あの人が作る、記憶に残るあの料理。

親や友人、身近な人々の料理にお金を払ったりすることはないけれど、
お店では食べられない味と空気が確かにそこにある。

人とレシピ、そしてその背景を僕の目線で記録することにした。

（取材・写真・文＝濱田晋）

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行さんのたろめん風ちゃんぽん

暑い。立ち止まる35度の梅ヶ丘。すると、遠くから微かに聞こえた気がした。自然と私は歩き出していた…

濱　何観てんすかこれ。

行　『祭りばやしが聞こえる』。

濱　ドキュメンタリーですか？

行　そう。テキ屋の人たちの。雰囲気出しといた。

濱　いいすね。今日ちゃんぽんですよね？

行　あのね、俺決めたんだ。たろ麺風ちゃんぽんにしようと思う。

濱　何すかそれ初めて聞く。

行　親父の実家が佐賀県大町にあるんだけど、大町は炭鉱の町で。爺ちゃん炭鉱夫だったんだけど、自分も昔叔父に「たろ麺食い行こう」って連れてってもらってたのよ。タンクトップの爺さんが店主で、テーブルも油ギトギト系の。

濱　最高ぽい。じゃあRKB観ながらやっちゃいましょう！ でも行さんは長崎ですよね？

行　両親が佐賀から長崎移ったからね。で、パン屋だから。

濱　え！ そうなんですか。なんて名前ですか？

行　曾祖父さんの代からフランチャイズのパン屋。フランソア。

濱　聞いたことない。

行　九州だけだもん。

濱　家めっちゃ綺麗ですね。

行　そう、実は綺麗好き。縦に積んじゃうんだよね、床にあんま置きたくなくて。地べた好きなんだけどね。

濱　え、それ何やってます？

行　研いでるの。昔一年だけやった飲食のバイトで教えてもらった。

濱　どこですか？

行　ユーロの下いまロフト9になってるでしょ？ あそこの前の前の前のカフェ時代に。

濱　へー初めて知った。今日のレシピとかどうしたんですか？

行　調べたけど自分が昔食べた感じのとちょっと違って。まぁシャンタン入れとけば大丈夫だから。

濱　期待してます。最近は何か面白いことありました？

行　23年ぶりにあった友達から頼まれて小学生に40分くらい、授業？した。
課外活動みたいな感じで映画作るらしくて。4年生26人くらいだったんだけどみんなめちゃピュアなのよ。で、手紙ももらって。

濱　めちゃ良いじゃないですか！ なかなか出来ない体験ですよね。完成いつなんですかね？ 楽しみですね。てか言ってるうちに良い匂い。

行　はいお待ち！

濱　あざます！ じゃあ、スープから。…あ、行さん。

行　？

濱　聞こえました。

Cooking by Gyo Miyamoto (IG @gyo_miyamoto)
Photo, Interview & Text by Shin Hamada (IG @shinhamadastudio)
Edit by Yoshiki Tatezaki