[ダンデライオン・チョコレート]コラボレーション記念座談会

COEDO x ダンデライオン x haccobaが語る、酒・ビール・チョコレートの新たな地平


RiCE.pressRiCE.press  / Oct 23, 2023

川越発のクラフトビール[COEDO]と福島を拠点とするクラフトサケ[haccoba]の面々が、東京・蔵前にある Bean to Bar チョコレート専門店[ダンデライオン・チョコレート]を訪れた。

というのも先頃、[ダンデライオン・チョコレート]とコラボレーションして、カカオをテーマにしたクラフトビールとクラフトサケがリリースされたのだった。

甘くて苦くてコクが深いといったいわゆるチョコレートの固定観念を鮮やかに覆してくれるようなアプローチで構築されたフレーバーに加えて、環境面にも配慮された開発背景まで、今回の商品開発に携わったキーパーソン4名が座談会で語り合った内容を公開する

(右から)[haccoba]代表 佐藤太亮さん/[ダンデライオン・チョコレート]Business Development 物江徹さん/[COEDO]シニアエンジニア 塩野智隆さん、醸造担当 尾崎真さん

(右)「MELTING POD」(COEDO×ダンデライオン・チョコレート)/(左)「カカオの夏休み」と(手前)「酒粕ガトーショコラ」(haccoba×ダンデライオン・チョコレート)

佐藤太亮さん(haccoba) 実は、[ダンデライオン・チョコレート]さんとのコラボは3回目なんです。1回目と2回目は“チョコレート感”を出す作り方をしていました。今回の「カカオの夏休み」は、“夏に飲みたくなるカカオのお酒”をテーマに、カカオハスク(カカオ豆の皮)を使って作りました。カカオハスク自体はコクのあるナッティなニュアンスなのですが、そこに山椒レモネードを加えることで、爽やかでキレのある感じにしています。常温に近づくにつれて出てくるカカオ感も楽しんでいただけたらと思います。

物江徹さん(ダンデライオン・チョコレート) 「酒粕ガトーショコラ」には[haccoba]さんの廃棄食材である酒粕を使っています。これは定番にして、ずっと出していくつもりです。

佐藤 これ、美味しいですよね! おすすめの食べ方は、ガトーショコラを少し温めるんです。酒粕とレーズンの旨味や甘さが際立ちます。

カカオのフルーティーな一面を表現

「カカオの夏休み」
カカオハスクに山椒レモネード粕を掛け合わせることでカカオのフルーティーな表情を引き出した

物江 「カカオの夏休み」と「酒粕ガトーショコラ」、どちらも粕を上手に使ってますよね。「MELTING POD」についても伺いましょう。

尾崎真さん(COEDO) 実はこれ、去年は別の味わいのビールとしてリリースしているんです。その時には、濃色の、木樽で熟成させたヨーロッパビールのようなものだったのですが、今回はカカオパルプ(カカオの白い果肉部分)を使い、その味わいをビールで表現することを目指しました。カカオをチョコにする時、真ん中のナッツを発酵させてパルプの香りを移すことで、フルーティにしているんです。

物江 これまでのコラボはバレンタイン時期だったのでチョコレートビールとしては王道の提案をしてもらってきたのですが、今回はバレンタイン時期ではなかったからこそ、変わったことができました。おふたりは、カカオを扱う上でどんなことに苦労しましたか?

尾崎 香りですね。果実としての本来のカカオのフルーティーなニュアンスを伝えるために、今回はレモングラスっぽい香りを感じるカカオをご紹介いただきました。それをどう使うかはかなり悩んで、コーヒーを淹れるように抽出してみたり、水出しをしてみたり……いろいろ試しましたね。結果、濁っているわりにドライで酸味がある味わいに仕上がったので、白ワインのような感覚で前菜と合わせてという楽しみ方もしていただけるのではと思います。

「MELTING POD」
甘酸っぱくフルーティーなカカオパルプと、レモングラスの香りのインド産カカオニブを合わせた口当たり柔らかなフルーツサワーエール

佐藤 確かに、自分たちもチョコレート感と爽やかさのバランス感は悩みました。最初は、どぶろくというお米を濾さずドロドロな状態の日本酒にすることでチョコレートを飲んでいる感じを表現しようと考えてたんですけど、実験段階でそこにカカオハスクを入れてみても全然思うようにならなかった。でもそれを絞ったら、めちゃくちゃチョコレート感が出たんです。

物江 カカオの苦味とホップの苦味の相性はどうでしょうか?

尾崎 ホップだけで苦味をつけるというよりは他のものも利用していくことの面白さは感じています。僕のイメージだと、カカオの苦みって茶色や黒っぽいコクのある苦味。一方ホップは見たまんまの青っぽい苦味です。ぶつけると黒いほうが勝つ。だから、どちらかを控えめにしてもう一方を支えることで、構造的な上下関係を考えるとうまくできるんじゃないでしょうか。

“ここにしかない”自由な酒を、これからも

物江 コラボレーション商品をつくるときに大事にしていることは何ですか?

塩野智隆さん(COEDO) 我々のビール全体にいえることですが、エンドユーザーの方にいかに楽しんでもらうか、ということを重視しています。「どんな味がするんだろう?」と、想像できないようなもの、他では味わえないえないものをつくるにはどうすればいいかを考えています。

尾崎 僕の場合は、どうしてその商品をつくるのか、どうしてこの原材料を扱うのかに対してストーリーを持つことです。日本酒もそうだと思うのですが、仕込んで終わりではなく、発酵させ、熟成させ、やっと瓶や樽の形になってお客様に届きますよね。つくっている過程でもその思いを忘れずにビールと向き合うことが大事だと思っています。

佐藤 一番は「かつて日本の家庭であたりまえに造られていたどぶろくというお酒の文化を取り戻したい」ということ。今は家でお酒を造ることが禁じられていますが、酒文化の未来を考えた時にそれは変わっていくべきなんじゃないかなと思っています。自分自身が一番酒造りを楽しんでいる酒蔵であることで、自由な酒造りの楽しさを共有していくことが大事だと思います。

塩野 今回[haccoba]さんに提案していただいて麹を使ってみたのですが、その使い方を吸収できたことはすごくよかったです。いろんな知識を培ったり、逆にそれを組み合わせたりできるのがコラボの良さかなと。また次回にも繋がる良いお酒ができたと思います。

物江 めちゃくちゃ楽しみですよね! またコラボしましょうね。



各ブランド公式ウェブサイトとインスタグラムは以下の通りです。

ダンデライオン・チョコレート
dandelionchocolate.jp@dandelion_chocolate_japan

COEDO
coedobrewery.com@coedobrewery

haccoba -Craft Sake Brewery-
haccoba.com
@haccoba


Text by Rin Inoue
Edit by Yoshiki Tatezaki
Photo by Tameki Oshiro

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