最新グルメからローカル屋台まで。タイ探訪 -1-
タイの週末はマーケットへ! チャドゥチャックを闊歩する
ストリートフードと聞いて、ワクワクする高揚感はどこからやってくるのだろう。
タイにはおいしいものが道に溢れている。思えば屋台の原体験は、スーパーの入り口前に構える焼き鳥のキッチンカーだった。今は死語のようになってしまっただろうか。内側がツルツルテカテカの茶袋で頬張る鶏皮のタレ。香ばしいタレに肉の脂が溶け合った甘みの極み……。当時小学生の少女にはバービー人形以来の衝撃であり、これは人間界のチャオチュール。今でも焼き鳥屋では必ず皮をオーダーしてしまうし、タレ派を継続。原体験とはそういうものだ。
10年ほど前の学生時代。バンコクへ留学し、タイのおいしいものに出会った。今回はコロナ以降のアップデートも含め、タイに1ヶ月半ほど滞在中。そんな中で出会ったフードを紹介する。
この日ははじめての週末。バンコクの土日といえばウィーケンドマーケットで知られる「チャドゥチャック」は逃せまい。とても大きい市場なので、半日はあっという間。観光客はもちろん、タイ人も一堂に集まる。
みちみちに小さなお店が隣り合わせに並び、タイパンツやお香など定番の土産から生地薄めの服屋かと思えば、突如コーヒー屋や屋台が現れ、またその隣に陶器、ビンテージ家具などび店がひしめくアジア的な景色は、カオスとも呼べる。奥に進めば犬、猫、鳥など動物が売られる店も並ぶ巨大マーケットに僅かな恐怖を感じつつも、私の目当てはヴィンテージセクションだ。
古着を見て周る途中、通りがかった屋台「チャットチャーン(จัดจ้าน)」は、昼のピークを過ぎた15時にもかかわらず華やかな賑わいをみせていた。しかもその多くがタイ人。おいしい屋台はわかりやすく混んでいることが多いタイでは、試す以外に選択はない。ということで、16:30ごろにお腹が減り訪問。このときすでに数人並んでいた。
待つ間に「串カツ田中」のような記入タイプの注文表が渡される。(タイ語がわからなくても、写真付きの別メニューがもらえるらしい)
私はオーソドックスなソムタムタイ(青パパイヤサラダ)とカオニャオ(もち米)のコンビネーションをオーダー。これで85バーツ(350円)。良心的な値段☺️
店内ではお母さんがマイクで元気に指示。「テーブル18片付けて〜」「カオニャオ3つ追加〜」「6番お会計〜」などお父ちゃんたちを動かす。ちゃきちゃきお母さんがいる店は信頼できる。
そんな様子を眺めていると、10分ほどでソムタムが運ばれてきた。マナオ(タイのライム)の汁がたっぷり入った酸際立つソムタム。真夏の陽射しを浴びた柑橘の爽やかな汁にカオニャオを一口つまんで浸して食べるのが現地流。ピーナッツがごろごろと転がり、太めに削がれたシャキシャキの青パパイヤは食べ応え十分ですぐにお腹いっぱいになった。
味のバランスがいいかと言えば酸味が少し強すぎる気もしたが、ここは大人数でシェアして食べる場所だ。いろんなメニューを頼んで、あちこちの味を楽しむのだろう。
井之頭五郎のような孤独のグルメは店内に不在で、家族や友人と楽しむ姿が目立った。タイ料理はいつだってエネルギーをくれる。一軒目はまずこんなところから。
- editor / writer
野﨑 櫻子 / Sakurako Nozaki
1991年生まれ。マガジンハウス「&Premium」編集部を経て、制作会社でウェブメディア、企業SNSのコンテンツ制作、ディレクションを行う。2023年9月に独立後、学生時代に習得したタイ語を武器にバンコクへ赴き、最新グルメからローカル屋台まで幅広く練り歩く。日本では良き酒と肴を求めて夜な夜な酒場へと集う日々。IG @rako_noz