エディターズノート
「RiCE」第38号「台湾」特集に寄せて
RiCEの第38号は台湾の特集です。意外でしたか? 場所切りシリーズはこれまで東京、横浜ときましたがいきなりいろいろ飛び越して海外へ。予定調和な展開よりはどこへ向かうかわからないスリリングさを楽しみましょう。
なんて言いつつ台湾は近い。おそらく日本人にとって一番身近に感じる海外渡航先のひとつではないでしょうか。自分の周りにも台湾マニアなひとは何人もいます。そして実は台湾の方々も日本のことが大好き。相思相愛な国民感情というのはなかなかに得難いものがある。
そしてそのラブの内実には、おそらく大きな割合で食が関わっているはず。台湾好きは台湾料理が全般的に好きでしょうし、日本好きな台湾の方ならたいてい日本料理に目がないのでは。食は国境、言葉や文化をも超えていく。というのが自分にとっての信条です。なかでもおいしいものが大好きで、食のプライオリティが高い国民性ということで一致している台湾と日本。仲良くなれないわけがない。
距離の近さも相まって、お互いを見つめ合い、影響を与え合っている。言わばミラーリング効果のようなことが起きているのではないか?というのが自分の見立て。
ではその仮説を検証すべく、そしてもちろん取材すべく、久しぶりに訪台しました。そしてある意味衝撃を受けました。コロナ禍を挟んで、めちゃくちゃいろいろ変わってる! おそらく海外の人からすれば日本も同様に変わっているのかもしれません。ましてやウォッチ度の高い台湾の方からしたら目が離せないのかも。お互いのスピード感が近いというか。もちろん違うところもたくさんあって、だから飽きることがないのでしょう。
そんな近くておいしくて優しくて速くて目が離せない愛しの台湾。今回は取材班を分けることで、台北だけでなく台南、台東までもカバーしました。最新の台湾フードカルチャー、そのおいしさが掴める内容になっているかと思います。
さらにそれだけではなく、第2特集として、日本にいながらにして体験できるおいしい台湾料理の数々をも取り上げました。ご存じのように、おいしい台湾料理の名店の数々は日本中にちらばっています。そしてそれぞれに深遠なるストーリーを抱えながらも、それを滅多なことでは口にせず、きょうも街中のお店でおいしいものを作り続けている。最高です。
おいしいもので深く繋がっている台湾と日本。どうせなら、もっともっと前代未聞に仲良くなってみてはどうでしょう。2025という年が、どれだけ世界に平和との距離感を産むのかまだわかりません。ですがどうか逆ではなく、隣人と笑顔でおいしいものを分け合っている世界を想像してみませんか。これからも台湾を愛します。
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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