自由な酒文化と手触りのあるクラフトな場を一緒につくりませんか?

福島のクラフトサケ醸造所[haccoba]佐藤太亮氏インタビュー


RiCE.pressRiCE.press  / Oct 11, 2023

2021年2月、福島県南相馬市小高おだかに開業したクラフトサケブルワリー[haccoba -Craft Sake Brewery-]。さまざまな食材、またはアーティストなどともコラボレーションして日本の酒造りの自由な風を吹かせている。新商品は発売されるや否や完売となる人気ぶり。7月には二軒目の醸造所をオープンした代表の佐藤太亮氏にインタビューを行なった。

——お久しぶりです。「日本のサケ特集」(No. 26 January 2023)の際に南相馬市小高の醸造所を訪問させていただいた以来ですね。7月には、浪江に二軒目の醸造所をオープンされました。小高の一軒目が誕生してから2年ちょっとということで、さすがスピード感が速いなという印象を受けました。

浪江の醸造所の構想は、小高でのオープンから約半年ほど経ったころから始まっていました。もともと、一つの醸造所を工業化して大きくするつもりはなかったんです。規模感が大きすぎない場の方がつくる喜びを感じやすいと思っているので。僕達の醸造所のみならず、小さく手触り感のある場が日本、世界中に広がっていく未来を夢見ています。

——まさにクラフトというか、あくまで、ものづくりの感覚を大切にされているんですね。

そうですね。浪江に限ったことではありませんが、来期からは蔵としての醸造責任者という概念をやめる予定です。自由な酒造りを目指す組織として、絶対的な存在はいなくていいと思ったんです。常にひとりの人間の判断を仰ぐより、一緒にやっている仲間のクリエイティビティを最大限引き出す方がいいに決まっている。もちろん、衛生管理や環境管理などいいお酒を造るための責任者はいるけれど、味づくりについてはタンクごとに責任者を変えていこうと考えています。

——浪江は南相馬よりもさらに原発に近い距離にあります。二つ目の拠点を浪江にした決め手はなんでしたか?

僕らのいる地域は震災後人口が著しく少なくなってしまったエリアでもあります。町ごとの人口規模が小さいからこそ、自治体区分を飛び越えた文化的連帯が特に大事だと感じています。今やっている小高の醸造所にはパブがあり、若い人たちが沢山来てくれる。それもあって、僕らが隣の浪江町に醸造所を造ったら、多少は小高と浪江の間に人の流れを生み出せるんじゃないかと思いました。つながりで文化や暮らしをつくって、それを共有する場になれたら嬉しいです。

——次に向けて動き出していることはありますか?

今年の12月、三つ目の醸造所を開く予定です。無人になったJR小高駅の駅舎を借りてやるんですけど、駅自体は現役なので、もちろん電車も来るし人も来る。僕が調べる限り、現役の駅舎でホーム直結の醸造所は世界でもここだけなんじゃないかな。ホームに着いたら目の前に醸されている風景があるって、まちの入り口として最高じゃないですか? 小高に来てくださった方のスイッチが入る場所になると思っています。

——地域を盛り上げたいというのも、小高が好きという思いがあってこそですよね。

本当にいいところですよ。多種多様なジャンルで起業している若い人が集まっているので、ゼロから自分たちでまちを作っていけるんです。イノベーションや面白いものは、カオスから生まれてくると思っていて、今はまさにそういう状況を楽しんでいます。

——新醸造所のオープンもあり人材募集をされていますが、どんな方に来てほしいですか?

酒造り文化、地域文化に共感していただけることは前提として、いろんな才能のある方に来ていただきたいですね。特に、事業を推進していける経営力や企画力のある方。駅舎、浪江以外にも常に細々と事業が同時進行していて、僕だけでは手が回らなくなってきているので、そうした方が仲間になってくれたら心強いです。移住というのはもしかしたらハードルが高いかもしれないですが、ものづくりの仕事がベースにあるからこそ現場との距離が重要だったりするので、小高の地で一緒に事業を進めていけたらと思います。

佐藤太亮(さとう たいすけ)
1992年生まれ、埼玉県出身。IT企業に勤め事業開発などに携わる。自らの酒蔵立ち上げを志し、新潟の[阿部酒造]で修行。2021年2月、福島県南相馬市小高にクラフトサケブルワリー[haccoba -Craft Sake Brewery-]を立ち上げる。
WEB haccoba.com
IG @haccoba

Photo by Tameki Oshiro @tameki_oshiro
Interview & Edit by Yoshiki Tatezaki
Assistance by Rin Inoue

RiCE No. 26 JANUARY 2023
特集 日本の自由なサケ

「麹」をキーワードに「日本酒」「焼酎」「クラフトサケ」と、ジャンルを超えてクロスオーバーする“日本のサケ”、その最前線に迫った一冊。『J.S.P(ジャパン・サケ・ショウチュウ・プラットフォーム)』さらには『クラフトサケブリュワリー協会』の設立もあり、「麹」がつなぐ日本独自の酒文化はさらに多様に。今まで知る人ぞ知る酒であったクラフトサケもいち早く特集しました。

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