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波平龍一の暮らしの料理
第一回 ぽかぽかした冬の日に、みんなで食べたサラダ
家の台所に立つこと
和食、イタリアン、フレンチ、中国料理、韓国料理……世の中にはいろんなジャンルのお料理が溢れています。次々に革新的な調理技術やプレゼンテーションが生まれ、それらはお金を払って得られる“非日常体験”としてはもちろん、SNSやYouTubeにおける“コンテンツ”としても編集され、「食べる・飲む」を取り巻く状況の変化はまるで激流とも言えるほどに感じる今日この頃。
料理人である僕自身、日々供給されてくるそうしたコンテンツ(飯テロやフードポルノとも呼ばれるものの類い)に鉢合わせると、ついつい見入ってしまうのが正直なところです。油断すると、そちらの思考にすっかり影響されて、自分らしい発想が生まれてこなくなってしまったり……。
このままではマズい! 一度リセットしなければ!と思った時、僕はいつも自宅の台所に立ちます。実は台所って、巷に溢れる刺激過多な食コンテンツとの距離感を測るためにはうってつけの場所なんです。
純粋に自分の食欲とだけ向き合える場所、それが台所。
そこでは、自然と外的な刺激から解放されて、自分自身にとってのおいしさについて自由に思い巡らすことができる。まさに聖域。
自分が、今食べたいもの。
一緒に暮らしている人と、今日一緒に食べたいもの。
そんなことを考えながら作った、僕の「個人的な料理日記」を、今回の連載では『暮らしの料理』と題して皆さんに共有していきたいと思っています。
レシピなんかもざっくり載せていきますから、真似できそうなものがあれば是非とも皆さんの暮らしの料理にも取り入れてみてもらえたら嬉しいです。
それでは早速、記念すべき第一回の暮らしの料理をお届けします!
RECIPE|黒田五寸人参と万木赤かぶのサラダ
【材料(2人分)】
・人参 1本
・蕪(小玉) 3玉
・キウイ 半分
・人参の葉っぱ 適量
・塩 適量
・油 適量【ドレッシングの材料】
・白ワインビネガー スプーン2杯くらい
・米油 スプーン2杯くらい
・塩 1〜2つまみ【手順】
① 小さめのフライパンに、洗った人参を丸ごと一本と、コップ半杯くらいの水を加え、蓋をして中火にかける。水がなくならないように時折水を足したり、人参を転がしたりしながら、火が入るまで続ける。(竹串や箸で、太い部分を刺して火の入り具合を見る)② フライパンに油を大さじ2分の1ほど敷いて、くし切りにした蕪を入れる(皮が分厚いようなら剥いてから調理する)。中弱火にかけながら、塩を1〜2つまみ加えて、美味しそうな焼き目をつけていく。
③ キウイは皮を剥いて輪切りにする。
④ ドレッシングの材料をボウルの中で合わせて、ホイッパーなどでかき混ぜておく。
⑤ 人参をお好みの形にカットして、蕪と一緒に盛り付ける。③を④に加えて、ざっくりマリネした後適当に散らし、ボウルに残ったドレッシングもまわしかける。最後に人参の葉っぱを散らして完成!
暮らしの恩人たちと共に
日差しが暖かだった12月のある日に、みんなと青空の下で食べたお昼ごはんです。
この日は、午前中から近所の友人たちと妻が集まって、年末に向けてしめ飾りや門松を作っていました。会場は僕ら夫婦の自宅だったので、その時ちょうど手元にあった佐々木くんのお野菜たちを使ってお昼ごはんを作ることにしたのでした。
神奈川県南西部にある大井町で去年新規就農した佐々木くんのお野菜たちは、甘味に明るさがあって、何か一つの要素が尖っていたりということがないので、みんなでワイワイ囲んだこの日の賑やかな食卓にぴったりでした。
おいしい素材の作り手の皆さんのことを、僕ら夫婦は「暮らしの恩人」と呼んでおり、我が家のおうちごはんは、そんな方々から届く恵みに支えられています。
ありがたや、ありがたや。
そして出来上がったサラダ、綺麗ですよね。
この日、友人がお土産にくれたキウイと、妻がお世話している畑から持ってきた人参の葉っぱがいい仕事をしてくれました。普通の人参と蕪でも十分美味しいと思いますが、元気な野菜を売っているお店がお近くにあるのであれば、ぜひそこで買ったもので作ってみてください! 素材を選ぶことの楽しさが味わえるはずですよ。
こんな感じで、特別な日やなんでもない日のお話と共に、ゆるゆると暮らしの料理レシピをお届けして参りますので、(僕のように)脳が情報漬けになったときのリフレッシュなどに是非ともお役立てくださいね。
次回もよろしくお願いします。
- 暮らしの料理 調理担当
波平 龍一 / Ryuichi Namihira
1993年、神奈川県出身。大学卒業後、東京の懐石料理店にて料理人としてのキャリアをスタート。その後、京都に拠点を移し、中東篤志氏に師事。現在は、東京あきる野にて自然農に取り組んでいる、妻の波平雪乃と共に[暮らしの料理]の屋号で晩御飯企画を主宰。 その他イベントへの参加や商品開発を中心にフリーで活動中。
IG @namihei_kome