おいしい裏話
ぱさぱさ(RiCE No.22)に寄せて
大久保のネパール料理店だが、本格的というのを超えていて、ネパールでも食べたことがないものばかりだった。
ネパールではカレー味のカレーとカレー味のじゃが芋ばかり食べていた。しかしまたそのじゃが芋が前代未聞のおいしさで、ただゆでて炒めて塩してあるだけなのに、信じられないくらいおいしかった。あのちょっと赤みがかった大地が作る味だと納得した。
私には最初全く意味がわからなかったが、大久保の店には干し飯みたいなものがあって、それをおかずといっしょに食べると、噛めば噛むほどじわじわとおいしくなってくる。
あの乾いた空気の中ではこれは確かに合うんだろうなとしみじみ思った。日本のおかずにしっとりしたつやつやの白米が合うのと全く同じに。
ほぐし鮭(全ての鮭をほぐした系のもののなかで、いちばんおいしいと思う)
ナングロガル(干し飯あり)
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。