日本のジンカルチャーを牽引し続ける男
ジャパニーズジンの現在地
「ジンは最も自由でイノベーティブなお酒」。世界中のジンが並ぶ壁の前でそう語ってくれたのは、三浦武明氏。活気付く日本のジンカルチャーを夜明け前から知り、今なお牽引し続ける男である。
ジャパニーズジンの現在地、そしてこれからを聞いた。
三浦武明|株式会社フライングサーカス 代表取締役 / GIN FESTIVAL TOKYO主宰。2000年に[HERE WE ARE marble]をプロデュースし、 カフェブームを牽引。 以降数々の飲食店プロデュースに関わり2005年に独立。2019年には世界30カ国以上の料理を提供する[TOKYO FAMILY RESTAURANT]をリニューアルオープン。1,000銘柄以上のクラフトジンをラインナップする。GIN FESTIVAL TOKYO2024が10月19・20日に開催予定(イベント詳細はこちらの記事にて)
それまでジンには馴染みのなかったエリアに小規模な蒸留所が次々と誕生し、300年の歴史を誇るロンドンジンに、その土地の香りをのせる新しい“クラフトジン”が生まれたのが2010年前後。同時期、世界のオーセンティックバーのメニューには、柚子や山椒といった言葉が踊り、ジャパニーズウイスキーの評価も高まっていた。その動きを体感した三浦さんは、伝統的な酒蔵メーカーや素晴らしい素材がたくさんある日本でクラフトジンが盛り上がることを予感。さらには洋酒と和酒の垣根を壊し、世界に広がることが鮮やかにイメージできたという。
その後、世界のジンが揃うジン専門店を渋谷にオープンさせたのは2014年。
まだ世界中のジンを集めても500〜600銘柄程度の時代である。そこから世界各国の蒸留所を巡り、日本の蒸留家たちと出会い、ジンを求めるお客さんたちと会話をしながら世界のクラフトジン、そしてジャパニーズジンの加熱ぶりを最前線で目撃し、語らい、盛り上げてきた。三浦さんが見てきたこの10年弱で、ジンの銘柄数は10,000種をゆうに超え、今やジンは世界で最も多くの国と地域で作られる蒸留酒になった。
東京・渋谷にある[TOKYO FAMILY RESTAURANT]。
1,000銘柄以上を誇る国内最大級のクラフトジンや世界各国の料理が揃う。また店舗には蒸留所も併設。“Gin is Music.”をテーマに香りと音の探求をするブランド「Disttiler M(ディスティラーエム)」では東京下町の製作所と一緒に開発したオリジナルの蒸留器やボトルなどを使用している
「その土地固有の素材やテロワールを、香りで直感的に楽しめるのがクラフトジンの魅力。お酒の楽しさを発見し、新しいお酒と出会う入口にもなっている。それはジンが、いろんな素材を使って作りたい味わい設計できる自由度の高いお酒だから。自由でイノベーティブであることはとても大事なこと。新規参入の人たちもアイデアで勝負できるし、昔からある酒造メーカーが伝統の技術でも勝負できますから」
日本では2016年にクラフトジン「季の美」がリリースされたことを契機に蒸留所の数は増え続けているという。四季があり、季節ごとのボタニカルが豊富なジャパニーズジンは銘柄数も急増。伝統的な焼酎メーカーも、ジン蒸留に次々と参入している。ジンは香りのお酒であるが、焼酎は強い味わいが特徴。そこが焼酎ベースのジンを作る難しさでもあるが、新しいジンや世界には稀な食中酒としての楽しみ方が生まれる可能性も秘めている。
「コロナ渦以降は、異業種からの参入も増えています。東京に蒸留所が次々と生まれていることは特筆したいですね。彼らもまた『東京でジンを作る意味』を多角的に捉え作っている。ジンはそういう多様な作り手が入り乱れる異種格闘技の場となっている。ここからの10年は、世界中でジンだからこそ生まれるお酒、それでいて今までのジンにとらわれない名作が生まれてくるはず。それが日本から生まれることだって多いにあると思っています。小さな日本の蒸留所で作られたジンが世界のどこかのバーで飲まれているなんてことはもうすでに起きていますから」
今、この瞬間に日本のどこかで作られるジンが、ジンの歴史を変えるかもしれないというわけだ。
TOKYO FAMILY RESTAURANT
東京都渋谷区東1–3–1 カミニート20/3F Google map
水木金 Lunch 12:00–14:30 LO/Dinner 18:00–22:30 LO