have more RiCE
四角い箱、丸いピザ、三角に切る
視覚が味覚に与える影響
「人は何故、四角い箱に入った丸いピザを三角形に切って食べるのか」 このフレーズを耳にするたび、料理及びそれを盛り付ける器 (この場合は箱だけど) のビジュアルと視覚で感じる美味しさの関係について考えてしまう。視覚で感じる美味しさとして料理自体のビジュアルが最重要なのはいうまでもないけど、プレート (皿や器) も視覚情報として料理のビジュアルと強い相互作用をもって視覚に訴えかけてくる。その料理が盛られるプレートが視覚情報としての美味しさに作用する要素としてプレートの形状や色は大きな割合を占めると思う。プレートの形状や色が味覚に与える影響に関する実験や考察は古今東西おこなわれているようで興味深い。
▲ カトマンズで見たモモの調理前の風景。円形の集合体
例えば、白と赤のプレートにアルフレッドソース (クリームにチーズを溶かし込んだ白いソース) とマリナラソース (トマトベースの赤いソース) のパスタを各自好みのプレートに盛り付けてもらう、というブッフェで行われた実験。白いプレートにマリナラソースや赤いプレートにアルフレッドソースのようなプレートの色と料理の色のコントラストが高い組み合わせほど、人は盛り付ける量が少なくなり、逆にコントラストが低いと盛り付ける量が多くなるという結果に。これはコントラストが高いほうが量を少なく盛り付ける、というよりかはコントラストが低い方が料理とプレートの境界が曖昧になった結果、多く盛り付けてしまうんじゃないのか? これはプレートの色が料理に作用した (料理の美味しさではないけど) 例といえなくもない。
▲ パタンで食べたオープンモモ。四角いプレートだと印象が少し変わる
さらにプレートの大きさが料理に与える影響としてデルブーフ錯視と言われる、同じ量の料理でも大きなプレートほど料理が少なく小さなプレートほど多くみえるという視覚的イリュージョン。そして広く浅い皿より狭く深い皿の方が満腹感を得られるという、プレートの深さにまで言及する考察もあったりでプレートが料理に与える影響といってもいろいろある。だが、ここまではあくまでプレートの色やサイズが視覚に影響するといったところで、味覚には直接関係はしていないんじゃないか? そう思っていたところに味覚に関係しそうな実験をみつけた。
いちばんカレーに合うプレートは?
▲ カレーには黄色い器もコントラスト高めでよく合う
白もしくは黒のそれぞれ円形または四角形のプレートでチーズケーキを食べてもらう実験で、白の丸いプレートのコンビネーションが一番甘みを感じ、美味しいと感じる結果がでたという。どこまで信じていいのかわからない感じだけど、甘味や塩味に関しては他の基本味よりもプレートのサイズや色の影響を受けやすい気もするしなぁ。こうしたレストランサイコロジー的な実験結果を踏まえてあらためてカレーに合うプレートは?と自問自答してみたところ、色は白 (一般的なカレーは茶色だとして、白いプレートだと高コントラスト) 、サイズは大きめでワンプレート (小鉢を沢山ならべるよりもワンプレートの方が人は高価に感じるという実験 or アンケートの結果を考慮して) ……あれ? ウチの店のカレープレートと真逆なレイアウトに……カレーも盛り付けも食器選びも、まだまだ奥が深いようだ。
- have more curry Owner
松崎 洋平 / Yohei Matsuzaki
東京・ハブモアカレー店主
千葉県出身。日本でカレーの食べ歩きにハマり、旅行先のインドで出会った本場のカレーにのめりこんでいく。その後、新宿にあるカレーの名店【curry草枕】のキッチンで働きつつ、月2回のみ要町のカフェで【ハブモアカレー】の間借り営業をはじめる。その評判は口コミで広がり、2015年10月、表参道に実店舗をオープン。日本のカレー文化に貢献したカレー店を表彰する「カレーアワード2015」新人賞を受賞。