シティライツ・レストラン

006 「神が細部に宿った大人のハッピーセット」


Yuya UenumaYuya Uenuma  / Jun 16, 2024

今回の記事では6弾目にしてようやく、京都で一番お世話になっているお店ついて書きたいと思います。

この日は特に何も予定がない土曜日で、こういう日は決まってあのお店に行く。昨晩は華金を十二分に楽しんだので、11時頃に起床。起きて直ぐに1時間ほどランニングに出かけ、もうお昼ごはんに向けた準備が万端すぎて、むしろバナナを一本食べずには出かけられないほどに仕上がっていた。

そんな空腹状態でも1時間以上走ってしまったのは、この日のカラッと晴れた京都らしからぬ気持ちのいい天気のせいで、よく寝た体が光合成を喜んでいたように足取りが軽かった。

シャワーを浴び着替えると、時刻はもう13時をゆうに超えていた。こんな晴れた日には一年中冷麺(京都では冷やし中華を冷麺と呼ぶ)を提供している[中華サカイ]がふと頭をよぎったが、この時の僕は到底[中華サカイ]の順番待ちに耐えられる状態にない。その数秒後に、あのお店の「ハッピーセット」が思い浮かんだ。この時の僕にとってのベストアンサーを見つけ嬉しくなり、直ぐに自転車を漕ぎだした。

自転車に乗ること約15分、[TAREL]に着いた。そう、京都で僕が一番お世話になっているお店というのは[TAREL]なのだ。お店に入るや否や、「昨日何時に解散したっけ?」と店主のもっさん。実は昨日は夜遅くまで閉店後の[TAREL]で飲み会が開催されており、ここには約12時間ぶりに帰ってきた。二人で昨日の振り返りを始めながら席に座ると、自転車を15分漕ぎ少し汗をかいていた僕の右手はキンキンに冷えたハートランドの瓶ビールを握っていた。これを反射行動と呼ぶのだろうか。[TAREL]のビールはビール専用のセラーで保管されており、極限状態まで冷やされているのだ。偏った個人的な感想だが、京都でビールを飲むなら[TAREL]の瓶ビールか、[赤垣屋]の生ビールだと思っている。

瓶ビールはセルフで取るスタイル。お店に着いた途端、ビールに手が伸びてしまう。

お腹を空かせた僕は取り急ぎビールを流し込み、耐え凌ぐ。それと「イングリッシュマフィンサンド」をオーダー。もっさんは店内でサワードウを焼いており、ここのサワードウが大好きで、一昔前まではいつも「豚のリエットとパン」を頼んでいた。しかし、突如メニューインしたイングリッシュマフィンサンドの虜になってしまい、最近はもっぱらイングリッシュマフィンサンドを頼んでいる。

 

写真用にイングリッシュマフィンサンドの包み紙を外しているだけで、毎度食べやすいように包み紙に覆われて到着します。

イングリッシュマフィンサンドが到着した頃には、既に二本目のハートランドにたどり着いていた。僕はあまりハンバーガーチェーン店には行かず、これこそが僕の中での「ハッピーセット」なのだ。焼きたての目玉焼きとチーズがハムと一緒に挟まれ、少量のケチャップがかけられた非常にシンプルな構成なのだが、シンプルで美味しいという事が身近な存在でもある「ハッピーセット」と呼びたくなる所以なのだろう。シンプルさの中でセンスを織り交ぜ表現されたこのメニューは、まさにもっさんがミニマムでシンプルな建築の中で表現している[TAREL]らしさに通じていると感じた。そして[TEREL]の「ハッピーセット」についてくるおまけ(むしろ目当て)は、おもちゃではなくもっさんとの会話なのかもしれない。

もっさんから誕生日プレゼントでもらった[TAREL]オリジナルビールの空き缶はトイレに飾っています。
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