豊かさってなんだ? 令和のベルリンフードライフ

001 新しさに触れた20代のトロント、豊かさを考えた30代のベルリン


Masayuki DoiMasayuki Doi  / Oct 10, 2024

土居将之、大阪生まれ、現在31歳。
お酒に魅せられて広告会社から山形の日本酒蔵に移った後、フリーランスに転向。
欧州の食文化・酒文化に触れるため、ドイツはベルリンにやってきた。


到着した日のベルリン中央駅

30代ではじまった人生2度目の海外生活。
20代で経験したカナダ・トロントでの1年間の交換留学では、人も物も出来事も全てが新しく刺激的に感じられた。
国や土地によって変わる衣食住の風景を目に焼き付けながら、世の中に存在する文化の違いをただただ楽しんでいた記憶がある。

一方、20代の間に日本各地での生活や国内外への旅行を経験し、衣食住に対してある程度の基準を持った上で始まった今回のベルリン生活。
特に本業として取り組んでいる食と酒に関しては、ドイツだけでなく日本についても気付かされることがたくさんある。
その中で、自分を含む日本人にとって、あるいはドイツ人にとって、「豊かさとは何なのか?」という問いを考える機会が増えた。

平日の昼間でも卓球をしているベルリナー達

ドイツには友達がいたこともあり、すでに何度か来たことがあった。
記憶にあるのはソーセージ、ハム、ケバブ、ビール、ワイン。
胃もたれするまで全力で肉とお酒を求めていた。

どこでも売っているBratwurs。地域ごとに味が違う。

旅行をする時は必ずスーパーマーケットを訪れ、商品棚を眺める。
棚に並ぶ商品からその国の食材に対する解像度の高さが伝わって来るのが面白い。
ドイツでは肉製品と乳製品のコーナーの充実度が実にすごい。
いまだにお肉の部位とチーズの名前が覚えられないほどに。

スーパーのソーセージ・ハムコーナー

好奇心から、移住した当初はスーパーに行くと食材を買いすぎてしまうこともしばしば。

スーパーでの爆買い

非日常である旅行では、その国の「最も豊富なもの」を存分に楽しめば良い。
一方、日常の生活では「豊富で無いもの」にも上手に向き合っていくことになるし、実はその工夫の中に「豊かさ」が隠れている気がする。
30年日本で生活してきた体にはアジア的なご飯の方が心身が整うこともあって、ドイツの食材を使ってアジアっぽい食事をつくることが多い。
当然ながら素材や水が違うと味も変わるけれど、
お肉が美味しいこちらの方が美味しいと言われるアジア飯すらある。

意外に美味しいドイツのフォー

ドイツにもたくさん面白い調味料や乾麺があるけれど、誰かが遊びにきてくれるたびに日本の食品を買ってきてもらうし、どんなにビールとワインが安くて美味しくても、やっぱり焼酎や日本酒が飲みたくなる夜がある。
自分の味覚と胃袋がアジア的であることに気付かされる毎日。

ベルリンに遊びにきた両親のお土産

肉や乳製品のように日本よりドイツの方が豊富なものも一部あるけれど、種類が少ないか、そもそも売っていないものも多い。
新鮮な魚はスーパーでは買えないし、美味しいお米だって安くは買えない。
同じ食材にしても味わいや美味しい食べ方が全然違って、思った味にならないことも。
一方、グリルしただけのジャガイモが抜群に美味しかったり、お肉が随分とフレッシュだったり。
スーパーに並ぶ野菜の味が濃くてしっかりしているし、お手頃にいろんなフルーツが手に入る。

日本と同じ食べ方はできないけれど、その場所でしか感じられない味わいがある。
ドイツで美味しい食材を使って、日本的な味わいを作ってみたり、そんな工夫が楽しかったりする。

酒アテのたこ焼き風ジャガイモボール

いろんな人から「食と酒に関心があるのに、なぜドイツにいったの?」と聞かれる。
出国前は自分でもそう思っていたし、それほど期待もしていなかった。
ところが、今はベルリンで日々の食生活を存分に楽しんでいる。
自分自身でも予想していなかった、ちょっと不思議で十分豊かなベルリンのフードライフをお届けしようと思う。

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