水野仁輔のスパイストリップ
「苦労しても楽してもうまい沖縄そば」 in 沖縄・那覇市
ほっと落ち着く美味しさがいい
沖縄の街のど真ん中を自転車でさっそうと駆け抜ける。イベントとイベントの合間に4時間ほど空いたから、自転車を借りたのだ。都内もほとんど自転車移動だから、遠征した先で自転車に乗るのは心地よい。向かっている先は、沖縄そば屋だ。友人に薦められた店をマップで検索してみると、それほど遠くない。自転車で30分はかからないな、と漕ぎ始めたら思わぬ落とし穴が待っていた。
緩やかな丘を自転車は登り続ける。地図を頼りに、指し示す方向にひたすら漕ぐが、登り坂もひたすら続いていくのだ。なんのこれしき、と頑張ったが、15分、20分と延々登りが続くからさすがにバテテきた。なんとか到着した店は那覇市内で一番高いところにあるんじゃないかと思うほど見晴らしがよかった。もちろん、苦労してたどり着いたそばは、最高の味である。
麺料理が好きなのに、いつからかラーメンを食べなくなった。歳のせいかもしれないが、「どうだ? うまいだろう?」とマウントしてくるような味に自分の気持ちがついていけなくなっている。その点、沖縄そばはいい。澄んだスープ。何のてらいもなく、余計な主張もせず、ただそこにいる。ほっと落ち着くおいしさがそこにあるから気に入っている。
後日、別の友人に別の沖縄そば屋へ案内してもらった。僕はただ車の助手席でボケーッとしているだけでいい。苦労してつかみ取ったそばとは大違いだったが、そっちもとにかくしみじみとうまかった。苦労しようが楽しようが、それとは関係なく、沖縄そばはうまいんだなと思った。
- AIR SPICE CEO
水野 仁輔 / Jinsuke Mizuno
AIR SPICE代表。1999年にカレーに特化した出張料理集団「東京カリ~番長」を立ち上げて以来、カレー専門の出張料理人として活動。カレーに関する著書は40冊以上。全国各地でライブクッキングを行い、世界各国へ取材旅へ出かけている。カレーの世界にプレーヤーを増やす「カレーの学校」を運営中。2016年春に本格カレーのレシピつきスパイスセットを定期頒布するサービス「AIR SPICE」を開始。 http://www.airspice.jp/