今冬開業[ホテル虎ノ門ヒルズ]にミシュランスターシェフのアジア初上陸店

[Le Pristine Tokyo]セルジオ・ハーマン氏がそのコンセプトと料理を披露


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 12, 2023

2014年5月竣工の「虎ノ門ヒルズ 森タワー」を起点とした虎ノ門エリアの再開発は、今秋開業予定の「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」で一つの節目を迎える。

これまでに、「森タワー」の他、虎ノ門横丁(バー[memento mori]や[虎ノ門蒸留所]といったRiCEでも馴染みのある飲食店が軒を連ねる)が入る「ビジネスタワー」(2020年1月竣工)、「レジデンシャルタワー」(2022年1月竣工)の3棟のビルが開業している。
またビルの新築だけにとどまらず、東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」(2020年6月に開業)や、2022年に全線開通を迎えた環状2号線という交通網の整備も実現され、国家戦略として掲げられる「国際ビジネス拠点」としての虎ノ門エリアがいよいよ完成する形だ。

「ステーションタワー」内には、ハイアットが手掛ける[ホテル虎ノ門ヒルズ]が今冬開業予定。そして、ホテル内にはヨーロッパで長年ミシュランの星に輝くオランダ人シェフ、セルジオ・ハーマン氏監修のレストラン&カフェバー[Le Pristine Tokyo(ル・プリスティン東京)]がオープンする。

今回、オープンの発表会のためにハーマン氏が来日。レストランのコンセプトをプレゼンテーションするとともに試食会を開いた。

セルジオ・ハーマン(Sergio Herman)氏は、1970年、オランダ南西部のゼーラント州の生まれ。10代の頃、家族で経営していたレストラン[アウトスラウス(Oud Sluis)]でシェフとしてのキャリアをスタートさせ、1990年に同店を引き継ぐまで父親とともに厨房に立った。

その後、2005年にはミシュラン3つ星を獲得、The World’s 50 Best Restaurantsで8年に渡りランクインし、オランダ地方都市のレストランをワールドクラスへとのし上げた。2013年に[アウトスラウス]をクローズした後は、セルジオ・ハーマン・グループとしてオランダやベルギーにて複数のレストラン・カフェバーを経営している。

2020年にベルギーのアントワープにオープンした[Le Pristine]は、ハーマン氏が掲げる5つの柱–––食、ファッション、デザイン、アート、音楽–––をイノベティブレストランに反映させている。気軽にウォークインできるカクテルバーに、アラカルトのレストランというカジュアルさを持ちながらも、ハーマン氏の故郷・ゼーラント州(zeelandはオランダ語で“海の国”という意味)の海の幸をモダンに仕上げる品々は彩り豊かで美しく、ミシュラン1つ星という評価も受けている。

アントワープに構える[Le Pristine]のインテリアデザインは国際的評価の高いデンマークのデザイナーユニット「Space Copenhagen(スペース・コペンハーゲン)」が手掛けたが、[Le Pristine Tokyo]でも同じくSpace Copenhagenがインテリアを担当する。写真右は[Le Pristine]のメニューから、パッパルデッレ(幅広のパスタ)にゼーラント産のムール貝、ンドゥイヤ(香辛料入りサラミ)、ライムを添えた一品
(写真はブランド提供)

虎ノ門ヒルズという”街”に開かれたホテル、そこにアジア初上陸のスターシェフがレストランをオープン、と聞けばそのスケールの大きさが際立つ印象だが、ハイアットのアンドレアス・スタルダー氏(アジアパシフィック地域 料飲オペレーション兼プロジェクト開発担当上級副社長)は、ハーマン氏によるレストランオープンは「単なるスペースのアウトソースではなく、相互の信頼とリスペクトによって成り立つコラボレーション」であると語り、ホテルに欠かせない重要要素である“食”においてハーマン氏の世界観が表現されることに期待を寄せた。

この日初めて見たハーマン氏はとてもクールなシェフ、あるいはアーティストという印象だった。長身にがっちりした体格、黒Tシャツに白いエプロン姿、左腕にはやや和テイストなタトゥーがのぞき、シューズは履き慣らされたニューバランス。[アウトスラウス]時代には3つ星レストランとして初めてデニム生地のファッションを取り入れ話題になったというが、そうした氏のセンスは、ラグジュアリーだけにとどまらない新しい感覚の街にはよく似合いそうだ。

ベルギーのコラージュアーティスト、サミー・サラビンク(Sammy Slabbinck)氏のアートワークが裏面にデザインされたフード・ドリンクメニュー。「アート」を柱の一つと掲げるハーマン氏らしさが垣間見えた

[Le Prestine Tokyo]では、ゼーラント地方と日本の旬の食材を厳選し融合させたコンテンポラリーなヨーロッパ料理を提供することになるという。ゼーラント地方の食材として代表的なものがウナギ、オイスター、ムール貝というが、日本沿岸で獲られるそれらとは形も味も違いがあるとのこと。そうした産地による違いや、日本特有の食材をアレンジした使い方など、セルジオ・ハーマン流の味のプレゼンテーションは面白いものになりそうだ。

試食会では、ワンバイトサイズの料理5品、加えてノン・アルコールのカクテル3種が、目の前でハーマン氏が調理する形で提供された。

「鹿児島産シマエビ アボカド スイカ キャビア」
味付けは天然岩塩のフルール・ド・セルとオリーブオイル。サワークリーム、白だしをソースにして、ハーブ、マリーゴールドの花弁、海苔パウダーをトッピング。

「ピッツェッタ 本マグロ ストラチャテッラチーズ すだち オランダ産トマス醤油 わさび」
ピザ生地にストラチャテッラチーズ、パルメザンチーズ、柚子胡椒、オリーブオイルをのせてオーブンへ。本マグロとオランダで造られる「トマス醤油」、わさび、ズッキーニ、すだち、バジル、刻み海苔をトッピング。マグロ、わさび、海苔という日本人には馴染みある組み合わせにヨーロッパのツイストが利いている。

「ほうれん草のラビオリ グリーンアスパラガス エノキ茸 ウニ オランダ産ウナギの燻製 バーベナ」
ほうれん草のラビオリに、オランダ産のウナギの燻製、ウニのほか彩りのよい野菜が添えられた。食感と味わいの幅が楽しい一皿。

「オランダ産ムール貝 ンドゥイヤ トマトビネグレット バジル」
小ぶりで身がやわらかいムール貝を白ワイン、バターなどで調理。さっぱりさせるトマトビネグレット、レモン、バジルなどの上にさらにパルメザンチーズをおろす。ムール貝の旨みとコクのあるスープ、トマトのさっぱり感のバランスがよい。

「ライスシュー イカ ロブスター サフラン 松茸 柚子 グレモラータ」
サフランで調理したお米にイカ、ロブスター、ガーリック、松茸など風味と食感が豊かな一皿。

「ボタン&トニック(Button & Tonic)」
シトラスとライムゼストを用いたノンアルコールベースには山椒がアクセントとして使われている。トニックとアマルフィのレモン果汁を加え、グリークバジル、オリーブオイル、レモンゼストをトッピング。

「イタリアンサワー(Italian Sour)」
ボタンパシフィックシトラス(ノンアルコールのジン)をベースに、シュガーウォーター、サジーの実のシロップ、酸味を加えるスーパサワー、ソースとバジルをミックス。アフリカンバジルがトッピング。

「ピーチベリーニ(Peach Bellini)」
ピーチピューレにスーパーサワーとバーベナ、タイム、フェンネルフラワーを浸して、エラダーフラワーバブルで割ったノンアルコールカクテル。

テイスティングセッションを終えたハーマン氏が料理人チームとハグを交わし互いを労う姿が印象的だった。東京チームとして走り出すのはあと数ヶ月先だが、ハーマン氏がどのようなレストランを虎ノ門に開くのか、期待が膨らんだ。

Le Pristine Tokyo(ル・プリスティン東京)
長年ミシュランの星に輝くオランダ出身のシェフで起業家のセルジオ・ハーマン氏が展開するレストランブランド「ル・プリスティン」のベルギー・アントワープ本店に続く2号店として、2023年冬、ホテル虎ノ門ヒルズにオープン予定。
WEB lepristinetokyo.com
IG @le_pristine_tokyo
FB Le Pristine Tokyo

Photo by Mana Kimura @kimura_mana_
Text by Yoshiki Tatezaki

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