日常が交錯し、クリエイティブが生まれる
職・住・遊が融合した複合施設[CABO]が代々木上原にオープン
小さな区画にハイセンスな個人経営店が並び、人々の居住地域でもある代々木上原。暮らすこと、働くこと、遊ぶことが程よいバランスで実現されているエリアでは、ゆるい繋がりを感じられるローカリティが形成されている。
そんな町で職・住・遊の融合をコンセプトに誕生したのは、クリエイティブチーム301がブランディングとコミュニティ形成を担う小規模商業施設[CABO uehara]。一般開放される1階には飲食店や本屋、2〜5階にはオフィスやレジデンス利用が可能な空間を有するスモールコンプレックスだ。
施設全体のハブ的役割を果たすのは、2019年から上質なコーヒーやカクテルを代々木上原で提供してきた[No.]。301が手掛ける同店は元々[CABO]の正面にあたる建物の3階に構えていたが、今回満を辞して完全移転、リニューアルオープンした。「生活空間」としてのCafe&Barと「仕事空間」としてのデザインオフィスを兼用し、ブックストアも併設する空間はあらゆるシーンに溶け込んでくれる。
施設の敷地内通路の突き当たりには、レストラン&ワインバー[Ukiyo]が出店。日本のレストランシーンに新たなスタイルを提案し話題となった目黒の人気レストラン[kabi]と兜町の姉妹店[caveman]から独立するチームによる新星だ。
そして、この2店の内装設計は目黒[kabi]や幡ヶ谷[flow]などカルチャーシーンを牽引する数々の人気店の設計を手掛け、かつ代々木上原に事務所を構えるMILESTONEが担っている。同事務所の設計店を2箇所持っている施設としても稀有な存在だ。
まさに精鋭のチーム構成で6月26日(月)から順次営業をスタートしている[CABO]。2階より上のオフィス/レジデンススペースは、主にデザイン会社などクリエイティブ領域で活躍する人々で9割以上の入居が決まっており、注目度の高さが伺える。
作りたいのはパブリックな生活空間
「今回の移転の決め手は”場所”です」
そう語るのは、クリエイティブチーム301の代表であり、[No.]オーナーの大谷省悟さん。
「今まで構えていたビルの3階から通りに面した場所に移ることで、お客さんや飲食店との繋がりだけではなく、町そのものとの関係値を築くことを考えました」
建 築 ・ イ ン テ リ ア ・ プ ロ ダ ク ト を 手 が け る ⻑ 田 篤さん が内装を設計。カウンターの両側はスタンディング席になっており、奥にはブックコーナーも
「新しい試みとして本屋の併設に踏み切ったのも、これを意図しているんです。飲食店には、お金を払わないと入れない。でも本屋は、買わなくても気軽に入れるんですよ。その自由さがあることで、誰かの生活習慣に入り込んだり、来てくれる人の多様性を生むこともできる。都市空間の中にもう少しパブリックな場所があってもいいんじゃないかなって」
「他にも[No.]としてやりたかったことを詰めこみました。例えば、立ち上げの際に視察に行ったロンドンのBARからインスピレーションを得て、丸テーブルのスタイルを採用したり。スタンディングや外席も作ったので、利用スタイルの自由度はかなり高くなりましたね」
-モーニング- 三軒茶屋のクロワッサン専門店[plat]のクロワッサンとシナモンロール、[Raw Sugar Roast]のコーヒー。[Plat]は通常卸しを行なっていないが、大谷さんがクロワッサンに惚れ込み特別に卸してくれているそう
-ランチ- デリプレートの3種は普段使いを前提にメニューが入れ替わる。他にもガパオライスも
-ディナー- 世界で最も飲まれているカクテルであるネグローニは、クラシックタイプと、日本人の味覚に合わせたモダンタイプの2種類がある。注文しやすいようナンバリングされたカクテル「ON NUMBER」は刷新され、新しく「レモンサワー(No.1)」が加わった。他にもツイストカクテル多数
SEASONALで提供されるのはクラフトジン[HOLON]。現在は 夏にぴったりの涼やかな香りが心地よい〈梅紫蘇〉が味わえる
パルミジャーノ、オリーブオイル、ブラックペッパーでシンプルに仕上げたヒレカツサンド。マッシュルームとチーズはカクテルとの相性も良く、ワンハンドで食べられるようにカットされている
〆のラーメンは、近くに深夜まで空いているラーメン屋がないという声に応えて生まれた。鶏、豚、煮干でとった出汁にスパイスや紹興酒を加えた醤油ベースのスープ。オリーブオイルや自家製フライドオニオンをあしらい乾麺風の麺を用いることで、ひねりの効いた味わいに
「レジデンスやオフィス入居者にとっては、ここはラウンジみたいな場所でもあるので、メニューも彼らの生活を引き受けられる形にアップデートしています。
ランチのデリを入れ替えたり、飲んだ後の締めにラーメンを食べたり。モーニングタイム、カフェタイム、バータイム、それぞれが1日のシーンにフィットするよう構成しているので、毎日でも来られる気楽さで利用していただければ。外でぐるっと囲んでお茶をしたりしている光景は、この場所が生活の一部となってくれている気がして嬉しいですね」
No. 営 業 時 間 9 : 0 0 – 2 4 : 00(中間クローズ 17:00~18:00) Instagram @no.tokyo
※火、水はディナータイム営業なし
背筋を伸ばすレストラン体験
カナダ、オーストラリア、日本、イギリスを渡りインスピレーションを得た食材、スパイスを用いた炭火料理。約10品のコースで提供される
「目指したのは、“レストランらしいレストラン”です」
そう語るのは、[Ukiyo]オーナーソムリエ・竹内直人さん。
「僕が以前いた[Kabi]は、若者の作り手/食べ手が質がいい料理をカジュアルに楽しむという価値観を東京のフードシーンに持ち込んだという点でセンセーショナルだった。でも、昔自分自身が感じていたレストランの楽しさってそれだけではない気もしていて」
コースがメインだが、21:00以降 のBar Time には、ナチュラルワインと遊び心のあるアラカルト料理も提供される
「今回試みたのは[Kabi]的カウンターカルチャーに対するカウンターですね。空間に足を踏み入れた瞬間、厚みのあるカーペットに足を取られたり、親がワインを傾けて話す姿を見ることは、子供ながらにワクワクするシーンでした」
「代官山の[マダム・トキ]や西麻布の[レフェルヴェソンス]など、いわゆる名店が自分のルーツとしてあることもあり、クラフト感をできるだけ抑え、少し背筋が伸びる特別感のある異空間を構想しました。
設計上、陽光が入ってこないため暗さを逆手にとって洞窟のような空間に仕上げています」
「日本ではあまり使わないスパイスをふんだんに使った炭火焼きを、ナチュラルからクラシックまで様々なワインと共にお楽しみください」
Ukiyo 営 業 時 間 19:00~ (BAR Time 21:00~) ukiyo_tky
定休日 火曜@
他にも、初の実店舗を構える日本初のトルティーヤ専門店[Tortilla Club TORTILLERIA]も6月25日(日)にグランドオープン。同日に開催された施設のオープニングイベントでは、「イベント仕様特別タコス + ケサディーヤのセット」が好評を博した。
Tortilla Club TORTILLERIA
営業時間 11:00~19:00
定休日 火曜
Instagram @new_classic_tortilla_club
各々が思い思いのスタイルで、自分の日常を過ごす[CABO]。
早くも活気に溢れ、まちの風景として馴染んでいるその場所は、これから代々木上原の地にどんな風を吹かせてくれるのだろう。新たなカルチャーの拠点に、今後も目が離せない。
CABO uehara
住所東 京 都 渋 谷 区 上 原 一 丁 目 3 2 番 3 号 営業時間 各店舗の営業時間に準ずる
HP https://cabo-uehara.jp
Instagram @cabo_uehara
Text by Rin Inoue
Edit by Yoshiki Tatezaki
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