【RiCE東京特集】23区ドラフト会議 2023

良き飲み屋の記憶は人の数だけ。板橋区[中華居酒屋 平家]


RiCE.pressRiCE.press  / May 8, 2023

発売中のRiCE 28号「特集 おいしい東京」では、「東京23区 ドラフト会議 2023」と題した企画を実施。飲食店が星の数ほど存在する東京において、“果たしておいしいのはどこ?”という途方もない問いに、4名が挑戦した。

野球のドラフト形式で、“おいしい区”を指名し合い、東京を彩る名店をピックアップ。RiCE.pressでは、本誌では語り尽くせなかったお店の魅力をご紹介!

第4回目は、パリッコさんが3位指名した隠れたのんべえの天国・板橋区から昭和47年創業の [中華居酒屋 平家]。

みなさんは、板橋と聞いて何を思い浮かべるだろう。都内有数の繁華街・池袋と居酒屋の聖地・赤羽に挟まれている立地ゆえ、イメージが浮かびにくいエリアではあるが、板橋駅の西口ロータリーの先には昭和の風情漂う飲み屋が軒を連ねている。

そんな板橋の良き飲み屋の代表格とも言える店が[平家]だ。

初代店主の似顔絵が描かれたキャッチーな赤看板を目標にスナックや居酒屋が数店舗並ぶビル横丁に入っていくと、つきあたりの角地に店が現れる。

テーブル、カウンターに加え座敷もある店内。壁には、少しずつ更新されていったお品書きがずらりと並ぶ。

平日にはテレビでスポーツ観戦を楽しむサラリーマンの姿が見られ、休日には家族連れも訪れるそう。各々が思い思いの時を過ごす空間では、初めてでも自然と肩の力を抜くことができる。

そんな連日賑わう店を切り盛りするのは、2代目店主・仲宗根なかそね玄義ひろよしさん。「お兄ちゃん」の愛称で親しまれている。

「店名の由来? 当時、NHKで大河ドラマ『新・平家物語』をやってたことですよ。何にもしなくても、テレビが勝手に店名を宣伝してくれますからね」

こんな気持ちの良い豪快さは、料理にも表れている。

創業当時から変わらぬ名物メニュー、チャーシュー(760円)とレバーの唐揚げ(730円)は驚くほどのボリュームだ。一口食べると後を引く濃いめの味付けに、胃袋をガッツリと掴まれる。

板橋界隈のご当地ドリンク「農協サワー(焼酎の牛乳割り)」も根強いファンの多い一杯。思わず身構える組み合わせとは裏腹にスイスイ飲めてしまう味わいには注意が必要だが、青汁サワーなど、のんべえが少しでも健康な気分になれるドリンクと一緒に試してみて欲しい。

美味しいものを、お腹一杯。
そんな気概に、店を出る頃には胃袋も心も満たされていた。

沢山の人々が足繁く通うのも頷ける名店[平家]。
実は、板橋区の再開発により2024年7月の立ち退きが決定しているそう。

農協サワーの味、あの人との団欒の時間。

常連客が幕引きを惜しむのはもちろん、歴史の詰まった良き飲み屋には、誰のことも受け入れる懐の広さがある。これを機に、[平家]を東京の記憶として体感しに行ってみてはいかがだろう。

東京には、こんな常連客になりたくなるような隠れた名店がまだまだたくさん。RiCE 28号「特集 おいしい東京」片手に、あなただけの “TOKYO SOUL FOOD” を見つけに街へ繰り出そう!

中華居酒屋 平家
03-3961-1903
東京都板橋区板橋1-16-5 角一ビル1F
月〜土 17:00〜24:00 
日・祝 17:00〜22:00 ※不定休

パリッコ
『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』などの著書を持つ酒場ライター。漫画家、DJとしての顔も。練馬区出身&在住。他区に住んだことはないが、各地の赤提灯を巡り、場所を問わず良き酒場をこよなく愛する。
Twitter @paricco

Photo by Yu Inohara
Edit by Yoshiki Tatezaki
Text by Rin Inoue

RiCE28号|おいしい東京

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