おいしい裏話
「慣れ」(RiCE No.33に寄せて)
辛さには慣れる、それは知っていた。若い頃近所にタイ人がやっているタイ料理屋さんがあって、全てがすごく辛かったのに、毎日行っていたらだんだん慣れてきた経験があるからだ。
もし旅をして毎日ブータン料理を食べていたら、頼み方や辛さの組み合わせの匙加減もわかってくるのだろうと思う。
唐辛子の種類の違いで、絶妙に味が違う。それは赤と青とかいう問題ではなく、韓国でもたまに感じるけれど、その料理に合わせた唐辛子の組み合わせだけは、私には一生わからないのだろうと思う。
よく海外の方が外国の日本食レストランでとんかつと天ぷらと寿司をいっぺんに食べているのを見て、「そんなこと日本人はしないから」と思うような組み合わせを私たちもしたのではないだろうか、と少し不安だった。
でも、どの国であっても、冷たい前菜→温かい前菜→肉料理(炒め)→肉料理(煮込み)みたいなことは変わらないものなので、多分そんなに間違えていなかったのではないかと思っている。
LASOLA Bhutan Restaurant https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130904/13266128/
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。