エディターズノート
「RiCE」第17号「ハンバーガー」特集に寄せて
2021年の最初を飾るRiCEの17号は、ハンバーガーの特集です。パンの特集も、サンドイッチの特集もやってきましたが、ハンバーガーは初。本来バンズ(パン)でパティ(ハンバーグ)を挟んだサンドイッチの一種だとは思うのですが、本家を遥かに凌ぐほどの人気ぶりです。マクドナルドを筆頭にバーガーチェーンの数は膨大ですし、日々世界中で食べられているハンバーガーの生産量はおそらくとんでもない数にのぼるでしょう。ここまで世界的にメジャーかつポピュラリティーの高いフードは他にないのでは?
アメリカの文化そのものと言えるハンバーガーは、ソウルフードでもあります。 同じくアメリカで生まれたコーラと並ぶポップカルチャーのアイコンであり、もはやフードの範囲を超えたライフスタイルの一部と言えるのではないでしょうか。まさにキング・オブ・ポップならぬキング・オブ・フード。
では日本での受容のされ方はどうでしょう。マクドナルドが日本に上陸したのが 1971年、今年で50周年を迎えます。この半世紀の間、ハンバーガーは日本中で愛され、これ以上ないほど身近な存在にまでなってきました。早くて安い、ファストフードの筆頭、庶民の味方。ワンコインで何時間いようと嫌な顔ひとつされない安らぎの場所として、日本人にとっての欠かせないインフラともなっています。
また一方、ファストフードとは違う文脈で、グルメバーガーの系譜があり昨今人気を博しています。バーガー1個の値段が1,000円以上という価格帯ですが、ハンドチョップした挽肉で作るパティはもちろん、バンズもパン屋さんに特注したものを仕入れるなど、細部にまで拘りまくったバーガーも存在します。ここまで繊細な味わいのハンバーガーはおそらくアメリカ本国にも見当たらないのでは?という声もあるほど。
またそうしたグルメバーガーは魅力。縦にビルドされたスタイルの妙は確かに写真映えしますし、シェアしたくなる気持ちもわかります。昨夏放送された深夜ドラマ『女子グルメバーガー部』の影響もあるのか、人気のグルメバーガー店に並ぶ行列には「バーガー女子」も多く、ハンバーガー=オトコ飯的なニュアンスは急速に薄らいでいるのかもしれません。
そうした昨今のハンバーガーをめぐる状況は、もちろんコロナ禍にあってテイクアウトやデリバリーの需要が高まっていることも後押ししていることでしょう。さらにマクドナルドまでが植物由来の代替肉バーガーを今年より販売すると発表したことも話題を巻きました(日本での発売は未定)。さらに培養肉でハンバーガーを作るフードテックの動きも加速しており、環境問題を含むいろいろな課題解決においてもひとつの世界的指標となっているようです。ハンバーガーが未来を創る。まさにそう言いきってしまってもいいのでは。
まだ先の見通せない時代が続きますが、ハンバーガーを気軽に食べながらこの号を読んで、少しでも未来を明るくできるきっかけになれば幸いです。
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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