エディターズノート
「RiCE」第35号「横浜」特集に寄せて
RiCEの第35号は横浜の特集です。昨年春にやった特集「おいしい東京」に続く場所切りシリーズの第二弾になります。なぜ東京の次に横浜なのか。京都はどうした。名古屋や福岡は? 北海道だって沖縄だってあるじゃないか。おっしゃるとおり。いずれもいつかやりたい特集のリストに載っています。ですが、いろんな理由とご縁を感じて、今回は横浜を選びました。
もちろん地の利はあります。編集部のある東京から通いやすいので、スタッフ一同何度となく足を運んでは横浜を体感しつつリサーチしました。もはや部屋でも借りて住んだほうが早いかというくらい。当然なかには何日か泊まり込みで取材したりなんてこともありました。そしてみんなで感じていることですが、横浜は楽しく、おいしく、まだまだ掘り甲斐があるし、いくら汲めども魅力が尽きない。
横浜といえば一般的には一大観光地であり、みなとみらいに象徴されるキラキラしたイメージ、あるいは横浜デートなんて言葉もあるくらい、おしゃれスポットとしての地位を確立しています。住みたい街ランキングでもナンバーワンを堅持し続けておりモテモテもいいところ。
そうした情報は、検索すれば簡単に手に入りますし、大手メディアにいくらでも溢れています。今回の特集は、そうした横浜のパブリックイメージを上書きするようなお馴染みの情報はほとんど登場しません。
その一方、横浜は開港以来の異国の文化を積極的に採り入れながら定着させてきた歴史があり、日本最大の中華街はもちろんのこと、それ以外にも様々な国のひとたちが定住してコミュニティを作っています。そうした場所には現地の味を再現した店がたくさんあって、ちょっとした旅行気分に浸れます。
もちろん、明治から続くような和食の老舗もたくさんあって、至宝ともいえる料理を出し続けながら、百何十年と続くのれんをいまなお大切に守っています。そしてそのすぐそばには野毛のように安くて旨い店が軒を連ね、何百軒と広がっている。
そう、横浜の魅力はその大きなギャップにあるのかもしれません。横浜在住もしくは通い続ける横浜ラバーな方たちから多大な協力を得ながら今回の特集を作り上げましたが、皆さんこぞって言うのが横浜の多面性と距離の近さでした。めちゃくちゃおいしい店、楽しい場所がたくさんありすぎる。一軒だけで終わるのはもったいないので何軒もハシゴ 。その場で偶然出会ったひとたちとおいしいお店を教え合っては一緒に繰り出したり。そんな特別な時間が日常化している、日本オンリーワンともいえる街が横浜なのです。
横浜でしか見れない光景、体験できない時間がある。普段あまりメディアの表に出
ないアザーサイド・オブ・ヨコハマにようこそ。
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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