
「アラサー、パリへ行く」20代最後のフランス滞在記
第2話 場末のショッピングモール
2月のはじめ、これからワインの産地ロワール川流域(Angesという都市)へ向かうところ。駅の近くにあったカフェでコーヒーを飲んでいる。
パリ郊外の駅での、電車の待ち時間。
ターミナル駅だし、おっきいし、駅構内のカフェやショップはとてもきれい。
でも、なんだか落ち着かないのでいったん駅の外へ出てみた。駅の目の前のビルにコーヒー1杯1€の看板を見つけて即入店。
でも結局それは謳い文句なだけで、アメリカーノの中くらいのサイズを頼むと3€いかれた。そういうもん。
このカフェがあるのはわりと大きなビルで、オフィスビルかな?と思って入ってみた。でもじつは商業施設のよう。
ただ、この日開いていたお店はこのカフェと、ほぼ全部セールしてます、みたいなカバンのお店の2店のみ。ほかは空きテナントスペースばかり。
急に地元(地元とはいっても田舎すぎるので実家から車で30分くらい行ったとこ)の町のショッピングモールを思い出した。
幼い頃は、そのショッピングモールが大都会だった。今考えたら3-4階建てくらいの小さな施設だったけど、田舎もんの自分からしたらそこに連れてってもらえたらなんでも揃う、そんな世界。
大人になって、数年前に会社員を辞めて地元に帰った時、久しぶりにそこに行った。自分が外の世界を見てきたから、施設が小さく見えるのもあるはずだけど、何よりも、知ってるお店がほぼ閉まってて、施設内の営業しているお店はほんの数軒のみ。
ぼくの地元は本州のほんとに端っこの田舎だから、少子高齢化による学校の閉校やら、公共交通機関の廃止やら、いわゆる「過疎化」が進んでいくのも少しは仕方ないと思っていた。
でもでも、そのショッピングモールがある町は昔のぼくにとっての大都会。そこにも過疎化の波がきているのかあ、と少し寂しくなった。
まさにいまぼくがいるパリのカフェ(があるショッピングモール)でも似た空気を感じる。
ただ、数年前に地元でこういった施設を見た時は寂しさを感じたけど、いまはなんだか落ち着きや哀愁のようなものを感じてしまうことがある。
目の前の窓には消えかけの落書き、おいしくも不味くもない機械で淹れたコーヒー、店員のおばちゃんの退屈そうな仕事ぶり、そもそもカフェなのかファストフード店なのかわからないメニュー構成。
一度落書きを消すことを試みた形跡はあるけどたぶん途中でやめてる。笑
なんなんでしょう、こういう場所も好きです最近は。
世の中には素敵な新しいレストランやカフェがたくさんある。とくに最近は地方でもそんなお店がある。
ぼくの地元はとても田舎だと書いたけど、そんな田舎にもおしゃれなお店が増えている。個人店だけじゃなく、寂れた町をまるごといまどきの風景に変えていく、そんなプロジェクトさえもある。
そういう場所にいくことも好き。
そして自分でお店を始める際には、デザインや商品構成などは今の時代に沿ったものに寄せたいとは思っている。
でも、新しくできた場所、あるいは流行りの場所、それらにはない空気感が、いまぼくがいる「カフェかファストフード店かわからないようなお店」にはあると思う。
・温泉街でおばちゃんがひとりでやってるスナック
・看板に「清酒〇〇」と酒の銘柄が書いてあるタイプの地方居酒屋
・クリアファイルの中のメニュー用紙が褪せて黄色くなってる喫茶店
日本でほかに例えるならこういうお店。
そういったお店の経営状態がどうなのかはわからない、店主の人たちがどういう気持ちで続けているのかもわからない。でも好きなんですよね。
フランスではよく「Café de la Gare」みたいな店名を見る。直訳すると「駅のカフェ」。
狙って無さすぎ。でもそういう感じがいいんです。
いまどきのお店からは感じないような、流行を狙ってないからこそ生まれる空気感や、時間の経過から生まれる哀愁。
これは南仏のなんでもない田舎町で偶然見つけたカッコ良すぎる店。朝から近所のおじさんが集まってエスプレッソ飲んでたばこ吸って談笑している。奥では馬券も買えるし夜はたぶん飲み屋になる。メニューも内装もシンプルできれいに掃除が行き届いていて、地域のみんなを受け入れる懐の大きさとブレない何かを感じるお店。なんだか『お邪魔させていただき恐縮です』って気分になったほど渋くてカッコよかった。
おしゃれなものばかりって僕には少ししんどいときがある。
何かを追いかけるような流れについていけないときがある。
情報がたくさん手に入る今、それっぽいものをつくること、お客さんを呼ぶこと、それらはちゃんと狙えば、手段を選ばなければ、ある意味誰でもできてしまうのかもしれない。(お店を続けることはめっちゃ難しいことだと思ってますし世の中のお店やってる方や経営者の方々、尊敬してます!)
そんな中で、世の中の大きな流れとは違うところにあるような、何かを貫いているのかもしれない、もしくは取り残されているのかもしれない、そんな場所に憧れや安心感を抱く最近です。
自分の力でちゃんと稼げるようになってから言えってことなんですけどね。
ぼくからそんな哀愁が出てくるのはまだまだ先の未来になりそうです。
散文でした。
感想、ご意見などあればいただけたら嬉しいです。
フランス有数のワインのサロン(でっかい試飲会みたいなやつ)にこれからいくのですがそこには触れずに第2話はおわってしまいそうです。
そのあたりの話を聞きたい方は個人的に連絡ください!
ではまた。
1995年、山口県生まれ。
大学卒業後、一般企業にて営業職や古民家ホテルの支配人等を務める。
東京のレストラン・ワインショップに勤めたのち、現在はパリ郊外の農園を併設したレストラン[Le Doyenné]に勤務。愛称はパワー。
IG @chikara_yoshimo