エディターズノート
「RiCE」第32号「ジャパンスピリッツ」特集に寄せて
RiCEの第32号はジャパンスピリッツの特集です。スピリッツとはつまり蒸留酒。日本のお酒である焼酎はもちろん、ジン、ラム、ウイスキーなどのことです。一年前にやった「日本の自由なサケ」という特集で日本酒、焼酎、クラフトサケを含めて(いずれも麹を使って醸しているという)一つの括りにしたのを引き継ぎつつ、また新しいカテゴリーの提案になります。
日本の蒸留酒という括りで焼酎やジン、ラム、ウイスキーなどをまとめて紹介する特集はこれまでどこもやってこなかったと思いますが、実はこれらクラフトスピリッツは、近年お互いにクロスオーバーしあいながら実にアツい盛り上がりを見せているのです。
なんていきなり言ったところでハイコンテキスト過ぎる気もするので、あえて基本のキから入りますね。お酒には大きく大別すると二種類あって、醸造酒と蒸留酒に分かれます。前者の代表格にワイン、ビール、そして日本酒があります。後者の代表格にウイスキー、ジン、ラム、そして焼酎があります。
醸造酒の場合は原料となるブドウ、麦、米などを発酵させてお酒にしたもので、基本的にはそのまま(冷やしたり温めたりもしますが)飲みます。対して蒸留酒の場合は、醸造されたお酒をさらに蒸留して造ります。熱で気化させたものをまた冷やすことでより純度の高いアルコールと香り(=スピリッツ)を抽出するのです。当然アルコールが高くなりますので、ストレートの他、水や炭酸で割ったりカクテルにしたりして飲むのに適しています。
非常にざっくりとですが、この醸造酒と蒸留酒の違いからシーンの違いも見えてこないでしょうか? つまり醸造酒はわりと食事に合わせやすくレストランなどと親和性が高い。蒸留酒はお酒だけを楽しむバーなどと相性が良い。
ただこうした区分けに対して、どうもしっくりこない存在があります。他でもないわれらが焼酎です。だって和食や居酒屋に焼酎は欠かせませんよね? ロック、水割り、お湯割り、ソーダ割り、サワーなど何で割ってもいいし、いずれも食中酒として最高です。さらに言えば、ハイボールやジンソーダなど、食事のシーンにおけるスピリッツの進出は数年前より明らかにキャズムを超えて、どんどん勢いを増しています。
糖質・プリン体がほとんどない(焼酎はゼロ)蒸留酒の方がよりヘルシーという意識の浸透もその一助となっているかと思いますが、いずれにしろ、シーンも飲み方も自由な日本のスピリッツが今面白い。一方で世界的な日本のウイスキーブームがあり、また他方でクラフトジンの世界的なムーブメントが日本に波及してきています。焼酎や泡盛の蔵元がジンやウイスキーを造り出して高い評価を得ているのも大きい。
そう、今回の特集で飲み手のプロの方々が太鼓判を押しているように、日本のクラフト蒸留酒は近年クオリティーを爆上げしながら、より自由に有機的な広がりを見せています。食事とのペアリングを楽しみながら、焼酎、ジン、ウイスキー、ラムなどを自由に行き来できるお店も増えました。さて、ぐっと冷え込む季節になってきましたね。今こそアツい日本のスピリッツで乾杯しましょう!
Illustration by Masakatsu Shimoda
RiCE No.32「特集 ジャパンスピリッツ新時代」についてはこちらから
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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