
嗚呼、愛しのあの餃子!
[餃子館]素材を味わう真剣勝負。 全身全霊で受け止めるべき餃子
ここ数年毎日餃子を食べている。朝昼晩すべて餃子だったなんてことも。毎日いろいろなところで餃子を食べていると、たまに自分の中の美味しい餃子が何なのかわからなくなってしまうことがある。そのモードに入ってしまうとどこの餃子を食べても美味しく味わえなくなってしまう。そんなとき私が必ず帰る場所がある。八幡山の[餃子館]だ。
初めて来た時のことをよく覚えている。当時、肉汁至上主義でパンチのある餃子が大好きだった私が、[餃子館]の水餃子を食べた時に受けた衝撃。自らの餃子に対する考え方がするすると変わっていくのがわかった。
餃子とは私が思っていた以上に繊細で、全体のバランスを保ちながらも各素材の個性を表現する料理だということ。調味料に頼らない食材本来の美味しさを引き出すことでこんなにも香り高い料理になるのかと涙を流しながら食べたのを覚えている。
[餃子館]に来たら写真も撮らないし、スマホも触らない。一人でカウンターに座り徹底的に餃子と向き合う。もちろんタレも一切付けずにお父さんに委ねたメニューをひたすらに食べ続ける。注文が入ってからお母さんが包んでお父さんが焼く。その美しい連携プレーも見もの。一つひとつ餃子を噛み締めながら味覚をチューニングしていき、これこそが本来の餃子の美味しさであると再確認する時間なのである。
目の前に積み重なるお皿の山が私の餃子人生そのもの。これからも一枚一枚積み重ねていきたい。餃子が大好き、愛してる!
餃子館
東京都世田谷区上北沢4丁目29−19 アローハイツ上北沢
17:00〜22:00 月・火休
IG:gyo_zakan.hachimanyama
Illustration by Yujiro Koyama(イラスト 小山ゆうじろう)
2021年19号 RiCE「餃子がご褒美」に掲載
1987年、東京生まれ。新卒で入社したファーストリテイリング在籍中から餃子愛を温めつづけ、2019年に同社を退職、餃子の道を歩む。愛ある餃子を求めて全国各地を食べ歩き、自身のInstagramやウェブサイト「今夜も餃子とブギーバック」で情報発信を行う。 IG @kebab
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