水野仁輔のスパイストリップ
「インドに呼ばれていただくミールス」 in ニューヨーク
目に飛び込んできたある看板
「インドへは呼ばれないと行けない」と言う人がいる。 「インドは誰のことも呼んでいない」と言う人もいる。 僕は毎年のようにインドへ行っているけれど、呼ばれたな、と感じたことは一度もない。だから後者になるのだろう。 マンハッタンで行われるイベントでカレーを出すためにニューヨークへやってきた。空港からタクシーに乗り、予約したホテルまで。そろそろホテルが近づいてきたかな、と車窓から外を眺めていると、見たことのある看板が目に飛び込んできた。[SARAVANA]。 サラヴァナバーワンといえば、インドを代表するミールスのチェーン店である。南インドの典型的な定食メニューであるミールスを安価に提供しているのだが、まさかニューヨークに支店があるとは思っていなかった。 見間違えじゃないよな、デジャヴかな、なんて考える間もなくタクシーはホテルに到着した。[SARAVANA]と同じ通り沿いにあるホテルに。チェックインを済ませて散歩に出かけると、偶然にも辺りはスパイスショップ街。うろうろしているうちに小腹が減ってきて、気がついたら僕は[SARAVANA]へ入っていた。 わざわざニューヨークまで来て、インドで何度も足を運んでいるこのチェーン店に、なぜ入らなきゃいけないんだろう……。テンションが上がらないままボーっとしていると、頼んだミールスが目の前に運ばれてきた。ああ、そうか! とそこで膝を打ったのである。インドに呼ばれるというのは、こういうことを言うのかもしれない。
- AIR SPICE CEO
水野 仁輔 / Jinsuke Mizuno
AIR SPICE代表。1999年にカレーに特化した出張料理集団「東京カリ~番長」を立ち上げて以来、カレー専門の出張料理人として活動。カレーに関する著書は40冊以上。全国各地でライブクッキングを行い、世界各国へ取材旅へ出かけている。カレーの世界にプレーヤーを増やす「カレーの学校」を運営中。2016年春に本格カレーのレシピつきスパイスセットを定期頒布するサービス「AIR SPICE」を開始。 http://www.airspice.jp/