エディターズノート
「RiCE」第31号「エシカルフード」特集に寄せて
RiCEの第三一号はエシカルフードの特集です。前にもやったじゃないかって? はい、そのとおり。二〇二〇年の春にやった「エシカルフード・カタログ」のアップデート版が今回です。第二弾ともいえますが、一年前にやった「たまにはヴィーガン」を数えると第三弾かもしれません。昨年の夏には同タイトルのイベントまでやりました。何度やってもいい、いややるべきというのが本音です。「23-24」とつけたのはもちろん来年にかけての年号を表していますが、その辺の曖昧さおよびわれわれにとってのタイムリミットを掛けているつもりです。
そう、結構もうやばいのでは? そんなふうに感じているのは自分だけじゃないはず。だって、昨夏のとんでもない酷暑、国内はもちろん世界中で頻発する異常気象。地球温暖化や環境破壊の危機が叫ばれて久しいですが、その進行は緩む気配がありません。誰だって明るい未来を期待したいけど、出来ない相談だって科学的に証明されているんですから。
若い世代ほど危機意識が強く、リテラシーも高いと言われているのは、それだけ切実さを感じつつ、まだ先の長い人生に少しでも明るさを見出したいからでしょう。だけど、どこから手をつけたらいいかわからない。そう感じてモヤモヤしている方はどうやら多いようです。
その一つの答えは食だと思います。なぜなら、今日から始められるから。誰にとっても必要かつ毎日続けられるから。全ての個人にとっての持続可能な選択肢、それが食なのです。
だって、われわれは食べないと生きたていけない。誰もが毎日何を食べようか考えますし、判断します。毎食が選択であって、そのせっかくの機会を無駄にせず、自ら主体的に選び取ればいい。自分が美味しいと感じるもの、健康に寄与すると感じるもの、さらにもう一つ、環境に優しいと思うもの。この三つが揃わないと、自分にとってサステナブルじゃないし、エシカルとは言えないでしょう。
その三つの要素がバランス良くきれいな三角形を描く食べ物を、われわれはエシカルフードと呼びます。心と身体と環境がお互い密接に繋がりあっていることは誰だって直感的にわかるでしょう。自分にとっての「美味しい」を、そこに再設定できたら、いろんなことが変わるはずだと思うのです。
この特集エシカルフード・カタログでは、そんな三位一体そろったとびきり美味しいものをできるだけ紹介しています。日本全国はもちろん、オーストラリアはメルボルンにまで足を運び、エシカルフードの何たるかを探ってきました。
もちろん国が違えば考え方も違います。ただ同じ地球に住まう者としての立場は同じであり危機意識も共有しているはずです。日本と違って多文化的で、歴史が浅い分しがらみも少なく、新しいアイデアにオープンで、最短距離で最適解を見つけるフットワークが感じられ、正直羨ましかった。だけど改めて、自分は日本が好きなんだとも強く思いました。ここで生きていきたいと。君たちはどう生きるか。その答えはきっと、私たちがどう食べるか、にかかっています。
Illustration by Masakatsu Shimoda
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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