茶縁
秋に熟した 「蔵出し茶」 を味わう
まろやかさと奥深い味わい
今年の猛暑はいつまで続くのやらと思っていると、最近、少し秋の風情を感じるようになってきました。
日本酒に夏を越えて秋になって香味が円熟し旨味がのった「秋あがり」があるように、お茶も同様に「蔵出し茶」があります。
徳川家康は深い味わいのする熟したお茶が好きで、春の新茶を茶蔵に寝かせて熟成させました。晩秋になって茶蔵を開き、駿府城まで運ばせて飲んでいたそうです。
▲ 円熟したお茶で和む
春に採れた新茶がフレッシュな味わいがあるのに比べ、「蔵出し茶」は寝かせることによって、作りたての時の荒さやカドがとれて、まろやかさと奥深い味わいが楽しめるのが特徴です。
緑茶の熟成の仕方は、冷蔵庫の中で茶葉を寝かせるのが基本です。つまり、春の新茶を熟成用に予め買っておいて、封を切らずに夏を越えて秋口に開けるのが望ましい熟成方法です。
烏龍茶 (発酵・焙煎が重めのタイプ) 、焙じ茶、紅茶、プーアル茶など重発酵、重焙煎のお茶の熟成は冷蔵庫ではなく、常温で数年間寝かせます。
緑茶も発酵茶も無酸素状態で熟成させることもポイントです。
ぜひ、手元に新茶があったら寝かせておいて、秋の夜長にゆっくりと楽しんでみてください。
- The Tea Company Director
田島 庸喜 / Nobuyoshi Tajima
The Tea Company取締役。茶師・薬膳師。北京中医薬大学日本校卒業。和食の板前を経て、漢方医の資格を取得後、東京・広尾にて中国・台湾茶専門店を経営。現在は中国茶文化の研究をライフワークとし、セミナー、商品開発、著名レストランへのお茶のコンサルティング、料理とのペアリングの提唱などを行なう。また、日本国内のお茶生産農家をめぐり、日本茶の可能性について探っている。
http://the-teacompany.jp/