この酒いいよ、飲んでみて

コラボ報告②白金台こばやし×animism bar鎮守の森


Toshiki TakeguchiToshiki Takeguchi  / Nov 16, 2018

日本料理に合わせる特別なペアリング

今回は白金台にて繊細かつ大胆な発想の組み合わせで宝石箱のような日本料理を提供している[白金台こばやし]の小林板長と11月11日に開催したコラボをご紹介します。当日お出しした料理とお酒のリストです。それぞれの料理にお酒をペアリングしました。

一、先付

たら白子の薯蕷 (じょうよ) 焼き 丹波黒豆を添えて

獅子の里  (石川県) 活性純米吟醸 鮮

1杯目は食欲増進させるために炭酸があるお酒で胃を刺激する。ただしつくね芋の細胞を壊さないようにガス感は強すぎず、豆の風味を邪魔しないように香りも強すぎない酒質で選びました。

二、ふきよせ八寸

滋賀の大葉菊菜と菊花と生とんぶり すだちをきかせたお浸し/柿の胡麻和え胡桃のせ/ミニ サバ寿司/サロマ牡蠣 磯辺煮 (お苦手な方はカワハギの肝に変更) /赤貝千草巻/三河の鰻 山椒焼き 直焼きで/南京チーズ/つぶし銀杏/宝石ハタの煮こごり/甘エビ紅葉和え/玉子カステラ/くわいせんべい/馬鈴薯と薩摩芋のチップス/敷葉:宍粟の紅葉と柿の葉

えぞ乃熊  (北海道) 純米酒

1つの構成で多種多彩な味ベクトル (※1) が存在します。どれかに焦点を当てると他がぼやけてしまうので、どんな味わいにも寄り添うクリアな味わいで牡蠣や甘エビのミネラルと交ざりやすい、やや硬質な仕込み水で選びました。
ふきよせ八寸は以下の通り。

三、お椀

ずわい蟹のしんじょう、柚子、チンゲンサイ、丹波しめじ、金時人参

黒耀  (長野県)  特別純米

蟹しんじょうの食感が非常にふわふわと柔らかく、この柔らかさを生かすべく超軟水の酒質が絶対条件。しめじの風味と柚子の香りを損なわないよう香りが低いお酒を選びました。こちらの蔵の仕込み水の硬度は9.5mg/ℓと非常に軟水です。料理が温かいので、47℃まで燗をつけてから燗冷ましで42℃で提供いたしました。

四、お造り

ぼたんエビ 子の塩辛のせ (生エビがお苦手な方はアオリイカに変更) 、北海道羅臼のブリ づけで、鰆 わら炙り お醤油のムースで

開春 (島根県) 純米超辛口中汲み生酒

 

ぼたんエビは身の「甘味」と塩辛の「塩味」を強く感じ、鰤は身の「旨味」とづけの辛味大根の「辛味」を感じ、鰆は身の「脂味 (甘味) 」と炙った「薫香」が嗅覚を通して独自の味として察知しました。「辛味」を和らげるのと「脂味」をさっぱりさせることを狙って、「酸」の強いタイプで選び、エビのミネラル感と一体感を演出する為にキリっと引き締まった味わいが欲しいと考えこちらのお酒にしました。

五、特別メニュー

 北海道寿都のあん肝 照り煮、ほっけの子 旨煮

こちらの皿は急遽用意されたもので、あん肝の凝縮させた旨味とコク、ほっけの子の絡んだ出汁の旨味が上品。コクに対応できる旨味があって、ほっけの子を包み込むようなさりげない乳酸があるような酒質がいいなと思ったのですが、このお皿用のお酒を用意していませんでしたので急遽その味を「造る」という発想で骨格を作るベースとして「開春」、旨味の「川鶴」乳酸の「香住鶴」として開春25%+川鶴50%+香住鶴25%でブレンドいたしました。

六、焼物

 マナガツオ田楽 白味噌のせ、きのこの佃煮、山ゴボウのナッツ浸し、原木しいたけ

香住鶴 (兵庫県) 生酛仕込み

こちらは田楽味噌の風味を更に強く感じるような骨格付けをしたら面白いと思い、麹菌と乳酸を強く感じる酒質で原木しいたけの隠し味のポン酢の酸味とケンカしないように。また、香り成分由来に感じる酸が現れないように、極力香りの少ない酒質で選びました。提供温度はこの料理の温度と違和感のないようにお燗にて。温度は50℃まで上げ燗冷ましで45℃でお出ししました。

七、変わり鉢

 秋刀魚と秋茄子 壬生菜と湯葉

肥前蔵心 (佐賀県) 特別純米 25BY

こちらは、壬生菜と湯葉が爽やかないいアクセントになってましたので料理そのままでもいいかなと思い、メインの秋刀魚と秋茄子を炊いたものに焦点を絞りました。茄子の爽やかな風味と秋刀魚のコクと旨味。正直深みのある味だったらどんなタイプの日本酒でも嫌味なく寄り添うでしょう。今回は料理の味のバランスと均等のバランスのお酒にしようと、コクがあり優しい旨味があり、ほっこりするような味がいいなと思い、平成25年度に造られたお酒を低温で寝かせてまろやかなコクが出ているこちらのお酒を合わせてみました。お燗で60℃まで上げてからの燗冷ましで提供温度は47℃にてお出ししました。

八、煮物

 京都の蕪と甘鯛 九条ネギと柚子

川鶴 (香川県) 特別純米

蕪の青々しい旨味、甘鯛のやや脂味となぜかちょっぴり塩味を感じ、九条葱の濃厚な甘味と柚子の爽やかな香り。ベースの出汁の旨味を利用して一つ一つの素材を更にくっきりと形作るように、旨味出汁のような酒質をイメージしました。柔らかく、なめらかでシルキーな味わいのお酒ということでこちらのお酒をセレクト。料理の出汁に近い温度がいいと思い、42℃まで燗につけたものを37℃まで冷まして提供いたしました。

九、土鍋ご飯

秋の桜えび御飯、香の物、味噌汁

鰍 (静岡県) 特別純米 ひやおろし

 

桜えびの独特の風味とミネラル感に合わせるように、こちらもお酒単体での香りが控えめで、まろやかにミネラルを感じるような酒質のものを。御飯に一緒に入った、フリーズドライし刻んだ梅干しのクエン酸をそれ単体で合わせたくなるような、炊き立ての御飯のような味わい。できたらおこげに似た旨味のあるもので、液体の御飯を演出できたらと思い、このお酒を44℃にて提供いたしました。

十、甘味

 ラフランス ゼリー包み、和三盆プリン、焼きたて和風スイートポテト

六歌仙 (山形県) ひととき ロゼ

ラフランスの果実味の清々しい清涼感と上品な甘さに食い込むような果実っぽい味わいを持ち、和三盆の上質な優しい甘味にアクセントとなるような「ジャム」っぽい香りと味わいを与え、スイートポテトの柔らかな甘さと山椒のクセも受け入れる「酸」も存在する酒質で考えました。真っ先に浮かんだのが赤黒米を使ったお酒で、酸味と甘みのメーターが吹っ切れたような感じで選びました。最終的に4蔵の作品にまで絞って最終的に当日の気温、湿度を予測しこちらのお酒に決定しました。
ラフランスゼリー、和三盆プリンには上手く合わさったかと思いますが、スイートポテトに関しては、もう少しコクのある貴醸酒のほうが良かったかと反省しました。こちらは冷酒で提供いたしました。

今回のコラボは、八寸の中のバラエティー豊かな味わいや甘味の甘さは甘さでも三種ともベクトルの違う甘さなど非常に難しくその反面うずうずするような合わせる楽しさを経験させていただいたコラボでした。また次回のコラボ報告もよろしくお願いいたします。

▲ *1 味のベクトルについての解説

白金台 こばやし
住所 : 東京都港区白金台5丁目11−3 バルビゾン91 1階
電話 : 03-5420-5884
時間 : 18:30~23:00 (L.O.20:30) 土日祝は昼も営業 12:00~14:30 (12:00一斉スタート)
定休日 : 水曜日

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