連載「あの人、そのレシピ」

五人目、髙橋くんの素麺


Shin HamadaShin Hamada  / May 15, 2023

あの人が作る、記憶に残るあの料理。

親や友人、身近な人々の料理にお金を払ったりすることはないけれど、
お店では食べられない味と空気が確かにそこにある。

人とレシピ、そしてその背景を僕の目線で記録することにした。

(取材・写真・文=濱田晋)


髙橋くんの素麺

3週間の旅を終えた髙橋くんから帰国の連絡が来た。

添えられた素麺の写真が美味そうで、これは土産話を聞きながら啜るしかない。

足取り軽く、新宿線に乗り込んで。

濱「お帰りなさいませ。どこ行ってたんやっけ?」

髙「ロンドンとフランスとドイツかな。ドイツで友達がレジデンスしてたから、その子に会いに行くのがメインで。3週間ほど」

濱「そういうのってドイツから声がかかるのかな?」

髙「それは申請して行ってた。コンペみたいなやつかな。あ、作ってるところは写真撮らないでもらって良い?」

濱「いやいやそういう仕事なのよ、これ」

髙「俺思ったんだけどさ、この野菜の生産者の人のこれあるじゃん。これ濱田くん撮ったらめっちゃ良いと思ったんだよね。俺この写真で選んだりするもん。おもろそうだなこの人、とか」

濱「依頼があればなんでも撮ります。今まで料理系撮られたことある?」

髙「ないない。でもこの素麺、葛西でも出そうかなと思って。」

濱「なんで今回素麺なの?」

髙「海外行ってたらやっぱ味の濃いものばっかだったし、殆どイモしか食べてなかったから、薄味のさっぱりしたやつ食べたくなって。で、帰ってきてから今日までずっと素麺ばっか食べてる」

濱「レシピは?」

髙「決まったのは無い。その日の気分で。今日はちょっとレモン汁入れてみようかな。濱田スペシャル」

濱「夏っぽいすね〜」

髙「魚食べれる?」

濱「食べれるよ。それ何?」

髙「メヒカリ。めっちゃ美味いよ。叔父さんがいつもくれるんだよね。漁師とかじゃなくて大工やってんだけど」

濱「へぇー関西にもあるんかな。あとで調べてみよ」

髙「つゆの中に素麺入れるよ」

濱「はいお願いします。あ、もう一回ちょっとこうしてもらえます?」

髙「はいヤラセはいりました〜」

Cooking by Yoshiaki Takahashi
Photo, Interview & Text by Shin Hamada
Edit by Yoshiki Tatezaki

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