連載「店とTシャツと私」

#02 Supremeの話・[やじ満]豊洲


So IgarashiSo Igarashi  / Feb 2, 2025
好きな店とそのために作ったTシャツの話。

Supreme。キッズからおじさんまであらゆるスケーターを虜にする、言わずと知れたスケートブランド。

イギリス出身のジェームズ・ジェビアが中心となって、ストリートファッションの礎ともいえるショップ[UNION]をニューヨークに立ち上げたのが1989年。当時スケーターはたくさんいてもスケートブランドが存在しなかったニューヨークに、自身のスケートブランドもニューヨークで作ろうと、今から30年前の1994年に始めたのが、Supremeだった。(時を同じくしてアメリカ西海岸で勢いづいていたショーン・ステューシーとジェビアが出会い、ジェビアの提案で後のStussyニューヨーク店ができたのは、また別の話。)

多くの人にとってSupremeのTシャツ=あの赤いBOX LOGOや、アーティストや他ブランドとのコラボレーションによる派手なTシャツ、だと思う。でも、わたしがそこを無視して惰性と言ってもいいぐらいの感覚で毎シーズンSupremeのTシャツを買い続けているのは、時折出てくる「詠み人知らず」的な、誰のグラフィックなの?という、ポカンなTシャツに惹かれているからだ。

たとえば、2018SSシーズンにリリースされたChicken Dinner Tee。ニューヨークのSupremeクルーにとっても馴染み深いであろう、アメリカのソウルフード的なチキンのプレートと、Helveticaで組んだSupremeのタイポの組み合わせ。なんでこれをプリントしようと思ったのか、一度は理解に苦しむが、着てみるとしっくりくるから不思議である。

そんな、詠み人知らず的価値を美しとする侘び寂びの感覚も持ち合わせている、Supreme。

このChicken Dinner Teeよろしく、豊洲市場にある大好きな中華料理屋[やじ満]の、これまたわたしが大好きなメニュー「冷やし中華」で、Hiyashi Chuka Teeを作った。

今更だけど店名は「やじま」と読むのに「やじまん」と読む人がたまにいるので、そういう人が今後恥をかかないためにもYajimaタイポが一役買ってくれるはず。

ちなみに、毎年4月1日から始まり8月31日に終了する[やじ満]の冷やし中華は、まったくと言っていいほど秋を感じさせない9月~10月の影響か、昨年は10月21日まで提供され続けた。

メニュー表にあるように、市場で働く方々のための食堂がコンセプトの[やじ満]らしい甘塩っぱい濃い目のタレがなんとも癖になる。毎年、わたしは冷やし中華だけは、[やじ満]以外に浮気をしていない。4月から毎年食べ続け、7月~8月ぐらいになると今年の夏最後の冷やし中華になるかな、とそわそわしはじめる。わたしにとって昨年最後の冷やし中華となった10月1日は、秋冬限定の「牡蠣ラーメン」の解禁日でもあり、夏と秋冬の出会いの瞬間に立ち会えて、今までにない歴史的場面に少し興奮した。

今年の4月も、[やじ満]の冷やし中華にまた会えますように。

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