヌーン)
初めてこの漫画を読んだ時、癒やされすぎて、えぐえぐ泣きました。
ととのう感覚というか、サウナやお風呂に入ってさっぱりしたような感覚。エピソードが終わるごとに「あーととのったー」とつい口に出てしまう。これぞ、命の洗濯。
過疎地の石川県凧島町から東京の進学校に主席入学した岩倉美津未。ちょっと天然な彼女が都会で送るハイスクールライフ!
と、最初は田舎っ子のみつみちゃんが都会の空気に染まっていく東京サクセスストーリーなのかなと思ったのですが、読んでいくと、ちょっと今までの上京物語とは一味違うような…?
これは彼女一人の成長ストーリーではなく、彼女の周りの人たちみんなの話なんですね。わかりやすい悪者キャラやライバルは登場しません。でもみんな、大なり小なり心に傷を持っていて、ちょっとした性格の悪さみたいなものが飾らず描かれています。
例えば後に仲良くなるミカちゃんは、最初はみつみを雑に扱うのですが、かっこいい志摩くんとみつみがライン交換した途端に「ライン交換しよ!」と態度を一変。いじめまではいかない絶妙な性格の悪さ。あるある。最初のうちはこの細かい感じ悪さが続くミカちゃんですが、みつみちゃんに肯定されていくことによってどんどん素直になっていきます。いや、素直に“なった”というより、元々素直なミカちゃんを取り戻したというか。ミカちゃん自身も今までたくさん傷付いてきて、それを周りに見せないようにするための必死な行動や努力の結果、ちょっと感じ悪い子になってしまっていたんだなという。ああ。なんという性善説。特に6巻収録のバレンタインのエピソードで大好きなキャラになりました。(このバレンタインのエピソードは2月の恋愛の教科書みたいな素晴らしい話なので、ぜひ!)
みんながそれぞれ考えている自分のこと。相手のことを考えるからこそ、言ったり、言わなかったりすること。そのちょっとした思いやりや嫌われたくないという怖さが誤解を招いてしまうこともしばしば。そんなみんなにちょっとずつ影響を与えていくみつみちゃん。
なぜこのマンガはととのうのか。
それはみつみちゃん自身も、またみつみちゃんの周りも、みな“いい子”という正解や社会的な成功のテンプレに向かっていくのではなく、失敗も肯定していくから。そのままのみんなと楽しい学校生活を送っていくには自分はどうしたらいいか、相手に何をしてあげられるか。そんなみんなの思い合いが、心をきれいにしていくのです…。
そんなわけで今日のお茶です。
このみつみちゃんの故郷、鈴市凧島町ですが、おそらく石川県珠洲市蛸島町(こちらは「たこしま」と読みます)がモデルです。能登半島の先、奥能登ですね。
そういえば以前、奥能登芸術祭に行った時に蛸島にも行ったことを思い出しました。世界の果て感とアットホーム感が共存する素敵な芸術祭でした。みつみちゃんはそこから来たのか…。
石川県といえば金沢のほうじ茶文化が有名ですが「能登の紅茶」もあるんです。ということで今回はこの和紅茶をペアリングさせていただきます。
能登で栽培された茶葉を使った和紅茶「いやひめ」。
こちらが含まれたティーバッグセット「雪月花」のパッケージは、金沢の雪吊りのような、上品なデザインです。
とっても甘い香りとお味の和紅茶です。全てを肯定したくなるような、優しい甘み。
『スキップとローファー』と甘い和紅茶で、命の洗濯、してくださいね。
※この度の珠洲地域の地震によって被害を受けられました皆様に心よりお見舞い申し上げます。芸術祭で行った場所が被害に遭っているところもニュースでお見かけして、とても心配です…。余震のこともあり、住民の皆様は不安な気持ちでお過ごしかもしれませんが、安心して暮らせる日々に戻ることを心から願っております。また珠洲に伺います!
お茶『能登の紅茶 いやひめ』(お茶の上林)
世界農業遺産の能登島で栽培された茶葉から作られた紅茶です。花のような甘い香りとほのかな甘味が特徴です。(通販商品 「雪月花」)
HTTPS://KANBAYASHI-CHAHO.SHOP///?PID=142345519
漫画『スキップとローファー』(高松美咲)
岩倉美津未、今日から東京の高校生!
入学を機に地方から上京した彼女は、勉強こそできるものの、過疎地育ちゆえに同世代コミュ経験がとぼしい。そのうえちょっと天然で、慣れない都会の高校はなかなかムズカシイ!
だけど、そんな「みつみちゃん」のまっすぐでまっしろな存在感が、本人も気づかないうちにクラスメイトたちをハッピーにしていくのです!
HTTPS://AFTERNOON.KODANSHA.CO.JP/C/SKIPTOLOAFER/
- Actor
伊澤 恵美子 / Emiko Izawa
静岡市出身(元茶農家の孫)。俳優としての主な出演作に、映画『子宮に沈める』、ノーミーツ『門外不出モラトリアム』など。音声コンテンツプラットフォーム AuDeeでは漫画家・山田玲司氏の番組「山田玲司とバグラビッツ」のレギュラーアシスタントを務める。1000種類の日本茶を1000日間飲み続けるチャレンジ「1000茶」挑戦中(現在800日超え)。コミュニケーションをテーマにしたお茶のプロダクトブランド「BYSAKUU」の立ち上げにも携わる。推し茶は香駿。
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