連載対談:茶でも一杯
夏帆×丸若裕俊 「お茶が紡ぐ縁と時間の話」
[GEN GEN AN] の丸若裕俊が毎回ゲストに合わせた茶を淹れて飲みながら対談するコーナー「茶でも一杯」。
第三回のゲストは、新連載『#茶ガール』でも登場いただいた女優の夏帆さん。渋谷 [GEN GEN AN] で行われた対談の模様をお届けする。
体が欲している味を美味しいと感じるだけでいい
———お二人はどのようにして出会ったんですか?
丸若: 『茶と今日。CHA TOKYO』という新しいブレンドティーブランドの試飲会をしていた時にきてくれたのが最初ですね。
夏帆: (『茶と今日。CHA TOKYO』ディレクターであり『#茶ガール』プロデューサーの)香奈ちゃんが呼んでくれて。その時にお会いしました。
———夏帆さんは元々お茶は好きだったんですか
夏帆: お茶は好きですね。家で淹れたりしますし。外出してもコーヒーよりお茶を飲みに行く方が多いです。
丸若: 夏帆さんは、お茶に対してどんなイメージを持っていますか? 結構お茶って、ややこしそうなイメージを持たれることが多いのですが。
夏帆: 確かに突き詰めて行くとややこしそうなイメージはあります。でも、お茶ってそもそも生活には馴染みのあるものですよね。普段から当たり前のように接しているものだからこそ、意外とわからないことが多いかもしれないです。
丸若: (僕は)お茶って意外とすごくシンプルなんじゃないかなって最近思っていて。「今日あれ飲みたいな」って体が欲している味が美味しいと感じるだけでいいと思うんです。例えば、緑茶を欲している時は体をクリアにしたいとか。一方でほうじ茶とか番茶はホッとしたい時とか、体の芯をあたためたい時に飲みたくなることが多い。野草茶なんかはもっと分かりやすくて、びわ茶などは女性にとってポジティブな効能が昔から言われているから、女性で好む人が多いですね。
夏帆: 今年頭に(映画の撮影で)鹿児島の南大隅町っていうところに行ったんですけど。そこの名産がびわ茶で、よく飲んでいました。
丸若: (夏帆さんは)お仕事でいろんなところ行ったりしますよね? そういう時に常備薬じゃないけれど、何種類かお茶を持っていって飲んでもらったりするのもいいと思います。
夏帆: 確かに、現場とか行くとお茶あればいいなっていつも思いますね。お茶飲むとやっぱり落ち着くので。ティーバッグは気軽に淹れられるからいいですね。朝時間がないけど飲みたいときもありますし、私は移動が多いので、水筒に入れて持って行ったりもします。
丸若: 僕たちの茶葉の中にはティーバッグをボトルに入れて水で2~30秒シェイクするだけのものもあって。振っているだけだけど、「お茶淹れてるんだ!」って気分になれる。結局、ちょっと手間かけたいけど、楽もしたいんですよね。
夏帆: それはいいですね。私、なにかにハマっている時はすごく凝ってやるんですけど、途中で面倒臭くなって持続できないんですよね。でも、こういう風に簡単だと続けられる。
丸若: ちなみに今は何かハマっているものはあるんですか?
夏帆: 今はなんだろう……最近料理はよくしています。(料理自体は)もともと好きなのですが、作るときと作らないときの波はすごくあります。そんな凝ったものは作りませんが、昨日はきんぴらごぼうと豚汁を作りました。
丸若: 料理の味付けとかは家の味とかに影響されてたりしますか?
夏帆: 自分の味付けですね。私、濃い味がすごく好きなんです。
丸若: お茶を淹れることって一種の調理なので、こだわりを持ったら本当に深くて、ある意味答えは永遠にないのかもしれないくらいなんです。でもそれは裏を返せば家庭の味、自分の好みも存在しているってことで、楽しみながら自分の味を見つければ良いんですよね。体調が弱っているときに濃いめの方がいいのか薄めの方がいいのか人によって違うんですよね。
夏帆: 好みは人それぞれですよね。私はなんでも濃い味が好きですね。
丸若: そのうちきんぴらごぼうにあうお茶とかも飲んでもらいたいな。薪火晩茶や生姜焙じ茶も、食中に飲むのにすごくあうんですよ。
夏帆: すごく合いそうですね。
———美味しいもの食べた後ほどお茶って飲みたくなりますよね。
丸若: 余韻を楽しむのがお茶だったりするので。油とか重いものを取り去って、最後のいいところだけを残してくれるんです。お茶自体も調味料になって、全体のバランスがいい感じになるんですよね。
それぞれの“役”に対する向き合い方
丸若: 僕たちはお茶にそれぞれ役どころがあると思っていて。こっちのお茶はどちらかというと柔らかい性格、こっちははっきりしている性格という風に、同じお茶でもそういう分類わけをしているんです。お茶を淹れる時もそれぞれの気持ちに合わせて淹れたりするのですが。夏帆さんは、(映画や舞台などで)役を与えられた時って内面からシンクロして行くものなんですか?
夏帆: 人によっては違うと思うのですが。私は割と(役柄と自分の)共通点を探すかも知れないですね。感情とか感覚的なことってすごく大きいと思っていて。悲しいとかはこの辺が(お腹あたりを指しながら)痛くなるとか、体が感情に反応することってあるじゃないですか。だから自分が(役柄と)同じような経験したことないかなってすごく探します。
丸若: ゼロから思い描くというよりかは、自分の中で持っているものから探っていく感じですかね。
夏帆: 私はそうですね。もちろん、それでも経験したことないことはたくさんあるので、そうなると想像していくしかないのですが。でも、自分の心と体を使うだけだと思っているので、基本的には自分の中から探していきますね。あとは思い込むとどんどん役柄に近くなっていくっていうのはあります。人の思い込みってすごいじゃないですか。だから、とにかく思い込んで、どれだけ自分に嘘をつけるのかっていうのも大事にしています。
お茶をすることで生まれる人との良い距離感
丸若: 一人でお茶を飲むときはもちろんあると思うんですけど。友達と飲みに行く時はどういうところで飲みます?
夏帆: 友達と「お茶しよう」ってなった時はケーキとかを食べながら紅茶を飲むことが多いですかね。あまり友達と日本茶を飲みに行くことはないですよね。もっと [GEN GEN AN] みたいな、こういうお店があればいいんですけど。
丸若: 嬉しいですね!結局、お茶って人との間にいい距離感を作るものなのかもしれないですね。仲悪い人とお茶飲んでも絶対に美味しくならないですからね。
夏帆: そうですよね、お茶飲むためにお茶しようっていうわけじゃないですもんね。
———お茶って縁を繋ぐっていうところもありますよね。
丸若: そうですね。EN TEA(丸若が代表の茶葉ブランド)っていうのもいろんな意味があるんですけど、ご縁の縁という意味もあるんです。“茶縁”を繋ごうっていう。
夏帆: お茶っていいですね。ちょっと気分が豊かになったり、気分転換にもなるし。私は、お茶を詳しく語れるほどではないのですが、いろんなお茶を知って、そこから自分の好みのお茶を見つけられたらもっと楽しいだろうなと今日お話を聞いて思いました。
丸若: 12月には枇杷の葉焙じ茶と檸檬紅茶、年明けには玄米茶を出す予定なので、それもできたらぜひ飲んで欲しいですね。
夏帆
2003年にデビューを果たすと、’07年公開の初主演映画『天然コケッコー』で注目を集る。’15年には映画『海街diary 』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。’19年には主演映画『きばいやんせ!私』、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の公開を控える。写真: 石田真澄
2017年5月自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年2月、初作品集「light years -光年-」をTISSUE PAPERSより刊行。雑誌や広告などでも活躍の幅を広げる。GEN GEN AN
住所: 東京都渋谷区宇田川町4-8
営業時間:
火/水/日/祝日 11:00 – 19:00
木/金/土/祝前日 11:00 – 23:00
定休日: 月曜
HP: https://en-tea.com/pages/gengenan
- GEN GEN AN Owner
丸若 裕俊 / Hirotoshi Maruwaka
東京生まれ横浜育ち。多種多様な文化が交わる港町で幼少期を育ち、イタリアファッションブランド勤務や日本各地の放浪の後、日本の職人との衝撃的な出会いを機に「モノコトづくり屋」丸若屋を設立。日本文化との取り組みは、パリ、ミラノ、ロンドンなど数多くの評価を得る。自身の集大成と位置付ける「EATING GREEN TEA」を掲げた、畑から世界市場を生む茶葉ブランドEN TEAを始動。 http://maru-waka.com/ http://www.en-tea.com/ https://www.instagram.com/gen2an/
- TAGS