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波平龍一の暮らしの料理
第二回 猪と熱燗。じんわり沁みた、ある夜のアテ。
蔵人生活、再び。
一月の後半。
昨年に引き続き岡山県勝山の日本酒蔵[御前酒蔵元辻本店]さんにお邪魔して、夫婦で蔵仕事をしてきました。連日しっかりと体を動かし、久しぶりに自分自身のピュアな食欲に向き合って作った“暮らしの料理”達はまさに名作揃い。
皆さんにどのお料理をご紹介するか悩みに悩みましたが、今回は山深い土地ならではの素材「猪肉」を使った一品についてお話ししたいと思います。
勝山は、岡山県北部の山あいにある町で、決してアクセスが良いとは言えない場所にありますが、そこでの食生活は豊かそのもの。
農協の新鮮野菜や山の幸、さらには鳥取の新鮮魚介がいつでも気軽に手に入るという素晴らしい環境が整っています。そこへさらにご近所さんからの「おすそ分け」が加わった日には、おうちごはんの幸福度はいよいよ最高潮に達します。
今回のレシピはまさにそんな「おすそ分け」から生まれました。
作り方はとっても簡単。
レシピ上では猪肉を使ってますが、鶏肉・豚肉等で代用しても美味しく仕上がるはずです。そしてもしお肉をお買い求めの際は、いつものスーパーではなくお近くの精肉店などで買ってみることをオススメします。餅は餅屋なんて言葉もある通り、お肉はやはり精肉店で買うと一味も二味も違ってきますので、この機会に是非お試しあれ。
シンプルなお料理ですから、良い素材を使えばその分だけクオリティもアップしますよ!
RECIPE|おすそ分け猪肉と壬生菜のごま和え
【材料(2人分)】
・猪肉(もも) 300g弱
・壬生菜 1/4束(約80g)
(水菜などの青菜類で代用可)
・白煎りごま スプーン2杯くらい(少し多いかなと思う程度で)
・塩 2〜3つまみ
・油 適量
・醤油 ほんの少し (ティースプーン一杯くらい)【手順】
①白ごまを煎る。
ごまを乾いたフライパンに加えて、良い香りがして茶色く色づくまで中弱火で煎って別皿に移す。②具材を切る。
猪肉を好みの大きさに切り分けて、壬生菜を5センチくらいの長さにざく切りする。③炒め合わせる。
油を引いたフライパンで猪肉を炒めて、肉に火が入ったら壬生菜を加え、塩とほんの少しの醤油で味付けして、もうひと炒めしたらすぐ火を止める。④盛り付ける。
炒めた具材を皿に盛り付け、煎ったごまをバサっとかけて和えながら食べる。
ごまを擦ると、さらに香りと馴染みが良くなるのでおすすめ。
おすそ分けの魔力
「おすそ分け」はいつも突然やってきて、その日の食卓の主役の座を奪っていきます。この日の我が家の晩御飯の主役も、もちろん自動的にこちらの猪肉となりました。
冷凍を一回もしていない、鮮度抜群の猪肉。
飲食店で扱うにしてもなかなかに貴重な代物ですが、ここはあえて構えずラフにシンプルに扱ってみようと意識しました。
「暮らしの料理」ですから、自然体でのぞむのはとっても大事なことです。自由に、思うままに。うまくやろうとしないのが楽しむコツなのではと…
そんなこんなで出来上がったお料理はまさしく「美味」の一言。
少し不安に思っていた獣臭などは全くと言っていいほど感じられず、猪特有のクリアな脂の風味と甘旨味がただただ心地良かったです。
その土地で過ごす時間の中で自然と僕らの周りに集まってきてくれた素材や人とのご縁を、フワッと寄せ集めてそのまんま皿にのせることができたような。我ながら良い一皿が作れたと思います^^
酒との相性も間違いないはず、ということになり手鍋で燗をつけてみることに。その時、仮住まいの部屋にあった「御前酒まめ農園雄町」を合わせてみるとこれがまた大正解。妻と二人で様々な温度を試しつつ、食の楽しみを思う存分に味わいました。
その後も晩酌は続き、あっという間に夜は更け…
勝山での幸せな夜をまたひとつ終えたのでした。
- 暮らしの料理 調理担当
波平 龍一 / Ryuichi Namihira
1993年、神奈川県出身。大学卒業後、東京の懐石料理店にて料理人としてのキャリアをスタート。その後、京都に拠点を移し、中東篤志氏に師事。現在は、東京あきる野にて自然農に取り組んでいる、妻の波平雪乃と共に[暮らしの料理]の屋号で晩御飯企画を主宰。 その他イベントへの参加や商品開発を中心にフリーで活動中。
IG @namihei_kome