チーズがもっと好きになる。
おいしいチーズを求め栃木・那須「チーズとホエイの祭典」へ
生乳生産本州一のまち・栃木県那須町で、今年2回目を迎えるイベント「チーズとホエイの祭典」が11月3日(日)・4日(月・祝)に開催され、大勢の人で賑わいをみせた。
昨年、初開催にして大盛況をおさめた同イベントでは、日本各地の風土を活かした個性豊かなチーズをはじめ、チーズの副産物であるホエイを贅沢に活用した料理や体験型コンテンツを通して、“チーズとホエイの新たな価値”を感じられる。
ホエイのアップサイクルを促進する貴重な場として注目されているが、学びはそれだけでない。近年ますます注目が高まる“国産のナチュラルチーズ“を一挙に味わえることも本イベントの醍醐味だろう。そこで今回のイベントでは、各地の風土が反映されたチーズを味わってみた。
チーズ食べ比べプレート
(右プレート、フォークから時計回りに)つくりたてリコッタ(フレッシュ)/さけるチーズ(パスタフィラータ)/さけるこしょう(パスタフィラータ)/昌(酸凝固)/那須ウォッシュ(ウォッシュ)/ジャージーチーズ(セミハード)/フロマージュド・美瑛(ハード)/ブラウンチーズ(ブラウン)
(左プレート、フォークから時計回りに)リコッタ(フレッシュ)/さけるたまり漬け(パスタフィラータ)/東京白やなぎ(酸凝固)/なすの(酸凝固)/MOCHIZUKI(白カビ)/カチョカヴァロ(セミハード)/バジルゴーダ(セミハード)/ルスカ(ブラウン)/モッツァレラチーズ(フレッシュ)
昨年に引き続き、那須をはじめ、全国から16のチーズ工房と16店舗の飲食店が出店。各工房の個性が詰まったチーズや、それらの特徴に合わせて調理された料理やスイーツ、ドリンクなどが取り揃えられた。どれもチーズ好きには堪らない魅力溢れるものばかり……。そんな中からチーズと料理をいくつかご紹介!
日本各地のチーズ工房のチーズが集結したプレートはイベントならでは。多種多様な味わいや香りを比較しながら、ぞれぞれの個性をダイレクトに感じられる。種類はというと、フレッシュチーズや白カビチーズをはじめ、ホエイを活用して作られるブラウンチーズやリコッタチーズを含めた全17のチーズが揃い、馴染みのあるものからはじめましてのものまで食べて知ることができる。自分好みのチーズに出会えること間違いなし。
[Equal]のリコッタマロンパイ
渋谷区幡ヶ谷の洋菓子店[Equal]の人気商品であるマロンパイに、ホエイを再加熱・凝固し作られたリコッタチーズを加えた焼き菓子。なめらかで濃厚なリコッタチーズのアーモンドクリームと栗の甘みは相性抜群。
[CRAZY PIZZA : LIFE]のマルゲリータピザ
[CRAZY PIZZA]の人気ピザをオンラインショップで展開する[CRAZY PIZZA : LIFE]。こだわりが詰まった生地には、国産全粒粉と“玉ねぎ水”、そしてホエイが使用されている。素材の旨みが際立つマルゲリータピザは間違いないおいしさ。
[森林ノ牧場]のカチョカバロチーズのミートソースパスタ
那須[森林ノ牧場]が販売する「いのちのミートソース」を使用したパスタ。経産牛(出産を経験した雌牛)の赤身肉を使ったミートソースに、ジャージーミルクのチーズをトッピング。食卓に並ぶことが少ないとされている経産牛だが[森林ノ牧場]では試行錯誤の末、牛の特性を活かした商品を販売している。
ブラウンチーズクレープ
チーズとホエイの祭典実行委員からは、ホエイを煮詰めて作られるブラウンチーズを使用したクレープ。ブラウンチーズのキャラメルのようなコクのある甘みをデザート感覚で味わえる。
チーズに合うバラエティー豊かなドリンク
[la mera]のリンゴジュース & [hebeerryk!]のナチュラルワイン
りんご農家が抱える問題の改善や地方活性化を目指したブランド[la mela]。長野県の同一畑で採れた「サンつがる」を贅沢に使用した100%ストレートジュース。ほかにもりんごジュースにホエイを組み合わせたドリンクも販売。
ナチュラルワインのケータリングサービスを行う[hebeerryk!]がおすすめしてくれたのはイタリア・リグリーア[ポッサ]がつくる「ロゼ ダムール」。お好みのチーズに合うワインを提案してくれ、イベントを楽しく盛り上げた。
ブラウンチーズ×赤ワイン & [仁井田本家]の日本酒
ブラウンチーズに合わせて赤ワインを提案してくれたのは栃木県・足利市の[ココ・ファーム・ワイナリー]。チョコレートのような見た目をしたブラウンチーズを口に含んだままワインを飲むと、チーズが持つ特有の甘みがより一層引き立つ。
福島・郡山で313年の歴史を持つ日本酒蔵[仁井田本家]は、“自給自足の酒造り”を目指し、原料米から仕込み水、微生物、仕込み容器の木桶に至るまですべて自社でつくる。「にいだぐらんくりゅ」の複雑で奥深い味わいはチーズの魅力を押し上げてくれた。
生産者との交流もイベントならでは
各地で牛を育てる酪農家さんもこのイベントのために駆けつけ、おいしい乳製品とともに酪農の魅力を教えてくれた。
[ノースプレインファーム]取締役副社長・吉田年成さん(右)と製造担当の雨宮さん(左)。
「おこっぺ有機牛乳」などの有機乳製品を多数販売。愛犬・愛猫向けの「てけて」も人気
日本一の酪農地・北海道は興部町の牧場[ノースプレインファーム]ではオーガニックの乳製品を販売。自然豊かな放牧地でのびのび育った牛たちの恵みを活かしたチーズやお菓子は、どれも自然のおいしさを感じられると好評。創立から36年、オホーツク地域の発展のため、そして何百年先も酪農を絶やさぬように持続可能な酪農と新たな取り組みを続けている。
早々に完売する人気ぶりの[サゴタニ牧農]。
クレヨンで描かれた牛の絵が表紙の新聞には牧場の取り組みが書かれている
広島市・湯来町にある牧場[サゴタニ牧農]は地産地消型の事業を営み、新鮮な牛乳を広島県民に届けている。普段は全国へ流通されていないサゴタニ牧農の牛乳だが、今回のイベントではその牛乳を使って作られたチーズが販売された。広島で愛されるおいしい牛乳の根源には、こだわった土づくりにあるようだ。「人が元気になるには牛乳を」という信念のもと、先代が築き上げてきた酪農のあるべき姿を守りながら、さらなる酪農の発展を目指している。
酪農の未来のために考えなくてはいけないこと
会場内で一際注目を集めていたのは、仔牛のいとこくんだった。会場内を散歩して、草木の匂いを嗅ぎながらファンサービスをしてくれる姿は可愛くて癒される。そんないとこくんともう一頭のブラウンくんは、この会場[GOOD NEWS NEIGHBORS]で暮らしている。
散歩中のいとこくん
「今年、肉牛として出荷予定だった仔牛2頭を[GOOD NEWS NEIGHBORS]に送りました。スタッフの皆さんには、飼育を通して生産者目線で牛たちと関わってもらえればと思っています。雄牛たちは基本的に肉牛として出荷までの限られた期間の命ということになる。[GOOD NEWS NEIGHBORS]で牛たちと触れ合ってもらう機会をつくることで、その尊さを再認識して、牛たちの“価値”を考えられる機会になれば」
こう語るのは本イベントを主催する[森林ノ牧場]代表の山川将弘さん。今後、酪農家として向き合うべき課題や想いを語ってくれた。
「牛の命を扱うという仕事をする上で、”命の価値を高めること”が酪農家の使命だと思っています。私たちは愛情を持って牛たちを育てていますが、乳牛たちもその役目を終えると、どこかで必ず手放さなければいけません。その後、その牛たちがどのようになっていくのかも知らないといけないと思いました。牛と向き合う中で、価値を高めることや新しい取り組みが自分たちでもできたらと常に思っています。育てた牛の価値は自分たちで作るべきだと感じて、自分たちで加工も行なうようになりました」
[森林ノ牧場]代表の山川将弘さん
「酪農産業は基本的に規模拡大や生産拡大を目指していく産業なんです。もちろん規模拡大は大切なことですが、それ以上に価値をどう高めていくかが重要だと思います。人口減少や食の多様化が進むことで乳製品の供給量が減っていくからこそ、新たな価値を生み出していくことが今後求められていきます。酪農産業はなかなかイノベーションが起こりにくい産業だと感じています。その中でも今回集まってくださった方々は新しい取り組みに挑んでいる方たちばかり。今後もぜひそこに注目していただければ」
ホエイや酪農の新たな“価値”に触れられる「チーズとホエイの祭典」は、今年も大盛況のうちに閉幕。チーズとホエイは奥深い。今後の更なる発展に期待が膨らむ。
【出店者紹介】
チーズ工房 >>
CHEESE STAND/サゴタニ牧農/(有)那須高原今牧場チーズ工房/チーズ工房那須の森/ボスケソ・チーズラボ/新生酪農株式会社/那須高原りんどう湖ファミリー牧場/フィンランドの森チーズ工房メッツァ・ネイト/大田原チーズステーション/ナカシマファーム/ノースプレインファーム/千本松牧場/So-boku/GOOD CHEESE/美瑛放牧酪農場/あまたにチーズ工房
飲食店 >>
CRAZY PIZZA : LIFE/Bistro Rojiura/しる/Chè 333/仁井田本家/アジア学院/ココ・ファーム・ワイナリー/森林ノ牧場/Pizzeria PicoとCLASICO/Little Lies Juice Co./BROWN CHEESE BROTHER/L’Effervescence/チーズガーデン/La mela/hebeerryk!/equal/Litus
農家 >>
那須栗園
チーズとホエイの祭典
日時 11月3日・4日 9:00-16:00
場所 栃木県那須郡那須町高久乙24-1 GOOD NEWS NEIGHBORS
入場 無料
主催 ・チーズとホエイの祭典実行委員
・那須ナチュラルチーズ研究会
・株式会社GOOD NEWS
・ファーマーズマーケット株式会社