おいしい裏話
「決まり」(RiCE No.17)に寄せて
按田餃子はあんなにも自由な考えでできているのに、なぜか店に行くとのびのびできない。いつも混んでいるからと、変わった形態に人々が少し緊張しているからと、お店の人が決まりをあまりにもちゃんと守っているからと(でも守らないと味が変わってしまうからいいことだ)。
それが東京の不思議だなと思う。地方にあるそういうお店は、まず来る人がそのお店を選んでいる時点でなにかを決めているし、店主がほぼその場にいるので、店主の空気が働く人たちにポリシーを与える。
按田さんにいつもいて!とは全く思わないし、あのシステムを作ったことにはすごいリスペクトを感じるんだけれど、きっと放っておいても空き袋に野菜を塩漬けするような人でないとわからないさじ加減というのがあって、お店の全員がそうではないんだろうなと思う。思想に惹かれるということは、すでにその人オリジナルの思想ではないということだし。学ぶ場所という感じ。
でも、とにかくあまりにもいいお店すぎて、個人商店よ永遠なれといつも思う。
東京都渋谷区西原3-21-2平日 10:00-20:00
土日祝 9:00-20:00
テイクアウトは22:00まで可能。
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。