連載「あの人、そのレシピ」
五人目、髙橋くんの素麺
あの人が作る、記憶に残るあの料理。
親や友人、身近な人々の料理にお金を払ったりすることはないけれど、
お店では食べられない味と空気が確かにそこにある。
人とレシピ、そしてその背景を僕の目線で記録することにした。
(取材・写真・文=濱田晋)
髙橋くんの素麺
3週間の旅を終えた髙橋くんから帰国の連絡が来た。
添えられた素麺の写真が美味そうで、これは土産話を聞きながら啜るしかない。
足取り軽く、新宿線に乗り込んで。
濱「お帰りなさいませ。どこ行ってたんやっけ?」
髙「ロンドンとフランスとドイツかな。ドイツで友達がレジデンスしてたから、その子に会いに行くのがメインで。3週間ほど」
濱「そういうのってドイツから声がかかるのかな?」
髙「それは申請して行ってた。コンペみたいなやつかな。あ、作ってるところは写真撮らないでもらって良い?」
濱「いやいやそういう仕事なのよ、これ」
髙「俺思ったんだけどさ、この野菜の生産者の人のこれあるじゃん。これ濱田くん撮ったらめっちゃ良いと思ったんだよね。俺この写真で選んだりするもん。おもろそうだなこの人、とか」
濱「依頼があればなんでも撮ります。今まで料理系撮られたことある?」
髙「ないない。でもこの素麺、葛西でも出そうかなと思って。」
濱「なんで今回素麺なの?」
髙「海外行ってたらやっぱ味の濃いものばっかだったし、殆どイモしか食べてなかったから、薄味のさっぱりしたやつ食べたくなって。で、帰ってきてから今日までずっと素麺ばっか食べてる」
濱「レシピは?」
髙「決まったのは無い。その日の気分で。今日はちょっとレモン汁入れてみようかな。濱田スペシャル」
濱「夏っぽいすね〜」
髙「魚食べれる?」
濱「食べれるよ。それ何?」
髙「メヒカリ。めっちゃ美味いよ。叔父さんがいつもくれるんだよね。漁師とかじゃなくて大工やってんだけど」
濱「へぇー関西にもあるんかな。あとで調べてみよ」
髙「つゆの中に素麺入れるよ」
濱「はいお願いします。あ、もう一回ちょっとこうしてもらえます?」
髙「はいヤラセはいりました〜」
Cooking by Yoshiaki Takahashi
Photo, Interview & Text by Shin Hamada
Edit by Yoshiki Tatezaki
- Photographer
濱田 晋 / Shin Hamada
1987年 兵庫県出身
主にポートレイト、ドキュメンタリー、取材の分野で撮影を行う。2022年より思考実践『HAMADA ARCHITECTS™️』を始動。
shinhamada.com
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