辛いスパイス地獄の救世主は紫玉葱だった
異聞インド旅 hunter & producer 中村麻矢 -1-
インドで食事していると、よく出会ったのが紫玉葱。生のまま輪切りで添えてあったり、生地に練り込まれて焼かれたりして、カレーやドーサやアチャールなど、とにかくいろんな料理に紫玉葱が使われていた。
日本でみる玉葱よりもひと回りほど小さいサイズで、市場でも紫色の玉ねぎが山のように積まれている場面をあちこちでよく見かけた。
日本で食べる玉葱は、しっかり火が通ってないとツンとしたネギ臭さが残っていたりして、どちらかというと苦手だ。
でも、インドで出会うこの小ぶりな紫玉葱はどの店で食べても美味しかった。生でもツンとする嫌な感じがない。シャキッとした食感とほどよい甘さ。スパイスの刺激が強いインド料理に紫玉ねぎが加わることでかなりマイルドに感じる。例えるならお腹が痛いときのバファリン。ブラックコーヒーに入れる砂糖。そんな感じで紫玉ねぎが心をホッと穏やかにしてくれた。
ベトナムに行った際に生野菜でお腹を下した経験があり、生野菜=食中毒が怖いと思っていたので、インドで生の玉葱を食べるのはかなり躊躇した。でも、一口食べてしまったらもう紫玉ねぎなしでは料理が完成しないような感覚に陥った。紫玉ねぎがないとしっくりこない。また違う玉葱中毒になってしまった。
日本に帰ってきて、かなり印象的だったインドの紫玉葱について調べてみたが、あまりおいしくないと書いてあるものが多かった。 あんなに抜群においしく感じたのは私だけなのか? 何度思い返してもインドの紫玉葱は美味しかった。
紫玉ねぎは味も色合いもインドの雰囲気によく馴染んでいた。日本で紫玉ねぎを見ても食べても、なんかしっくりこないんだよな。またインドに行ったら、紫玉ねぎが楽しみのひとつになる。
(Edit by Yoshiki Tatezaki)
- hunter & producer
中村 麻矢 / Maya Nakamura
1992年、宮城県生まれ。グルメサイトで5年ほど生産者や地方の取材をメインに行う。独立後、フリーランスとして地方の商品プロダクトやツアーの企画、デザインなど多角的に活動。また、27歳で狩猟免許を取得し現在猟師6年目。北海道十勝を拠点に狩猟・東京を拠点にプロデューサー業を行う。 IG @mayamon78