開眼する人が続々!「大焼酎祭 vol.2」イベントレポート 

お湯割り片手に、新発見。焼酎のニューウェーブを味わう一夜


RiCE.pressRiCE.press  / Feb 18, 2025

2025年2月5日、東京・参宮橋[寄]。会場は熱気に包まれていた。この日開催されたのは、焼酎の伝統と未来を見据えるイベント「大焼酎祭 vol.2」。

「焼酎」といえば、レモンサワーや緑茶割りで親しむイメージが根強い。しかし今、その楽しみ方は確実に広がっている。果実や花のような香りを放つ一本や、バーボン樽で熟成されたもの ——まるでクラフトビールやナチュラルワインの裾野が時代とともに広がったように、焼酎もまた新時代へ突入している。

イベントのために作られたオリジナルグラスは、入場チケットにインクルード。おいしい思い出とともにグラスを持ち帰ることができるのはうれしい

昨年7月に開催された「大焼酎祭 vol.1」の大盛況ぶりに、その場で「次回もやろう!」と第2回の開催が決定。今回も仕掛け人を務めたのは「alpha.co.ltd 」代表の南貴之さんと、福岡県・糸島の[川久保酒店]の川久保豊愛さん。彼らの視点で厳選された焼酎が並び、訪れた人に従来のイメージを覆す新しい味わいが次々と提案される。焼酎の「今」を、見て、嗅いで、味わって、語り合う——。そのリアルな熱量を「大焼酎祭 vol.2」の様子とともにお届けしよう。

焼酎をテーマにしたRiCE最新号「特集 焼酎のない人生なんて。」もこの日初お披露目となった

今回集結したのは、[川久保酒店]のキュレーションによる南九州を拠点にした6つの焼酎蔵。カウンターに各酒造の杜氏が並び自ら焼酎をふるまうスタイル。ソーダ割り、お湯割り、水割りなど、割り方も気分に合わせて楽しんでOK。ということで、まずは喉を潤すようにシュワッと爽快なソーダ割りを。

「ソーダ割り」で際立つフルーティーな香りのインパクト —[松露酒造]&[若潮酒造]

初めに試したのは、宮崎県の[松露酒造]が手がける「焼酎をもっと自由に、もっと身近に」楽しめる一本。今回いただいた「松露Colorful」は、毎年仕込まれる定番のシリーズ。

左から「pentatonic three」、「pentatonic whitish」、「松露Colorful」

トロピカルフルーツのような香りがふわりと立ち上り、驚くほど軽やかな後味が広がる。ソーダで割れば、香りの輪郭がくっきりと際立ち、新しい焼酎の可能性を感じずにはいられない。

続いて、試したのは鹿児島県[若潮酒造]の代表作「GLOW EP05」。「酒屋が選ぶ焼酎大賞」で3年連続、芋焼酎部門にて大賞を受賞した筋金入りの実力焼酎だ。

左から[若潮酒造]の特別酒「GLOW lab no.6.5」、「GLOW EP 05」、「GLOW EP07」

マスカットや柑橘を思わせるみずみずしい果実の香りで、雑味のない透き通った味わい。炭酸の刺激が焼酎の持つ果実香を際立たせ、焼酎の新しい表情を引き出す。加えて、2024リリースの「GLOW EP07」もトライ。ハーブティーのような複雑味と同時に赤ワインのような艶やかな重厚感ある香りがじんわりと口中に広がる。こちらはお湯割りもおすすめだそう。

この日のために造られた特別な焼酎も各酒造から限定24本ずつリリース。イベントでしか飲めない貴重な焼酎も味わうことができた

「お湯割り」で立ち上る蜜芋の個性 —[柳田酒造]&[白石酒造]

2月の肌寒い夜には、やはりお湯割りが恋しくなる。

宮崎県[柳田酒造]がイベントのために仕込んだ特別な一本、「千本桜 dasai.2025」。紅はるかを貯蔵庫で40日以上熟成させ、蜜芋のような濃厚な甘みを引き出し、さらにバーボン樽でひと月熟成。その上、ミズナラ樽で寝かせた麦焼酎をブレンドするという、手の込んだプロセスを経て生まれた。麦と芋を掛け合わせたのは、今回が初めてだそうだ。

黄金色に輝くグラスから、バーボン樽由来の芳醇な香りと洋酒のニュアンスが立ち上る。ひと口のむと、ウイスキーのようなどっしりとしたコクと奥行きのある力強い味わい。人肌を温める液体が胃に届くのを感じた後に、ふわっと甘い芋の香りが口中に広がる。

一杯ずつ注ぎ、芋の香りが十分にたっているか割り具合を確かめる[白石酒造]5代目当主の白石貴史さん

鹿児島県[白石酒造]のイベント限定酒「天狗櫻(芋麹仕込み)」もまた、お湯割りが絶品。「芋麹」仕込みならではの、奥深いコクと甘みが際立つ一杯だ。自社で肥料を一切使わずに育てたさつま芋を使うことで、ピリピリとしたアルコールの刺激がなく、芋の風味がダイレクトに感じられる造りだという。湯気とともに立ち上る香りは、まるで焼き芋を割った瞬間のような甘く香ばしいニュアンス。一口飲めば、芋本来のやさしい甘みがじんわりと広がり、誰しも労が報われたようにほっと顔がほころぶ。寒い夜には、こんな一杯が何よりも沁みる。

「水割り」で引き出す自然の繊細な風味 —[中村酒造場]

イベント限定酒「Flare -yose special 2025-」、「なかむら新焼酎2024」、「なかむら」。左から並ぶ3本のうち、今回味わったのは、中央の「なかむら新焼酎2024」。夜明けのようなグラデーションのラベルが印象的。

鹿児島県[中村酒造場]でいただいたのは、まるで季節の移ろいをそのまま瓶に閉じ込めたような一本。「なかむら新焼酎2024」は、その年の8月から仕込んだ複数の焼酎を利き酒し、“美味しい”ものをブレンドして完成させる。決まったレシピはなく、再現性もない。だからこそ、一年後にようやく答え合わせができるという。まさに、その年、その気候、その瞬間の美味しさをとどめることこそがこの一本の真髄。話を聞けば、その造り方にも酒造りの哲学が宿っていた。

[中村酒造場]6代目蔵元杜氏の中村慎弥さん。歴史ある蔵で室付き麹を駆使し、新たな銘柄を次々と生み出す。その熱意が、一杯に込められている

「扇風機やヒーターなど機械的な熱源を使わず、自然の気候に寄り添いながら発酵を促します。自分たちで窓を開けて温度調整をしたり(笑)そうすることで、アルコールの刺激が抑えられ、口当たりがやわらかくなるんです」

氷なしの水割りで試してみると、ほんのりとグァバのような南国の香りがふわりと立ち、穏やかに広がる甘みと香ばしさ。グラスを傾けるたびに、自然に委ねられた味わいとつくり手の想いがじんわりと身体を満たしていく。

焼酎×ラム酵母!伝統と革新が生んだ新感覚の一杯 —[大山甚七商店]

伝統的なかめ壷仕込みの焼酎蔵が、今、新たな扉を開いている。鹿児島県[大山甚七商店]は本格芋焼酎のほか、ラム酵母を使った焼酎とクラフトジンという、一風変わったラインナップも手がける。

[大山甚七商店]6代目蔵元杜氏の大山陽平さんの話に熱心に耳を傾ける会場の人々。焼酎造りへのこだわりやラム酵母の魅力について教えてくれた

イベントで味わったのは、業界初ともいわれるラム酵母仕込みの本格焼酎「薩摩の誉 ラム酵母 RUM YEAST EDITION 2024」。その斬新な味わいにワクワクさせられた。

超高温発酵によって生まれる香りは、焼き栗や綿あめのような甘い香ばしさがふわっと広がる。今回はトニックと炭酸をハーフ&ハーフで割って飲んでみたら、焼酎というより洋酒のようなふくよかな飲みごたえ。爽やかさとほのかな甘みが絶妙で、新感覚のカクテルのよう。これも焼酎なのか。そんな驚きが次の一口を誘う。

イベントは15時にスタート。平日にもかかわらずオープン直後からすでに会場は大盛況。仕事終わりの人も続々と加わり、夜が深まるにつれて熱気を帯びる

焼酎とペアリング。イベント限定フードも目白押し!

焼酎の奥深さを楽しむなら、やっぱりフードも欠かせない。イベント限定の特別メニューを手がけたのは、代々木上原で「MAISON CINQUANTECINQ」や「LANTERNE」を営む丸山智博シェフ。フレンチと和食を行き来するシェフならではのセンスが、焼酎の新たな可能性を引き出していた。

たとえば「ねぎま唐揚げ」。フレンチから着想を得たこの一品は、カリッと揚げた鶏の旨みに、葱の甘みとすだちの爽やかさがアクセント。噛むたびにじゅわっと広がる風味が、焼酎の香りとシンクロする。さらに驚かされたのが、「マグロとビーツのなめろう」。タルタルのまろやかさとなめろうの旨みが合わさり、そこに燻製ビーツの香ばしさがプラス。

「ねぎま唐揚げ」は火入れをひと工夫。葱を少しはみ出るくらいの大きさに切ることで、端が香ばしく仕上がり、内側はじんわりとろとろ

造り手の想いが詰まった焼酎を、シェフのひと皿とともに味わう。そんな贅沢なペアリングができるのも「大焼酎祭」ならでは。飲むだけじゃない、食べることで焼酎の新しい魅力に出会える場だ。

伝説のおでん屋[おかめ]直伝の京風おでんも。自家製のさつま揚げとともにお湯割りを一口…

「焼酎のない人生なんて。」——そんな言葉がしっくりくる夜だった

「南さんは、焼酎がどう生まれるのか、その現場を見たい人なんです。造り手を知り、人と人との関係ができることで、こんな場が生まれるんですよ」と川久保酒造の川久保さん。実際、この夜は“味わう”だけではなく、造り手の哲学を“知る”ことで焼酎の奥行きが一層際立った。同じ酒造でも仕込みが変わればまったく別の顔を見せる。その懐の深さ、飲み比べる楽しさに、多くの人が驚き、魅了された。

「焼酎はかっこいい」——そんな空気が、この夜には確かに流れていた。新しい世代が集い、語らい、味わうことで、焼酎の未来はもっと面白くなっていく。南さん、川久保さん、造り手のみなさーん! また次回の開催もお願いします! みなさんも乞うご期待!

Text by Sakurako Nozaki(文 野﨑櫻子)
Edit by Yoshiki Tatezaki
(編集 舘﨑芳貴)
TAGS

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく